学校の先生が授業内容などを黒板に書き出していく「板書」。

一昔前は“紙のノートに書き写す”のが当たり前だったが、今は“スマホで写真保存”をする学生が増えつつあるようだ。

スタディプラス株式会社の調査で、中高生の半数以上が、授業中の板書をスマホで写真保存していることが分かった。

調査を行ったのは、同社の「Studyplusトレンド研究所」。株式会社PFUと共同で 5月31日から6月5日にかけて、中高生2967人を対象に「勉強時の『デジタル』と『紙』の使い分けに関するアンケート調査」を実施し、7月19日に結果を公表した。

この調査で、教材を閲覧したり、メモを記述したりする際に「デジタル端末と紙を使い分ける割合」を聞いたところ、教材を閲覧する時は「デジタル端末・紙を併用」、記述は「紙の使用」が主流となる傾向がみられたという。

「紙教材でメリットだと思うこと」については、「メモを取りやすい」(71.1%)、「解く過程が残るので、間違っている箇所などに気づきやすい」(64.6%)など、勉強自体の進めやすさが上位に挙がった。

紙教材でメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)
紙教材でメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)
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一方、「デメリットだと思うこと」としては、「重くて持ち運ぶのが大変」(67.8%)、「場所を選ぶため、気軽に勉強しづらい」(55.8%)など、教材の重さや使用場所の制限など、物理的なハードルが上位を占めた。 

紙教材でデメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)
紙教材でデメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)

「デジタル教材でメリットだと思うこと」については、「動画や音声で理解しやすい」(75.3%)、「移動中に見やすい」(74.6%)など、理解のしやすさや気軽な勉強のしやすさといった回答が上位に挙がった。

デジタル教材でメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)
デジタル教材でメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)

一方、「デメリットだと思うこと」としては、「学習と関係のないことをしてしまう」(77.9%)、「目が疲れる」(69.7%)、「充電が面倒」(59.8%)など、デジタルならではの短所が目立った。

デジタル教材でデメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)
デジタル教材でデメリットだと思うこと(提供:スタディプラス)

また、「授業中の板書を、デジタル端末(タブレットやスマホ)に写真で保存することはありますか?」と聞いたところ、55.7%が「保存することがある」と答え、「ルールで禁止されている」は22.9%、「保存したいと思わない」は21.4%だった。

授業中の板書をデジタル端末に写真で保存することはありますか?(提供:スタディプラス)
授業中の板書をデジタル端末に写真で保存することはありますか?(提供:スタディプラス)

そして、「紙のノートや参考書の内容を、デジタル端末で撮影して写真保存することはありますか?」と聞いたところ、「保存することがある」が70.8%、「保存したいと思わない」が29.2%という結果だった。 

紙のノートや参考書の内容をデジタル端末で撮影して写真保存することはありますか?(提供:スタディプラス)
紙のノートや参考書の内容をデジタル端末で撮影して写真保存することはありますか?(提供:スタディプラス)

さらに、「デジタル端末で勉強する際、スクリーンショットの機能はどれくらい活用していますか?」についても質問していて、「毎日使う」は20.1%、「たまに使う」は56.8%、「使ったことがある(最近は使っていない)」は15.7%、「使ったことがない」は7.4%となり、勉強時のスクリーンショット活用の経験率は9割を超えた。

スクリーンショットの機能はどれくらい活用していますか?(提供:スタディプラス)
スクリーンショットの機能はどれくらい活用していますか?(提供:スタディプラス)

勉強における「写真保存」や「スクリーンショットの活用」が当たり前になりつつあるのを感じる調査結果だが、「写真保存」や「スクリーンショットの活用」で授業内容は身につくのか? また、”デジタル”と”紙”をどのように使い分けると、勉強がはかどるのか?

スタディプラスの担当者に“デジタル”と“紙”を使い分ける方法を聞いた。

「タイパを追求している傾向のあらわれ」

――このような調査を行った理由は?

