「楽をしてお金を増やしたい」…そんな気持ちにつけ込んで、若者から大金を得ていた男らが逮捕された。一体、どのような手口を使っていたのか。

集めた額は7億円以上、被害者は全国で2500人以上に

投資を巡り不正な勧誘をした疑いで5月24日、大阪府警に逮捕されたのは東京都港区に住む、無職の坂本昂洋容疑者(33)で、ほかにも丸田勇剛容疑者(23)ら男女8人が逮捕されている。

警察によると被害者は全国で2500人以上、集めた額は7億円以上に上るということだ。

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警察によると、坂本容疑者ら9人は、2022年6月上旬から9月上旬までの間に、複数回にわたり消費者との連鎖販売取引の契約の際に、法令で定められた契約書等を交付せず、また、契約の解除を妨げるために本当ではないことを言った「特定商取引法」違反の疑いだ。

一体、どのような手口を使っていたのでしょうか。 「だまされた」と訴える大阪府内の大学生Aさん(21)に話を聞くことができた。

投資をめぐる「悪徳マルチ商法」勧誘の実態とは…

被害者Aさん(21):
1万ドルその時で140万円ぐらいですね。金返せ、それくらいですね

Aさんが140万円もの大金を払うキッカケとなったのは、大学の同級生Bからの何気ない誘いだった。

「遊びに行こう」と言われ、連れて行かれたのは大阪市内の高級マンションの一室。そこにいたのが丸田容疑者で、ドバイに拠点を置く「マーケットピーク」という会社の良さを力説された

記者:
マーケットピークの説明…最初、何と言われた?

被害者Aさん:
資産運用を高めていく教育の会社という説明(だった)

丸田容疑者が資産運用の方法として持ち掛けたのが「マーケットピーク」が独自に運用しているという「暗号資産の購入」だった。

暗号資産とはインターネット上で取引される通貨のような機能を持つ電子データで、取引によっては価格が大きく変動するため多くの人が投資目的で利用している。

被害者Aさん:
この暗号資産が今からどんどんあがっていくから(と言われた)。元本保証とか、元本割れは絶対しないとか…お金は返すみたいな話ですね

被害者たちを誘い込んだ容疑者を“直撃取材”…

さらに、こんな説明も…

被害者Aさん:
誘ったら自分にお金が入ってくる。誘った本人が一番お金入るんですけど、その上の人もお金が入るようになる…

記者:
何人誘えばいいとか?

被害者Aさん:
最低4人誘ったら、自分の払った額が戻ってくるみたいな

警察は、坂本容疑者らは被害者が入会金を払うと「マーケットピーク」の暗号資産を渡し、その後は、新たな入会者を紹介する見返りに紹介料を渡すという、いわゆる“ねずみ講”で金を得ていたとみている。

Aさんは、しつこく続く勧誘に根負けして140万円を支払った。

被害者Aさん:
「稼げば就職もしなくていいじゃない。稼いで大学退学してもええやんか」と(言われた)。結構いろんなブランド物を見せられて、その時は稼げたらこんなふうになれるんだなと

「マーケットピーク」の暗号資産の価値は下がる一方で、警察によると、日本では換金できないということだ。

Aさんを誘った同級生Bはなぜ、怪しい投資話を勧めたか…取材を進めるとB自身も別の友人に誘われ、大金を支払っていたことが分かった。

Aさんに投資を勧めた同級生B氏は、関西テレビの取材に対し「僕は、アホだったので分からなくて、別の友人の言われるままにやったら、よくない結果になったという感じです。勧誘もしました。今思えばしなかったら良かったなと」と話した。

関西テレビはAさんと同級生Bを誘いこんだ丸田容疑者に、逮捕される前に話を聞いた。

(逮捕前の)丸田勇剛容疑者(23):
売ってないし、運用もしてないです。配布なんですよ

記者:
違法という認識はない?

(逮捕前の)丸田勇剛容疑者:
はい、違法でやってないです

18歳以上は“成人” 一度契約すると簡単に取り消しできず

国民生活センターには、去年1年間で18歳から22歳までの若者によるマルチ商法に関する相談が1000件以上も寄せられたということだ。

こうした状況に、各地の大学では新入生を中心に注意を呼び掛けている。

立命館大学学生部 船尾優一さん:
楽に稼げます。短期で稼げるますみたいなこと、聞かれることも少なくないんじゃないかなと思います。特にSNSを通じてですね。おいしい話や甘い言葉というのは疑ってもらう

