花の都・パリで開催されるパラリンピックまで1年。リオ・東京と2大会連続で銅メダルを獲得している静岡県沼津市出身で車いすラグビーの若山英史 選手(38)は悲願の頂点を目指して日々、研鑽を積んでいる。

見どころは激しいぶつかり合い

2023年7月に行われた車いすラグビーのアジア・オセアニア選手権。日本代表はリオデジャネイロ・パラリンピックで金メダルを獲得した強豪・オーストラリアを圧倒し、パリへの出場権を手にした。

パラ種目で唯一コンタクトが許されている車いすラグビー
パラ種目で唯一コンタクトが許されている車いすラグビー
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パラリンピック競技の中で唯一、車いす同士のタックルが認められ、その激しさから“コート上の格闘技”とも“マーダーボール(殺人球技)”とも称される車いすラグビー。選手にはそれぞれ障がいの程度に応じて0.5~3.5点の持ち点が与えられていて、コートに立つ4人の持ち点の合計が8点を超えてはならない。言わずもがな、障がいが軽い選手ほど持ち点は高く設定されている。

38歳ながら年々進化するベテラン

ロンドンから3大会連続でパラリンピックに出場し、リオ・東京では銅メダルの獲得に貢献するなど長らく日本代表を支えて来た若山英史 選手(38)は障がいが重いため、持ち点が1.0の“ローポインター”で主に守備的な役割を担う。相手の車いすを引っかけて進攻を止めたり、反対に味方が攻撃するための進路を作ったりするなど、“ボールがない”ところで攻防を仕掛けるのが仕事で、言わば縁の下の力持ちだ。

パラリンピック3大会連続出場の若山英史 選手
パラリンピック3大会連続出場の若山英史 選手

パリ行きの切符をつかんだ歓喜の輪には、もちろん若山選手の姿もあったが「ここで満足することなく、さらに上を目指していきたい」と浮かれた様子はない。

2023年で38歳となり、本人も「いろいろなところが痛かったり、今も肘に不安があったりする」と口にするが、スピードは今なお世界トップクラスで短距離走のタイムは「年々、記録があがっている」と言う。

伴侶を得て一人の夢から二人の夢に

日々、過酷なトレーニングに励むのは “花の都”で躍動する姿を思い描いてのことだが、それは今や一人だけの夢ではない。

リラックスできる自宅
リラックスできる自宅

若山選手は2021年10月、約5年の交際期間を経て妻・成美さんと結婚。成美さんは「口では『ケガをしないでね』とか『気をつけてね』とか言いつつ、アスリートが輝ける時間は長くないと思っているので、やれる時に精一杯やってくれればいい」と優しいまなざしで夫を見守り、若山選手も「昔は遠征に行くと体調を崩すこともあったが、最近は体調を崩すことなく試合や合宿の期間を終えられているので良い支えになっている」と幸せをかみしめる。

練習には愛妻弁当を持参
練習には愛妻弁当を持参

19歳の時、プールに飛び込んだ際に頸椎を損傷し、車いすでの生活を余儀なくされた若山選手。「体の機能の半分を失っているので、後悔していないかと言われればそうではない」と話す一方、「ケガをせず、そのままの道を歩んでいたらまずこの競技には絶対に出会っていないし、妻とも出会っていなかったかもしれない。『今がめちゃくちゃ楽しいよ』と自信を持って言える」と笑顔を見せた。

ベテランの戦いは続く
ベテランの戦いは続く

パリ・パラリンピックの開幕まであと1年。大会に臨む日本代表のメンバーは決まっておらずサバイバルレースはまだ続く。ただ、その座を若手に明け渡すつもりは毛頭ない。「金メダルを獲得し、この人生は最高だ」と言うためにも、自らの運命を受け入れ、運命に向き合い続けるベテランの戦いは続く。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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