中高生のスマートフォン利用率は高く、「スマ勉(=勉強時にスマートフォンを活用する)」をする割合も高いことが、過去の当社調査の結果から分かっています。

文部科学省の「GIGAスクール構想」で学校現場における1人1台端末の配備も大きく進んでおり、映像授業やAIドリルをはじめとした、多種多様なデジタル教材も登場しています。ここ数年で、中高生の学習シーンにデジタルが大きく浸透してきたことが分かります。

一方、当社は教育機関や学習者を日常的に支援している中で、中高生の学習がデジタルに完全にシフトしたわけではなく、紙と併用して学習を進めているのが実態だと理解しておりました。

そこで、デジタル・紙それぞれの良さをどのように生かし、どのように使い分けしているのか、その実態をより詳細に捉えたいと考え、株式会社PFU様と共同で今回の調査を実施しました。


――「写真保存」や「スクリーンショットの活用」に関する調査結果、どのように受け止めている?

昨今では、時間効率を求める「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉がよく聞かれるようになりました。今回の調査結果は、中高生が学習において「タイパ」を追求している傾向のあらわれだと受け止めています。

社会人においても、会議でホワイトボードに書いた議事録を写真で撮ったり、仕事に参考になりそうなウェブサイトをスクリーンショットで保存したりして、後で見返すようなことは多くの方が経験しているのではないでしょうか。

いずれも、「タイパ」を求めながら、仕事を進めるための“保存行為”です。タイパを重視する時代背景に、中高生の学習シーンに端末が普及したことが相まった結果、端末の特性を活かした効率的な“保存行為”が発生しているのだと捉えています。

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――今の中高生は、板書を紙のノートに書かなくてもいいの?

今回の調査で「授業中の板書を、デジタル端末(タブレットやスマホ)に写真で保存することはありますか?」と聞いたところ、中高生の22.9%が「ルールで禁止されている」、21.4%が「保存したいと思わない」と回答しています。学校や教員の方針、生徒の特性、授業形式などによって、ルールや実態は様々だと捉えております。

「自分に合った勉強方法を見つけてほしい」

――「紙のノートや参考書の内容をデジタル端末で撮影して写真保存する」。これは何のため?

タイパ重視の中高生にとって、通学中をはじめとした、スキマ時間に勉強する行為は当たり前となっております。

今回の調査結果においても、中高生が紙教材のデメリットとして挙げた項目は「重くて持ち運ぶのが大変」が67.8%と最も多く、「場所を選ぶため、気軽に勉強しづらい」「移動中に見づらい」といった意見も半数以上を超えています。

一方で、デジタル教材のメリットとしては、「移動中に見やすい」「場所を問わずに勉強しやすい」「重くないから持ち運びやすい」といった回答が6割を超えました。中高生はデジタル端末を活用するシーンとして、“移動時”が活発であることも、今回の調査結果から分かっています。

これらの傾向・結果から、紙教材で勉強していて「重要だ」「暗記したい」と思った内容を、紙教材を広げるのが困難なスキマ時間などに見返するために、スマートフォンをはじめとした端末で撮影・復習するような学習が行われていることが考えられます。

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――「スクリーンショットの活用」で授業の内容は身につくの?

スクリーンショットは保存を目的とした手段の1つであり、その行為をするだけでは授業内容が身につくものではありません。授業内容を理解するためには、授業自体をしっかりと聞き、スクリーンショットで保存したデータを授業後の“振り返り学習”で活用することなども、必要になってくると考えます。


――「デジタル」と「紙」は、どのように使い分けると勉強がはかどる?

「デジタル」と「紙」、それぞれの特性を踏まえて、自分に合った勉強方法を見つけてほしいと考えています。

スクリーンショットについては、端末学習時にメモしたい内容を効率的に保存し、後から場所を問わずに見返すことができることが利点です。内容を自身の頭に定着させるためには、「データを何度も見返す」「紙に何度も書く」「文章を音読する」など、様々な方法があるかと思います。

いろいろと試しながら、効率的・効果的に学習を進めることができる、自分に合った方法をぜひ確立してほしいです。

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今回の調査結果によって明らかになったのは、勉強をするとき、「写真保存」や「スクリーンショットの活用」が当たり前になりつつある現状だ。

一昔前と比べて、中高生の勉強方法が大きく変わっているのが分かった。中高生の子どもがいる人は、今回の調査結果を踏まえ、“デジタル”と“紙”、それぞれのメリットを生かした勉強方法を見つけるよう、アドバイスしてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。