業界の高齢化が進み、耕作放棄地が増え続ける農業。20年にわたり農地の借地を進め、広く点在する「耕作放棄地」で、最新の技術を取り込みながら作業の効率化に挑戦し続ける都城市の農業生産法人を取材した。

最新技術で進める農業の“DX化”

宮崎・都城市で野菜の生産から冷凍加工・販売までを一貫して行うイシハラフーズは、元々は冷凍野菜の加工販売だけの会社だった。

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しかし、高齢化で農家が減少していく中、自社で野菜を栽培しようと20年前から耕作放棄地の借地化を進め、現在は約260haでホウレンソウや枝豆などを生産している。

イシハラフーズ・石原祥子社長:
今、750カ所くらい畑があるんですが、早めに着手をしていたからこそ、いろんな畑を地主さんと交渉しながらやれているというのが、この20年という月日かなと思っています

イシハラフーズでは、都城市内を中心に点在する農地を効率よく管理するため、約10年前に携帯用の営農管理アプリを開発。これにより、農産部の従業員は農場への直行直帰ができるようになり、1日の勤務時間が約40分短縮された。

イシハラフーズ・石原祥子社長:
農産部は今、紙が1枚もない状態で作業をすることができています

農場についての情報が写真と一緒に共有される
農場についての情報が写真と一緒に共有される

従業員は作業の前に、畑に設置されているQRコードをアプリで読み込む。農場の写真を撮影し、野菜の生育状況、肥料や農薬散布などの作業状況、病害虫による被害などの情報を打ち込み、すべての従業員に共有。これにより「畑の見える化」が実現した。

中には、御年76歳でアプリを使いこなす男性もいる。

イシハラフーズ 農産部・田上三十一さん:
自分はこんなの触ったことないから、もう大変やったよ。自分は初心者やから分からんことはみんなに聞いて。恥やと思わんでやってます

効率化によって「農業のイメージ」を刷新

最盛期を迎えた枝豆の収穫作業。15年前までは50人以上の人手をかけて行っていたが、イシハラフーズでは枝豆用のコンバインを特注。現在は5人ほどで収穫している。

イシハラフーズ 農産部・河野誠さん:
畑一つ一つにかける時間を極力少なくしながら、残業とかそういうものもなるだけ少なくなるような環境は、徐々にできあがってきつつあると思います

従業員は現在114人。ここ2年間で採用した農産部の6人のうち4人は農業未経験者だ。ここでは「きつい」「大変」という農業のイメージが変わりつつある。

イシハラフーズ 農産部・室田兼太郎さん:
すごく大変なイメージを持っていたけど、いろんな機械があったので、体力的には楽な感じですね

イシハラフーズ・大島弥生さん:
自分のイメージでは手作業が多いイメージだったんですけど、ガラッと(農業のイメージが)変わりましたね

収穫された枝豆は自社工場に運び込まれ、その日のうちに冷凍加工されていく。イシハラフーズでは、野菜の生産量の増加に合わせ、工場でも機械化・効率化を進めていて、枝豆を選別する工程では、センサーで状態を識別し、商品にならないものを自動選別している。

機械の導入前は約10人で作業していたという。

イシハラフーズ 品質管理部・森永秀人さん:
以前は人の手によって虫食いとかそういった枝豆の不良品を除去していて、非常に労力がかかっていたんですけど、手間が全然違ってきています

父の言葉を胸に「挑戦し続けていく」

農業分野での効率化を積極的に進めるイシハラフーズ。そこには、石原社長の父で、現在会長を務める石原和秋さんの「土に降りない農業をしなさい」という言葉があった。

イシハラフーズ・石原祥子社長:
「土に降りない農業をしろ」ということを20年前から言って取り組んだということはすごいなと。それくらい強いメッセージを持ってやらないと、機械化・効率化はできなかったんだろうと思います。これからも大変な作業などがないように、いかに機械化ができるところはしていくかはずっと考え続けいく、挑戦し続けていくと思います

これまでの農業のイメージを大きく変え、新しい農業の姿を追い求めるイシハラフーズの挑戦はこれからも続く。

(テレビ宮崎)

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