天皇皇后両陛下は、9月16日から2日間の日程で「全国豊かな海づくり大会」に出席するため、北海道を訪問されました。お二人揃って北海道を訪問されるのは24年ぶりです。
到着後まず、釧路湿原野生生物保護センターへ。この施設では、事故などでケガをした希少な鳥を保護しています。
陛下は「保護で一番難しいのはどんなところですか」と質問されました。
皇后さまは保護され、野生復帰ができないオオワシを見て「とても穏やかに過ごしていますね」と話し、「絶滅の恐れのある野生生物の保護保全の大切さを改めて感じました」と感想を寄せられました。
釧路市内のホテルでは、海づくり大会の絵画・習字コンクールで入賞した小中学生6人と懇談されました。「好きな海のいきもの」という絵を描いた末永莉乃さん（釧路市立光陽小５年）に陛下が「特に好きな海の生き物はありますか」と声をかけられると、末永さんが「タコです」と答えました。
皇后さまは「そこにね、描いてありますね」と作品を指し示しながら語りかけられました。
そして、ひとりひとりに「これはどこの海ですか？」「絵を描くのは楽しいですか？」「どんなところを工夫しましたか？」などと話しかけながら、作品を鑑賞されました。
また、漁業関係者とも会い、若手漁業者の育成や、漁業環境の改善などの取り組みついて聞かれた両陛下。特産品・カキのブランド化を推進する厚岸町の生産者には「ずいぶんカキの種類がありますね」「どういうところが大変だったんですか」などと声をかけられました。
豊かな海の環境を守る「大切な使命」
翌17日、厚岸町で開催された「全国豊かな海づくり大会」。この大会は、海の環境変化に直面する水産資源の保護や漁業の推進を目的に行われています。
《陛下 おことば》
「四方を海に囲まれた我が国は、古くから豊かな海の恵みを受けてきました。また、山や森から河川や湖を経て海へ至る自然環境と、そこに育まれる生命や文化は、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。この豊かな海の環境を保全するとともに、水産資源を適切に保護・管理し、次世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な使命です。」
また、陛下は令和3（2021）年9月に太平洋沿岸の広範囲で発生した赤潮の被害についても触れ「関係者が連携し、被害を受けた漁場の回復に向けた取組が進められてきていることに、心から敬意を表します」と述べられました。
式典では、作文コンクールの最優秀作文が発表されました。
《大会会長賞・小野珠和さん（釧路市立昭和小3年）「私の大好きな海。楽しいお手伝い」》
「私は海が好きです。じいちゃん、ばあちゃんのこんぶのお手伝いも好きです。私が好きで大切な海がこれからもつづくために、ゴミをすてたり、よごしたりすることは、ぜっ対にしないとやくそくします。」
小野さんの朗読にじっと耳を傾けられた両陛下。お帰りの際に、陛下は「上手だったね」、皇后さまは「（昆布の）根っこを切るのは大変ですか」と小野さんに話しかけられたということです。
また、厚岸漁港では、海上歓迎行事と放流行事も行われました。
カキの養殖やコンブ漁などを行う１０隻の船による海上パレードをご覧になり、船が前を通るたびに、手を振って応えられました。
そして、地元の高校生から渡されたカレイの一種「マツカワ」の稚魚とホッカイエビを、海の環境がこれからも守られる事を願いながら放流されました。
両陛下はこの日、漁港に隣接するカキの生産施設も視察されました。
稚貝を殻につけて育てているという説明に、皇后さまは「殻につけるのが大変ですか？」陛下は「天候の変動もありますか？」などカキの生態や養殖の技術について熱心に質問を重ねられました。
そして、皇后さまは「すみません。質問攻めにしてしまって」と笑顔を見せられました。
視察後には、地元の保育園児たちと触れ合われる場面もありました。
陛下は「楽しいですか。どんなことして遊ぶの？」皇后さまは「保育園は楽しいですか？」などとにこやかに語りかけ、虫に刺されたという5歳の園児には「お薬つけてね、治りますよ」と優しく声をかけられました。
即位後、初めて北海道を訪問し、2日間の日程を無事に終えられた両陛下。「久しぶりに道東に来たことを実感しました。多くの北海道民のみなさんに、温かく迎えていただいたことに心から感謝いたします。」と感想を寄せられました。
（「皇室ご一家」９月24日放送）
