政府は6月13日、2023年版の「消費者白書」を閣議決定した。

2022年の全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、全国で86万9938件で、前の年より約1万1000件増加した。

相談内容で最も多かったのは「迷惑メール」や「不審な電話」を含む「商品一般」で7万9046件だった。「基礎化粧品(4位 2万3906件)」や「エステティックサービス(6位 2万0715件)」など、美容関連の相談が増加したことが特徴だ。これら2つの相談内容は、前の年は上位10位以内に入っていなかった。

「消費者被害・トラブルの推計額」は約6.5兆円で、前年(5.9兆円)より増加している。消費者庁によると、消費者トラブルにあった人がここ数年増加していることに加え、一件当たりの平均金額が上昇しているという。コロナ禍からの解除で旅行をはじめとした「教養・娯楽サービス」や健康食品などの「食料品」の購入が増加したことが影響したと分析している。

成年年齢引き下げの影響見られず

2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられた。新たに成人となった18歳、19歳が消費者トラブルに巻き込まれるケースが増えるのでは無いかと危惧されたが、実際には相談件数の大幅な変化は見られなかったとしている。

50代のSNSトラブル相談が1位に

SNS関連の相談件数では例年にない変化があった。年代別の相談件数を見ると、50歳代からの相談(1万2521件)が過去最多となり、前年まで最多だった「20歳代」からの相談件数(22年は1万1964件)を初めて上回った。消費者庁は「若者だけでなく中高年のSNSの利用が増えてきたため」と分析する。

消費者庁によると「SNSをきっかけとしたトラブル」の類型は3つあり、一つ目は「広告」、二つ目は「勧誘」、三つ目は、SNSで知り合った相手からチケットを受け取るなどの「売買契約」だが、中高年は「広告」がきっかけになるケースが多いという。

具体的には、SNSで有名デパートの閉店セールの広告をクリックし注文したが詐欺サイトだった事例などが寄せられているそうだ。一方、20歳代からの相談は「勧誘」がきっかけとなるとケースが多いとしている。

高齢者のネット通販トラブル相談が過去最多に

2022年の65歳以上の高齢者の相談件数は約25万8000件で、例年とあまり変わらなかった。この数字は全体の相談件数の約3割にあたる。

特徴的なのはインターネットにからむトラブル相談の増加だ。消費者庁が実施したインターネット利用に関するアンケート調査によると、65歳~74歳では「ほとんど毎日利用している」「毎日ではないが定期的に利用してる」「時々利用している」と回答した人が合わせて63.3%にのぼった。

「ネット通販」を使う高齢者も増加している。高齢者の「ネット通販」に関する相談件数は2018年には3万7287件だったが、2020年4万3190件、2022年には4万9535件と右肩上がりで、過去最多を更新し続けている。
また高齢者の「定期購入」の相談も近年増加傾向にあり、22年は2万5155件で過去最多だった。特に「定期購入でアンチエイジングの美容液を購入して解約手続きをしたつもりだが、商品が届き続ける」「SNSの広告から1回限りの「お試し」で商品を購入したが、いつの間にか定期購入になっていた。解約したい」などの「化粧品」や「健康食品」のトラブルの相談が65~74歳から寄せられているという。

消費者庁は「高齢者の消費者トラブルは色々な状況があるからこそ丁寧な対応が必要。地域に密着した『見守り』が大事なのではないか」としている。

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