交通部門の花形、白バイ隊員を目指す警察官。きっかけや歩んできたキャリアはそれぞれ違っていても事故を未然に防ぎ交通安全を願う熱い気持ちは変わらない。静岡県警の10日間の養成訓練に密着した。
交通部門の花形 白バイ隊

交通違反の取り締まりに加え、機動力を生かし、犯人の追跡でも活躍する「白バイ隊員」。白バイ隊員に憧れて警察官になる人も多く、交通部門の花形でもある。

2023年6月、浜松市北区の運転教習所で白バイ隊員を養成する訓練が行われた。警察官が白バイに乗るためには必ず受けなければならない訓練で、基本動作や運転技術を10日間学ぶ。
きっかけは高校時代の交通トラブル

現在は静岡県警清水警察署の草薙交番に勤務する佐藤ありささん(21)。
高校生の頃 自身が交通トラブルに巻き込まれた経験から、同じような被害者を減らしたいという思いで警察官を目指すようになったそうだ。

白バイ隊員は「悪質な運転や危険な事故を減らすことで、嫌な思いや悲しい思いをする人をなくしていきたいという自分の思いに通じるところがある」と佐藤さんは語る。
交番では小型のオートバイを運転することもある佐藤さん。白バイと同じ1300ccのオートバイの扱いにはひと苦労だ。
オートバイの重さは約260㎏。倒れているオートバイを起こすのにも苦戦するほどの重さで、周りのサポートを受けながら車体の扱い方を学んでいく。
清水警察署・佐藤さん: まず慣れるのにも苦労しています。それから車種に合わせた体の動きやコツもあるので、それを探るのにも苦労しています
自動車教習所の指導員から警察官へ転職
一方、ほかの参加者をサポートしながら訓練を受けているのは、沼津警察署に勤務する藤川拓己さん(30)だ。白バイのかっこよさに惹かれたという藤川さんだが、実は前職が自動車教習所の指導員。こちらも交通安全には特別な思いがあった。

教習所を卒業していった生徒が事故や違反をしたという連絡を受け、藤川さんは「自分の教習が伝わっていなかったのか、自分の指導力が足りなかったのか」と考える日々が続いていたそうだ。そして「警察官として交通安全指導をできたら」と思うようになり、転職を決意した。
以前からプライベートでオートバイに乗っていたこともあり慣れた様子だが、訓練に臨む意欲は人並み以上だ。

沼津警察署・藤川拓己さん: うまくできないところがあるので、そこはインストラクターの指導を聞いて少しでもうまくなれたらと思っています
高まる緊張 白バイの実車訓練
訓練の中では県警の特別訓練員から指導を受ける日もあり、憧れの白バイに目を輝かせる。白バイの装備などについて学んだあとは車体の扱いを練習する。訓練で使っているオートバイとサイズは同じだが、無線機やサイレンがついているため、バランスをとるのがさらに難しいようだ。また、スピード違反をしたオートバイを取り締まる訓練では白バイに乗車。佐藤さんも固い表情を見せていた。

清水警察署・佐藤ありさ さん: やっぱり、緊張しました。装備が全然違うものなので「立ちごけ」しないかとか、うまくハンドルがさばけるか、車体と体が一体になって動けるかといったところが不安でした
この日は特別訓練員の走りも見ることができ、先輩の姿から刺激を受けたようだ。
「活躍されている先輩の姿を見て近づきたい。もっとがんばらないと努力が全然足りていない。もっと頑張ります」と佐藤さんは話す。
10日間の訓練もいよいよ最終日。県警の交通指導課長も視察に訪れる中、磨き上げた運転技術を披露する。
市民が憧れる白バイ隊員へ

訓練をやり切った藤川さんは、技術だけではなく、心構えについても学ぶ部分があったと言う。「自分たちが事故を起こさないため、自分たちを守るために今回学んだところをもっとスキルアップしていきたい。『あの隊員さんかっこいいな』と思われる白バイ隊員を目指したい」と抱負を語った。
「悲しい思いをする人を減らしたい」
最初は不安も多かった佐藤さんも、最終日は慣れた様子でオートバイを乗りこなす。
10日間をともにしたバイクも丁寧に掃除し、訓練の日々を振り返るとともに、今後の活躍に向けギアを入れ直していた。

最初は車体を倒すこともままならず「バイクに乗せてもらっている感じ」と話していた佐藤さんだが、「いまは体とバイクが一体となって、うまく乗車できるようになってきた」と訓練による進歩を実感している様子だ。そして「指導・取り締まりをすることで悲惨な交通事故で悲しい思いをする人が1人でも減ればいいなと思う」と改めて決意を固めたようだ。

一般的に白バイ隊員は養成訓練のほか、静岡県警の運転技能検定に合格し、交通課取締係への異動希望が叶えば実現する。
交通安全を願い「悲しい思いをする人を減らしたい」という熱い思いを秘めた彼らの隊員姿を、いつの日か見られることを願ってやまない
(テレビ静岡)