2023年8月27日、青森県で開かれた「ファッション甲子園」。全国から集まった多種多彩な作品の中から準グランプリに輝いたのが、沖縄出身の高校生の作品だ。その、デザインに懸ける想いを取材した。

いろいろな生き物がいて、全て繋がっている

高校生のファッションナンバーワンを決める全国大会「ファッション甲子園」で、1800点のデザインから最終審査に選ばれたのが、命をテーマにした沖縄出身の高校生のデザインだ。

豊見城(とみぐすく)市出身の大城一春(おおしろ いっしゅん)さん。高校2年生。
プロのファッションデザイナーを目指し、4年前に上京した。

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今回、日本一を目指し製作しているのが、キリンやバクなどさまざまな生き物が描かれたデザイン。作品を通して、小さい生き物も大きい生き物も変わらない生き物だということを伝えようとしている。

大小さまざまな動物を一着の服につなげていく。

大城一春さん:
ここがウサギ、これがウマですね。これから色を塗っていきます。こういう形をしているのかとか、こうやったらもっと動物っぽくなるかなとか考えながらやっています

これまでも生き物を中心とした作品を手がけてきた。

「ここが象の目になっていて、二つあるものが象の牙をイメージしています。特徴を全部ここにまとめた感じでやっています」

「生き物は発想の宝庫」

なぜ生き物にこだわるのか。その理由が6年前の2017年、沖縄テレビのカメラに撮影されていた。

大城一春さん(当時小学5年):
釣りしていると、いろいろな魚がいるから楽しいです

兄の勝太さんと釣りを楽しむなかで、さまざまな色や形をしている生き物たちに魅了されていく。

一春さんは、「本当に見たことがない魚や、オオカミウオもすごかったです。恐竜みたいな質感がおもしろかったです。想像もつかない形をしているので、発想の宝庫といってもいいと思います」と話す。

兄の勝太さんも、「うれしいですね。釣って終わりではなくて、デザインに活かしていくことができるので。生き物のデザインでしたら、経験が優っているので、ガンガン行け、という感じです」と応援している。

「やっていきたいとしかいえないです」
兄の言葉に、一春さんも意欲を見せる。

温かな家族の思いが制作の原動力

絵を描くことが大好きな一春さん。
子どもの頃、絵が心の支えにもなっていた。

母の朝子さんは、「(小学校の)テスト用紙を折って加工して。みんなが問題を解いている間、一春はこれを作っていたらしいです」と、小学生時代の一春さんが作ったものを見せてくれた。

「ずっと机に座らされるのが苦痛で、できれば(小学校に)行きたくなかった」

集中力が続かず、他の同級生と同じように授業を受けることが難しかったと話す一春さん。
小学一年生の時に学習障害だと診断された。

母 朝子さん:
これが、一春が最初に描いた動物の絵です。「感覚が独特だから、この子はアーティストとして育ててもいいのではないか」と、(絵の先生が)言ってくれたのをきっかけに覚悟を決めました

先生と相談し、学校では勉強の代わりに絵を描くことが許されるようになると、次第に学校に通うことが楽しみになる。

一春さんは、朝子さんに感謝の気持ちを抱いている。

「学校でずっと絵を描いていて、学校ともうまくやれるようになりました。自由にさせてくれて感謝しています。いいものが作れればいいです」

一春さんを包み込む温かな家族の思いが制作の原動力になる。

最終審査会までもうすぐ。
チームメイトとも力を合わせ、完成させたのが「一つの命」。

36頭の動物たちが躍動 ファッション甲子園準グランプリ

2023年8月27日、青森県で行われたファッション甲子園の最終審査会で作品を披露。
36頭の動物たちが躍動する。そして、準グランプリを受賞した。

今回の結果を受けて、「あれだけ多くの動物を忠実に作ったことはなかったです。それを一つのものにするのは、新しいことができておもしろかったです。作る楽しさのほうが大きいです」と達成感を感じているようだ。

作る喜びと生き物への思いが一つに繋がり、新たなデザインに向かって歩き続ける。

ファッション甲子園の準グランプリは沖縄出身者で初の快挙。一春さんの目標は、自然をテーマにしたファッションデザイナーになることだ。

(沖縄テレビ)

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