北海道を変えるゲームチェンジャーとして期待が高まるプロジェクト。次世代半導体工場が進出する千歳市のいまを取材した。
「ラピダス進出」で変わる千歳市
JR千歳駅前に30年前から店を構えるラーメン店。ギョウジャニンニクを使ったピリ辛タンタンメンや手作りギョーザが人気だ。最近、店内でラピダスのことがよく話に出るという。

店長 梅尾 聖志さん:
ラピダスは話題にはなりますね。出張で来られるお客さまは少しずつ増えていると思います
町の人も…。
保険会社に勤める人:
保険会社です。色々なニーズがあると思うので楽しみです
タクシー運転手:
工事関係者や従業員が来て、人口も増えそう。僕らのニーズも高まってくると思います。何人か工事関係か、敷地を見たいという方もいました
"5兆円投資"説明会は定員オーバー
ラピダスの新工場に寄せられる期待。

少なくとも2棟が計画されている工場では、9月にも始まる本格的な建設に向け急ピッチで作業が進められていた。
西村 康稔 経産相:
この地域がラピダスを中心に国内外の関連産業も投資する一大集積地。世界の最先端の集積地になることを期待している
6月18日、経産省の西村大臣が建設地を視察。経産省はラピダスに3,300億円の支援を決めている。ラピダスはトヨタやNTTが出資し、世界でも例がない最先端の半導体の量産を目指して2022年8月に設立された新会社で、投資規模は5兆円。北海道で過去最大の企業進出といわれ、大きな経済効果が期待されている。
5月は、事業説明会に定員を超える1,400人ほどが来場。ビジネスチャンスを狙う企業も多く参加した。
苫小牧市の物流業者:
規模が大きすぎてわからないが、どんなサプライチェーン(供給の流れ)ができるのか興味がある
世界で起きる半導体"開発競争"
そもそも半導体とは一体、何なのだろうか。
ミツミ電機 半導体事業部 久米 卓史 副事業部長:
われわれの作っている半導体がここにある。色々な機能が詰まった電子部品、身近なものだとスマートフォン。電源につないで長時間を置くと電池が膨張して爆発する危険性あるが、半導体はそういう時に充電を止める
千歳市で半導体を製造しているミツミ電機だ。半導体は様々な種類があり、ラピダスが開発を目指すのはAIや車の自動運転で情報処理をするもので小さいほど処理能力が高く、電気も使わない。

目標は、回路幅2ナノメートル。髪の毛の5万分の1の細さで世界各地で開発競争が行われている。
建設に最大6000人…"地元の恩恵"は
半導体の工場は、地域と密接に関わっている。ここでは400人が3交代24時間体制で働き、8割が市内に住んでいる。

作業服は、専門的な技術を持つ地元のクリーニング店で洗濯。堂も24時間地元企業が関わり運営されていて、送迎バスや掃除も地元で担っている。
期待と不安…学校は?技術確立は?
駅周辺ではそれまでの2倍の価格で購入希望があった土地もあるほか、幹線道路沿いの土地へはレンタカー会社などから問い合わせが相次いでいるということだ。

不動産のピース 鈴木 善一 社長:
需要や問い合わせが多くて驚いてます
ラピダスの半導体工場は2027年の量産化を目指している。千歳市では今後ますます期待が高まりそうだ。

ただ、ラピダスをめぐっては期待ばかりではなく、心配ごともある。学校だ。
千歳市の人口は約10万人で、近年は企業進出で人口が増えている。生徒数も増えたため2012年に新しい中学校ができたほか、2022年4月には生徒数1,500人というマンモス校の小学校から新しい小学校が分離された。
千歳市教育委員会は、ラピダスの影響で人口が増えたら、再び学校を増やさなければならなくなるかもとしていて、状況を注意深く見守りたいとしている。
さらにラピダスのプロジェクトを疑問視する意見もある。元・半導体技術者で経営コンサルタントの湯之上 隆さんによると、ラピダスが目指す2ナノメートルの半導体の量産化は実現が難しいとしている。

日本で実現しているのは40ナノの半導体で、2ナノまでは9世代も飛び越えなくてはならない。湯之上さんは、いきなりではなく段階的に開発する必要があるとするが、実現できなかった場合は5年後にも千歳市から撤退する可能性があるとしている。そうなると、失業者があふれてしまうことも考えられる。
ラピダスには国から巨額の税金が投入されている。無駄にならないようにするとともに、地元への悪影響が出ないようにしてほしい。
(北海道文化放送)