「本当にひどい」 衰弱した17匹のネコが狭いキャリーケースに押し込められた状況に、保護した団体は驚きの声をあげた。この遺棄をめぐり41歳の女が動物愛護管理法違反の疑いで書類送検された。女は他の場所にも8匹を捨てていたとされる。遺棄の罰則は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金だ。

「信じられない。ネコが重なって」

住宅前に捨てられたネコ
住宅前に捨てられたネコ
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2023年6月7日夜、沼津市の住宅の玄関前にネコ17匹が、イヌ用のキャリーケースに入れられ捨てられていた。栄養失調でやせていたり、皮膚がただれたりしていた。17匹のうち15匹は子ネコだ。
ネコを保護した動物愛護団体「キャットファースト三島」の代表は、「信じられなかった。ネコが重なって、早く出してあげなければ圧死してしまうと思った」と、目に涙を浮かべながら振り返る。

住宅前に捨てられたネコ
住宅前に捨てられたネコ

「キャットファースト三島」代表:
本当にひどい。みんな痩せていてノミがすごかった。(スタッフが)お母さんネコに差し出したごはんに乳飲み子が吸い付いていた。普段はあり得ないです。多頭飼育崩壊が起きていると、そこでわかりました

飼育ができなくなるほど多くの動物を飼い、適切に管理できない状態に陥ることを「多頭飼育崩壊」と言う。

「増えすぎて飼いきれない」母娘を書類送検

静岡県警 沼津警察署
静岡県警 沼津警察署

この遺棄をめぐり8月18日、警察は沼津市に住む無職の女(41)と母親(65)を、動物愛護管理法違反の「愛護動物の遺棄」の疑いで書類送検した。

女は2023年2月にも、沼津市の別の住宅の前に子ネコ8匹を手提げバックに入れた状態で捨てた疑いが持たれていて、警察はこの件でも女を書類送検した。

住宅前に捨てられていたネコ
住宅前に捨てられていたネコ

事件はネコが捨てられた家の住民からそれぞれ通報があったことで発覚し、警察が近隣住民や動物病院への聞き込みのほか、防犯カメラの解析などを進めたところ女の犯行が明らかとなり、話を聞く中で母親の関与も浮上した。
調べに対し、女は「ネコが増えすぎてしまい、飼いきれなくなって捨てた」と容疑を認め、母親も「娘に頼まれて一緒に捨てた」と話しているということだ。

動物愛護管理法とは?

母娘が違反したとされる動物愛護管理法は、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待しないことの他、人間と動物が共に生きていける社会を目指し動物の習性をよく知ったうえで適切に取り扱うよう定めている。

住宅前に捨てられたネコ
住宅前に捨てられたネコ

飼い主の責任については、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことがないように努めなければならないとしている。

罰則も定められていて、愛護動物をみだりに殺したり傷づけた者は5年以下の懲役または500万円以下の罰金、水やエサを与えず衰弱させるなど虐待を行った者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、遺棄した者も1年以下の懲役または100万円以下の罰金だ。
愛護動物とは、人に飼われている「哺乳類、鳥類、爬虫類に属する動物」、および飼い主の有無にかかわらず全ての「ネコ・イヌ・ウシ・ウマ・ブタ・ヤギ・ニワトリ・アヒル等」のことだ。

罰則は2019年の法改正で強化された。例えば、改正前は殺傷は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」だったが、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」となり、遺棄に関しても罰則は「100万円以下の罰金刑」のみだったのが「懲役刑」が加えられた。

遺棄されたネコのその後

「くすのき」で保護されているネコ
「くすのき」で保護されているネコ

キャリーケースに入れられ捨てられた17匹のネコのうち死亡の4匹を除いた13匹は、県東部地域の3団体に保護され、治療などが続けられている(2023年7月時点)。
3団体のひとつ、無償で活動する熱海市のNPO法人「くすのき」はネコ6匹を受け入れた。このうち1匹は新しい飼い主が見つかった。

くすのき・那須みか代表
くすのき・那須みか代表

NPO法人「くすのき」・那須みか代表:
(保護されたネコは保護から)1カ月以上になるが元気。きちんと飼ってくれる飼い主、家族が見つかることが一番。家族が決まるのはいつもうれしい

ネコを最初に保護した動物愛護団体「キャットファースト三島」によると、多頭飼育崩壊は、社会的弱者、収入が少ない人や精神を患っている人、母子家庭で生活保護を受けている人たちなどに比較的多いそうだ。団体の代表は「命として大切に扱ってほしい」と強く訴える。

「くすのき」で保護されているネコ
「くすのき」で保護されているネコ

キャットファースト三島の代表:
保健所などにも相談して「こういう状態だ」と言ってくれれば、保健所も適正に指導してくれる、手助けをするボランティアを紹介してくれる。ぜひ頼ってほしい。これ以上無駄になくす命を増やさないでほしい

静岡県の“多頭飼育崩壊”チェックシート
静岡県の“多頭飼育崩壊”チェックシート

静岡県によると多頭飼育にかかわる苦情の件数は、2021年度が110件、2022年度が114件で増加している。
静岡県は多頭飼育崩壊を早い段階で発見するためのチェック表を作成した。

保護されたネコ
保護されたネコ

親戚や大家、それに生活支援を受けている人の場合はサポートしている人など、「身近な人が兆候を察して保健所などに連絡してほしい」と、県は呼びかけている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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