2017年の九州北部豪雨で大きな被害を受け、一部区間が不通となったJR日田彦山線。自治体は鉄道の復旧を要望し続けたが、56億円もの費用がかかることなどから協議は難航。不通だった区間はバス輸送となった。

「BRTひこぼしライン」開業 平日も車内は満席に

「JR九州」古宮洋二社長:
地域の方々に利用していただける武器は整ったなと。あとは、我々がいかにそれを宣伝していくか、地元の方々に利用していただけるかが課題

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2023年8月28日、JR九州のバス高速輸送システム「BRTひこぼしライン」が開業した。
BRTとは、「Bus Rapid Transit(バス・ラピッド・トランジット)」の略称で、バス高速輸送システム。地域の思いを乗せ「日田“彦”山線の“星”」となるように、願いを込めて「ひこぼしライン」と名づけられた。

楢崎春奈記者:
JR添田駅に到着しました。ホームを降りたらそのままBRTに乗り継げます

添田駅(福岡・添田町)と日田駅(大分・日田市)を結ぶ約40kmの区間では、一般道だけでなく、元々線路だった場所を整備した彦山~宝珠山間の約14kmのバス専用道を走行する。

この日は平日にもかかわらず車内は満席。車窓に広がる景色に、乗客はカメラを構える。

横浜からの利用客(男性):
10年くらい前に鉄道で来たことがあって。彦山の所から、そのまま専用道で通過する路線が残ってるので、非常にいいんじゃないかと

博多からの利用客(女性):
元々駅だった所に、名残があって新鮮でいいなと

鉄道時代と比べると、駅の数は3倍の36駅、運行本数も1.5倍になり、利便性の向上が図られている。

歓迎の声の一方で“課題”も…継続的な乗客確保へ

この日、取材した86歳の女性は週に一度、駅から5kmほど先の病院に町営バスを利用して通院していた。多い日でも午前中に3便程度しか走っていない町営バス。BRTの運行で便数が増えただけでなく、病院の目の前に駅ができたため通院が楽になると話す。

病院に通院する86歳の女性:
(以前は)本数が少なかったけど、いまは多くなって、たいそう助かりますよ。便利がよくなりましたね

地元からは歓迎する声が上がる一方で、課題も聞かれる。BRTに転換後も、継続的に採算がとれるだけの乗客を確保しなければならないのだ。しかし、沿線自治体の添田町と福岡・東峰村の人口は、2015年からの5年で1割も減少し、JR九州が運行していた代行バスの利用者も1日にわずか60人ほどだった。

そこで地元自治体は、地域の自然や文化を掘り起こし、1人でも多くの観光客を呼び込みたいと大学生の見学ツアーを始めた。

BRT開業に合わせて、JRと福岡県は全線乗り放題に加えて、地元の飲食店などで利用できる特典付きのデジタルチケットを販売。特典のひとつ、地元の米粉を使ったバウムクーヘンを作るカフェのオーナーも、BRTを起爆剤に地域の活性化につなげていければと話す。

「里山カフェ棚田」森山生子オーナー:
「地元がどう頑張るかってこと」だと思うんですよね。だから、あくまでもBRTは交通手段であって、「地元がどう魅力を伝えていくか。どう連携していくか」、たくさんの楽しみを作っていかなきゃいけないんじゃないかなと思いますね」

公共交通機関の「星」となれるか

東峰村に残る昔ながらの景色はどのように映ったのか、この日訪れていた大学生に話を聞くと…。

東峰村を訪れた大学生:
なんかもう、歩いていたらずっと周りをカメラで撮りたくなるような景色がたくさんあった。若者を狙った集客のアピールとか、もっともっといろんな工夫ができるかな

6年の時を経て動き出したBRTひこぼしライン。赤字に苦しむ公共交通機関の「星」となれるのか、JR九州と地元自治体が託した新たな「道」が注目されている。

(テレビ西日本)

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