高校生が熱戦を繰り広げた熊本県高校総体。熊本県立菊池高校のボート部・主将は、白血病と闘った経験がある。最後の総体に挑む姿を追った。

中2での異変 気づいたのは母

梅雨の晴れ間が広がり、強い日差しの下、全力でボートを漕ぐ一人の選手がいた。熊本県立菊池高校3年、ボート部キャプテンの水元奎太さんだ。

水元奎太さん:
1年生、しっかり乗る前にネジ確認とかしてね

水元さんはキャプテンとして下級生に目配りし、チームを引っ張っている。

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水元奎太さん:
100%じゃ成長しないと思っている。毎日101%、その1%を大事にどれだけ出せるかを考え、頑張ってきた

元気に体を動かす水元さんだが、数年前には考えられなかった光景だという。水元さんが体に異変を感じたのは、中学2年生の9月のことだった。

水元奎太さん:
学校の階段がきつすぎて、上ったらハアハアいうような感じでした。何でこんなにきついんだろうとか思っていて、ちょっと当たったくらいで内出血していて、お母さんが気づいてくれたみたいな感じです

母・香さん:
歯茎が腫れて出血して、熱が出て骨が痛いと言っていたんですよね

白血病の治療「親が帰った後泣いた」

下された診断は白血病。小児には珍しい型の急性前骨髄球性白血病だった。

父・伸一さん:
病名を聞いたときに、「あ…死ぬのかな」というのを最初に思った

すぐに治療のため入院。輸血に服薬、それに抗がん剤。つらい治療にも弱音を吐くことなく取り組んだ。それでも、当時まだ中学2年生。

水元奎太さん:
親が帰った後は、泣いたりというのは覚えている。吐き気とか、見た目で変わるとしたら、抗がん剤で髪の毛が抜けたりとかがありました

母・香さん:
きつそうでしたね。代わってやりたいというところだけど、それは本人しか治せないところだから、頑張ってもらわないとという感じで見守るだけだった

約10カ月の入院生活を経て退院。地元の県立菊池高校に入学すると、これまで経験のなかったボート部に入った。初めは前に進むどころか、水に落ちることもあったということだが、持ち前の向上心で力を付けていった。

ボート部入部 体力なく何倍も努力

水元奎太さん:
最初の方は練習がきつすぎて無理かなと思ったけど、初めて試合で勝った時の喜びでおもいっきり、はまった。船が進むと勝てるし、船が進むスピード感が楽しい

菊池高校ボート部 岩下強監督:
最初は1,000メートルがやっとくらいの体力しかなくて、それから何倍も努力してここまでやってきました。いま、すごく体力がついています。それも練習のたまもの。真面目に一生懸命取り組む姿勢が他の部員にも波及して、部全体が非常にいい方向に向かっている

県高校総体では2人でボートを漕ぎ、1,000メートル先のフィニッシュを目指すダブルスカルに出場する。

ペアを組む松田駿利さん:
(水元君は)自分たちの高校の中では一番速くて、まねしたいと思うところがたくさんある選手

高校総体への意気込みを語る水元さん
高校総体への意気込みを語る水元さん

水元奎太さん:
多分、嘘ですね。頑張ってくれているので一緒に頑張りたいです

家族で囲む食卓。闘病していたころは恋しかった時間だ。

水元奎太さん:
お母さんは看護師としてサポートしてくれたり、お父さんは男同士として楽しませてくれたりして、本当に感謝しかないですね。ボートを大学でもしたいので、総体の結果では声を掛けられたりもあると思うので、死ぬ気で行くところかなと

県高校総体3位に 九州大会出場へ

こうして迎えた大会本番。 予選、そして準決勝を通過し、いよいよ決勝のレースを迎えた。

水元奎太さん:
リラックスしていこう。行けるけん、頑張ろう

決勝は、全国トップクラスの実力を持つ熊本学園大学付属から2艇と、済々黌、そして菊池の争いとなった。

先を行くのは、熊本学園大付属の2艇、その後に済々黌、菊池と続いた。レース序盤で失速する菊池、まさかの事態が起きていた。

水元奎太さん:
プカプカ浮いている黄色いやつにオールが当たって、1回、松田君が漕げなくなったので

ペアを組む松田さんの手からオールが離れるハプニング。それでも軌道修正し、気力を振り絞り、追い上げた。

徐々に差を詰めていく菊池。 

父親:
奎太、頑張れ!松田、頑張れ!

結果は3位。インターハイ出場は優勝校のみだ。1位、2位は熊本学園大学付属。3位・菊池、そして4位・済々黌。九州大会へは同一校から2艇は行けないため、水元さんたちが目標としていた九州大会への切符を初めて手にした。

病気で動けない子の励みに 

水元奎太さん:
久々にこんな頑張ったな。死ぬ気で行きました。途中失敗したのでどうなるかなと思ったけど、最後しっかり全力振り絞って(前に)出られたので良かった。(自分の姿は)いま病気していて動けない子たちの励みになるんじゃないかなと思ってます

つらい闘病生活から約4年。水元さんは「いま」という日々を全力で生きている。6月17日、18日に鹿児島県で開かれる九州大会が高校生活最後の大会。水元さんは、再び全力で挑む覚悟だ。

(テレビ熊本)

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