富士山が世界文化遺産に登録されてから2023年で10年となった。静岡県側の開山は7月10日。新型コロナによる規制も解除され、登山客の増加が予想されている。そこで心配されるのが、遭難事故の増加だ。体調の管理や十分な装備など、富士登山するために登山者自身の“準備”も必要だ。

営業準備を進める山小屋

2013年に世界文化遺産に登録された富士山
2013年に世界文化遺産に登録された富士山
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標高3776m、日本の象徴として古くから親しまれる富士山。2023年6月に世界文化遺産に登録されて10年を迎えた。

山小屋「雲海荘
山小屋「雲海荘

開山まで1カ月を切り、富士宮口6合目にある山小屋「雲海荘」(うんかいそう)では、営業開始に向けた準備が進められていた。

アフターコロナで問い合わせ殺到

営業準備を始める山小屋
営業準備を始める山小屋

2023年は新型コロナによる規制がなく、登山客から宿泊の問い合わせが相次いでいる。

渡辺代表「週末は満室かそれに近い状態」
渡辺代表「週末は満室かそれに近い状態」

雲海荘・渡辺 尚俊 代表:
去年はもとより、コロナ前よりもしかしたら問い合わせが殺到している感じですね。週末は満室かそれに近い状況になってきています

山頂付近の山小屋はすでに満室状態
山頂付近の山小屋はすでに満室状態

頂上に近い山小屋はすでにほとんどの日が満室となり、その影響で6合目の雲海荘にも予約が取れない登山客が流れ込んでいる状況だという。

準備をする渡辺代表
準備をする渡辺代表

雲海荘・渡辺 尚俊 代表:
ここ数年はコロナ禍で商売的には厳しかったので、お客さんが来てもらえるということは、売り上げを考えればもちろん喜ばしいというのはあります

予約殺到を歓迎も人手不足

短期アルバイトの希望者が減少
短期アルバイトの希望者が減少

予約殺到を歓迎する一方、課題となっているのが従業員不足だ。

雲海荘では毎年アルバイトを募集しているが、コロナ禍を経てバックパッカーなどの短期のアルバイトを希望する人が減ってしまったという。

渡辺代表「人手不足は不安材料の一つ」
渡辺代表「人手不足は不安材料の一つ」

雲海荘・渡辺 尚俊 代表:
近年なかなか人出は集まらなくなっています。コロナばかりが理由じゃないと思いますけど、不安材料の一つではあります

懸念される“軽率な”富士登山

装備などの荷物を背負う登山客
装備などの荷物を背負う登山客

そして、山小屋が満室となり、登山客が増えることで懸念されるのが、十分な休息を取らない弾丸登山や十分な装備をもたない軽装での登山だ。

救助にあたる警察も心配している。

植松課長「ケガよりも疲れて動けないことが多い」
植松課長「ケガよりも疲れて動けないことが多い」

静岡県警富士宮署 地域課・植松 幸敬 課長:
(弾丸登山は)高山病なりやすく、なるともう動けなくなるんですね。山岳遭難で、疲れて動けないというのがよくあるんですね。ケガしたというよりも動けないというのが多いです

救助要請で多い“疲労で動けず”

山での訓練に向かう山岳遭難救助隊
山での訓練に向かう山岳遭難救助隊

夏山シーズンに向け静岡県警の山岳遭難救助隊は訓練を重ねている。この日は1人で登山していた男性が疲労で動けなくなったことを想定した訓練だ。

山岳遭難救助隊の訓練
山岳遭難救助隊の訓練

救助隊:
おーい大丈夫ですか

遭難者役:
ここです大丈夫です

救助隊:
要救助者発見、今からいきますんでね

山岳遭難救助隊の訓練
山岳遭難救助隊の訓練

県警によるとここ数年は、体力が続かず疲れて動けなくなり救助を要請するケースが多いという。弾丸登山や十分な装備をもたない登山は、遭難するリスクが高くなる。

武藤 副隊長「弾丸登山は非常に危険な行為」
武藤 副隊長「弾丸登山は非常に危険な行為」

静岡県警山岳遭難救助隊・武藤 諭 副隊長:
弾丸登山は、夜のうちに出発すると思うが、気温も低いし道もわからない。夜は雨が降るなど天候が悪い場合が多いので、非常に危険な行為だと思います。まずは防寒着、薄手のダウンやセーターそれにカッパ、そして登山靴を履いてもらいたいです。サンダルは論外としても、簡単なスニーカーではなくトレッキングシューズで登山してほしいと思いますね

富士登山での注意点

富士登山での注意点
富士登山での注意点

富士登山では、夏でも天候が悪化すれば冬のような寒さになる。防寒着や登山靴、モバイルバッテリーなど十分な装備が必要だ。また、上りだけでなく下りの体力も考えて登ることが重要となる。

遭難した場合は、まず平らで落石の危険がないところに移動する。そして身の安全を確保できたら、携帯電話で110番・119番通報しむやみに動かないようにする。

山岳遭難救助隊の訓練
山岳遭難救助隊の訓練

2023年は登山客が多く見込まれることから、県警の山岳遭難救助隊は、事故に備えて開山中は毎日 富士山の九合目付近に常駐するという。

いずれ入山規制も?検討求める声

多くの登山客が訪れる富士山
多くの登山客が訪れる富士山

大勢の登山客が予想される中、検討を求める声も上がっている入山規制。

富士山世界遺産センターの遠山敦子館長は、安全面や環境面から入山規制に前向きな姿勢を示している。

遠山館長「未来のために一歩踏み出してもいいのでは」
遠山館長「未来のために一歩踏み出してもいいのでは」

富士山世界遺産センター・遠山 敦子 館長:
富士山はみんなで守るんだと、未来のために守るんだという気持ちでいけば、もう少しその辺は決めて、一歩踏み出してもいいんじゃないかなと思っています

富士山
富士山

静岡側の開山は7月10日。世界文化遺産である富士山を登って楽しむためには万全な準備が求められる。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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