「受診控え」顕著に 新型コロナによる経営危機

福岡県内の開業医を対象にした緊急アンケートの結果が公表された。
医療機関の窮状が浮き彫りとなっている。

福岡県保険医協会 大脇為常副会長:
外来患者数が減ったとの回答が「86%」となっております。このままでは、少なくない医療機関が「閉院」の憂き目に遭いかねません

多くの医療機関が直面しているという厳しい経営状況。
飯塚市内にある診療所では…

ひじい小児科クリニック 肘井孝之院長:
(患者数が)4月からドーンと落ちた。緊急事態宣言の後から。(今は?)まだ半分ぐらいじゃないですかね

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ちょうど1年前、患者数は1日で42人だった。ひっきりなしに訪れていた患者が、4月以降めっきり減ったという。

ひじい小児科クリニック 肘井孝之院長:
これがきょうでしょ? 22人。ほぼ半分です

ーー医院は何年?

ひじい小児科クリニック 肘井孝之院長:
2016年。ここまでの(患者の)減少はなかった。本当にびっくりした。初めてですね

今なお続く患者数の落ち込み。その要因は?

来院した人:
(受診を)控えてます。ひどくなってから来るという感じ。やっぱコロナがちょっと怖いというのがある

来院した人:
(小児科は)混んでいるというイメージが強くて。ここは1回、先月 来たことがあって、しっかり個室とか対応されていたので大丈夫かなと

診療所では、健診や予防注射を受ける患者と、発熱などがある患者の受け付けを分けている。
待合室として、個室も3部屋備えた。
しかし、こうした対策を施していても、やはり感染リスクを恐れた「受診控え」が顕著なのだという。

ひじい小児科クリニック 肘井孝之院長:
発見が遅れるとか、発達にしても(例えば)4カ月健診で見るべきポイントがある。それをクリアしているかどうか。そういう意味での受診控えはいけないし、それは予防注射もしかり。本来、何カ月までに打ってほしいものが打ててないとか、そういう問題がある

募る患者への思い。ただ、診療所の経営が立ちゆかなくなっては元も子もない。

激減した患者数の影響は2カ月後に

とりわけ、6月は厳しい事情がある。それは「6月危機」ともささやかれている。
医療機関の収入である診療報酬は、2カ月後に支払われる。つまり、患者数が4月に激減した影響は、6月にもたらされる。

さらにこの診療所では、5月の患者の減少幅が4月より大きかったため、7月はますます深刻となる。
県の支援金などには申請を済ませたというが、現在の収支はギリギリの状態だ。
そんな状況下でも、スタッフへの待遇は維持している。

ひじい小児科クリニック 肘井孝之院長:
彼女たちも生活があるから。医者が1人居ても何もならない。サポートしてくれる人が居ないと―。先のことは、今考えてもわかんないね

4月時点で全国の病院の約3分の2が「赤字経営」

テレビ西日本 仲村健太郎記者:
厳しい経営状況に直面しているのは、規模の大きな医療機関も同じ。ここは50年以上の歴史がある地域の中核病院です

訪ねたのは、福岡市博多区の千鳥橋病院。

千鳥橋病院 山本一視院長:
4月は、(前年比で)5,000万円の全体での減収で、5月は見込みだが、約1億円の減収ですね。何とか存続しなくちゃと考えるが、非常に危ないと思っている

日本病院会などの調査によると、4月時点で全国の病院の67%、約3分の2が「赤字経営」に陥っているという。

千鳥橋病院では、新型コロナの感染拡大を受け、陽性者を受け入れられるベッドを4床新設した。

千鳥橋病院 山本一視院長:
ここにコロナ陽性患者を受け入れるスペースを作るために、つぶさないといけないベッドがあって―

受け入れ体制を整えるため、通常の入院用ベッドを12床閉じなければならなかった。
それによる損失は、ひと月1,500万円に上ったという。

千鳥橋病院 山本一視院長:
それとベッドを作ることで、いろんな医療器具とか、例えば心電図モニターを購入しないといけなかったり、夜勤の体制を作ることで、人件費がかかったりする

長年、この病院は救急医療も担ってきた。
発熱などがある患者は、今後も感染を疑う必要がある。
そこに潜んでいるかもしれないウイルスを常に想定し、万全の体制をとらなければならない。
スタッフや医療物資―。厳戒体制は緩めることができない。

千鳥橋病院 山本一視院長:
民間の医療機関は、何の後ろ盾も補助金もないので、減収のために資金ショートして倒れていくか、あるいは返す展望がないけど、取り敢えず融資を受けてという、どちらもなかなか先のないところに置かれていると思う

日本医師会会長「適切な医療提供ができなくなるのでは…」

日本医師会 横倉義武会長:
地域によっては、適切な医療提供ができなくなるのではと、非常に心配している。いろいろ調査をすると、病院によっては収入が2~3割減っているところもあるが、病院側が支出する人件費などの代金は、ほとんど変わりがない。そのため収益率も低下している

病院や診療所を襲う新型コロナによる経営危機。
第2波、第3波にも揺るがない医療体制を築くために、今 求められていることとは何なのだろうか。

(テレビ西日本)

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