学生たちの思いを乗せ、太陽エネルギーで走る車が、世界の頂点を目指す。

世界最高峰のソーラーカーレースに参戦

世界最高峰のソーラーカーレース「2023 Bridgestone World Solar Challenge 」が、10月に開催される。

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Bridgestone World Solar Challengeは、オーストラリアの砂漠地帯を舞台に、3000キロの道のりを、約5日間かけて走破する過酷な大会だ。

それに先立ち、29日にソーラーカーの最新技術の発表イベント「Bridgestone Solar Car Summit 2023」が行われた。

ブリヂストン モータースポーツ部門長・堀尾直孝さん:
サステナブルなモータースポーツというのは、これから出てきます。今回のBWSCも、我々のサステナブルなモータースポーツ活動の軸として、しっかりやっていきたいと思っている。

世界各国・地域から学生が集まり、40以上のチームで競い合うこの大会に参戦を発表したのは、3度目の総合優勝を目指す東海大学のチームだ。

東海大学がお披露目したのは、“究極のサステナブルなソーラーカー”。

東海大学 ソーラーカーチーム代表・宇都一朗さん:
フロントのタイヤの真上にあるインナースパッツと呼んでるものなんですけど、いわゆるフロントのタイヤを上からカバーする蓋のようなもの。左右のこの2つのパーツに再生材料が使われています。

タイヤのカバー部分や、コックピットの床面などに、リサイクル可能な炭素繊維を使用。環境負荷の低減に貢献している。

また、強度を保ちながら大幅な軽量化を実現し、その重さは約140㎏。全長5m、高さ1.1mの車体でありながら、軽自動車の6分の1の重さだ。

ソーラーパネルは、レイアウトを工夫することで、発電量をアップした。1kwの電力で時速80km以上の平地走行ができ、EVに求められる効率的な発電にも挑戦している。

一般のガソリン車より車高が低く音が静か
一般のガソリン車より車高が低く音が静か

ドライバーの頭にカメラを設置して走行すると、一般のガソリン車と異なり車高が低く、静かなことが分かる。

さらに、タイヤにはブリヂストンのサステナブルな「ENLITEN(エンライトン)」技術を初めて取り入れた。

再生資源・再生可能資源使用比率を63%に向上させたもので、長距離のレースに求められる耐久性にも対応している。

ブリヂストン モータースポーツ部門長・堀尾直孝さん:
大会自体もサステナブルな方向に進んでいる中、ブリヂストンとしてもCO2削減に向けてタイヤの開発、サステナブルなモビリティを支える・貢献するということで取り組んで行きたいと思っている。

ソーラー技術研究に30年以上

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
大学で研究開発が進められてるソーラーカーということですが、いかがですか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
東海大学は、ハイブリッドやEVが本格的に普及するよりもはるか以前の1991年から、ソーラーカーやソーラーボートの研究に学生が主体となって取り組んでいて、さまざまな世界大会で好成績を残しています。

東海大学の取り組みは、もともと環境技術としてのソーラーの可能性に着目して、研究を重ねてきました。

再生可能エネルギーを活用した環境に良い自動車が、ここに来て実用化されたことを考えると、かなり時代を先取りした形で、技術開発に取り組んでいたといえます。

堤 礼実 キャスター:
こういった地球に優しい車が、普及していくといいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
このソーラーカーは、自動車の屋根一面に太陽光を取り込むソーラーパネルがとりつけられている訳ですが、こうしたアイデアは実際に売られている自動車でも、すでに実現しています。

トヨタのプリウスPHEVではオプションで、屋根にソーラーパネルを取り付けることも可能で、ソーラーパネルで充電した電力をPHEVのバッテリーに充電して、走行に生かすことができます。

補助的な活用で実現性高く

堤 礼実 キャスター:
すでに、そのアイディアが実用化されているんですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ただソーラーパネルの電力は、曇ったりトンネルに入ったりと日が陰ると電力供給が滞りますので、ソーラーの力だけで自動車を走らせるというのは、現実には難しいかもしれません。

ただし、PHEVやEV車の屋根にソーラーパネルを取り付けて補助的なエネルギー源とすることは、かなり現実的な太陽光エネルギーの活用方法になると考えられます。

堤 礼実 キャスター:
こういった車がこれから、さらに広がっていくためのポイントは。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
今後はさらなる発電効率の向上や、耐久性、寿命の向上、そして、自動車のデザインと両立する自由な形状のソーラーパネルの開発などが、ポイントになります。

これらの技術開発も現在かなり進んでおり、東芝や京セラなど、日本の電機メーカーのソーラーパネル技術が、この分野にも生かされることが期待されます。

堤 礼実 キャスター:
学生と企業、それぞれが持つアイディアや力が組み合わさることで、新たな可能性が生まれ、学生にとっては、その経験が将来の選択や、技術の発展につながるといいですね。
(「Live News α」8月29日放送分より)