スマートフォンのアプリを活用して漁港を釣り場として管理し、釣りを楽しんでもらおうという全国初の取り組みが静岡県西伊豆町で始まった。地域の活性化に役立てようという狙いだが、どんなアプリなのか取材した。

コロナ禍で脚光を浴びた“釣り”

釣用品国内出荷額はコロナ禍以前より高い水準に
釣用品国内出荷額はコロナ禍以前より高い水準に
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密を避けるアウトドアレジャーとしてコロナ禍で脚光を浴びた“釣り”。公益財団法人 日本釣振興会は国内の釣り人口を約1200万人と推計していて、一般社団法人 日本釣用品工業会によれば2022年の釣用品国内出荷額は1737億6000万円と対前年比こそマイナスに転じたものの、コロナ禍以前の2019年(1397億5000万円)と比べれば依然として高い水準にある。

トラブルが絶えず釣りを禁止する場所も

一旦は釣りを“禁止”した田子漁港
一旦は釣りを“禁止”した田子漁港

一方、釣り人気の高まりにともない、ゴミの放置や違法駐車、密漁や漁業関係者とのトラブルなど、以前から指摘されていた問題がさらに顕在化。その結果、全国的に釣りを禁止する場所が相次いだ。

西伊豆町・田子漁港もその1つ。伊豆漁業協同組合 田子支所・真野創 支所長によれば、2022年6月、釣り人の仕掛けを漁船が巻き込んでしまい、金銭トラブルに発展したことをきっかけに「町役場と相談して釣りを禁止した」という。

アプリの活用で釣りを“解禁”

「海釣りGO」の開発で釣りを“解禁”
「海釣りGO」の開発で釣りを“解禁”

それでも西伊豆町にとって豊かな海は大切な観光資源。特に田子漁港はアクセスが良く、魚も豊富で釣り人たちに人気のスポットであることから、釣り人と漁業関係者との共存を目指し、官民一体となった“釣りの解禁”がスマートフォンのアプリ「海釣りGO」によって2023年7月に実現した。

國村取締役「漁港に釣り機能を持たせることを実現」
國村取締役「漁港に釣り機能を持たせることを実現」

開発したのは、さかなファーム(東京都新宿区)の國村大喜 取締役。2022年に西伊豆町へ移住した際、田子漁港の釣り禁止を知りアプリの開発に着手。「漁港でありながら、一部分に釣り公園の機能を持たせることを実現した」と話す。

ルール等を承諾しなければ予約できない
ルール等を承諾しなければ予約できない

「海釣りGO」では、田子漁港の中で釣りができる場所や日時ごと混雑状況を確認することができ、漁港のルールや安全に関する推奨事項を承諾した上で料金を支払うと予約が完了する。あとは指定した時間に、指定したエリアでルールを守って釣りを楽しむだけ。釣り公園の場合、利用時間が限られてしまうものの、田子漁港では24時間どの時間帯でも予約可能で、利用料金は中学生以上が1人につき1時間300円、西伊豆町民と小学生以下は無料だ。國村取締役は、このアプリの強みについて「人数を管理できること」と胸を張り「釣り場が混みすぎると釣り人も楽しくないし、混むこと自体がトラブルの原因になる」と話す。

また釣り人の安心につながるよう、巡視員による24時間体制の巡回も行われているが、こちらは利用料が原資となっている。

釣り場を後世に残すために

西伊豆町も期待を寄せる
西伊豆町も期待を寄せる

誰もが釣りを楽しめる場所を後世に残していくためにも、この取り組みには西伊豆町も期待を寄せていて、産業建設課の松浦城太郎さんは「従来は釣り人から漁港にお金が落ちることはなかった」とした上で「釣り人が漁港に利用料を支払うことで直接的に漁港の整備にお金が使えるようになり、漁港だけのにぎわいではなく、漁港周辺のにぎわいにもつながるのではないか」と話す。

釣りを楽しんでもらい、地域振興へとつなげようというこの取り組み。釣り人と漁業関係者との新しい共存の形が西伊豆町から全国へと広まっていきそうだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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