学生とはいえ、18歳以上は成人となるため、一度契約を結んでしまうと簡単に契約の取り消しを行えず、危険につながる。

また、立命館大学では、1・2年生からの相談が特に多いそうだ。

立命館大学学生部 船尾優一さん:
高校生気分が抜けなくて大学に来て気分も高揚してるところはあると思うが、最低限の知識・リスク管理の情報は自分を守る意味でも、充実した大学生生活を送っていく上でも身につけてほしい

急増する「SNS投資詐欺」…その背景にコロナも

甘い言葉で、若者から大金を搾取する悪徳マルチ商法。

被害者Aさん:
もうちょっと基礎的なことを勉強しとけば、まだこんなことなってなかったかなと思ってます

警察は、坂本容疑者らの認否を明らかにしておらず、グループの実態解明を急ぐとしている。

悪徳マルチ商法の被害をお伝えしたが、いま投資を巡る被害が相次いでいる。若者や中高年も狙われていて、特にSNSを利用した手口で急増する「SNS投資詐欺」について最新の投資詐欺に詳しいファーマ法律事務所の村上貴洋弁護士に聞いた。

(Q.SNSなどをキッカケに投資を持ちかける“SNS投資詐欺”…このような詐欺が増えているんですか?)

村上貴洋弁護士:
近年、非常に増えていまして、私の弁護士事務所だけでも月100件以上、年間でいうと1000件以上の相談が寄せられています。意外と若い人だけではなくて、中高年も狙っている。お金を持っている富裕層だけでなく、一般の普通の人をターゲットにして、主婦や会社員、学生など幅広くターゲット層にしている特徴があります

オレオレは古い…「詐欺の傾向」少しずつ変化 不安系→“誘惑系”へ

村上弁護士によると、最近の詐欺の傾向が少し変わってきているそうだ。

オレオレ詐欺、振り込め詐欺など、被害者を不安にさせてお金をだまし取る“不安系”でした。しかし、最近の詐欺の傾向は、「投資でもうかる」「利益が出る」といった誘い文句でSNSを利用し、被害者に近付き全てのやり取りがスマホで完結する“誘惑系”のSNS投資詐欺が非常に多いということだ。

(Q.不安系から誘惑系に変わったというのはどういった時代の流れや背景があるのでしょうか?)
村上貴洋弁護士:

ひと昔前にはやっていたオレオレ詐欺は世の中に浸透して、高齢者も防御できるようになってきているので詐欺が成立しなくなっている。詐欺師たちが次の一手で注目したのがSNS投資詐欺です。電話ではなくてSNSというツール(道具)にすることによって、高齢者には逆に使えないですがターゲット層が一気に広がった。さらにコロナの影響もあって、副業・投資に興味を持つ人が増えたこと、さらに、遠隔でのやりとりに慣れて、人に会ってなくても投資することに抵抗感がなくなっているなど、時代的な背景もあってSNS投資詐欺は広まっていると思います

「SNS投資詐欺」 入金先が“個人口座”なら要注意

では、SNS投資詐欺は、実際にどのような手口で行われているのか。

その手法は、インスタグラムなどのダイレクトメールでコンタクトを取ってくることが多いそうだ。 「○○さん、こんにちは!もしよかったら友達になりませんか?」というような文面とのこと。

その後、やり取りをダイレクトメールからLINEに誘導され、トークを重ねるんですが、このトークが続いていく中で、「最近のお気に入りなんだ~」と高級腕時計や高級車の写真が送られてくる。

こうした何気ないトークの中で、裕福そうに見える写真が送られてきて、相手から「実は、最近投資を始めて…」など投資話を持ち出してくる。そして、もうかっているというデータも示しながら、「よかったら投資やってみない?」や「お金を預けるだけで大丈夫だから」と投資話を持ち掛けられる。

そして…最終的には個人口座への入金を誘導してくるということだ。

村上貴洋弁護士:
(個人口座への入金は)冷静に考えればおかしな話なんですが、投資するのが本当の会社だったら個人の口座に振り込ませることはあり得ないです。詐欺グループは、ネット上で売買されている個人口座を使っています。振り込みを持ち掛けられて、個人口座の場合は詐欺だと考えていただきたい

スマホやSNSを使う方なら、誰でも被害に遭う可能性がある“SNS投資詐欺”ですが、だまされないために、どう気を付ければよいのか。

村上弁護士が指摘するポイントが、こちらの3つです。

(気を付けるべきポイント3つ)  
・そもそも安易なもうけ話は世の中にない  
・対面で話もしてない人を信じて投資をしない  
・入金先が個人口座なら間違いなく詐欺

詐欺師や詐欺グループはあの手この手で誘惑してくる…安易なもうけ話には裏がある。

(関西テレビ「newsランナー」2023年5月24日放送)

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