収穫まで時間がかかり、栽培も難しいことから“幻の山菜”と呼ばれている「行者にんにく」。昔、山野で修行僧がこっそり食べて、力をつけていたといわれていることから、植物学者の牧野富太郎が名付けたという。佐賀県の山間部では、この「行者にんにく」を新たな特産品にしようという試みが行われている。

“幻の山菜”の栽培地へ

佐賀市富士町でレストランを経営する佐保和彦さんの畑では、たくさんの山菜が育てられている。その一角でみずみずしく生い茂っているのが「行者にんにく」。

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佐保和彦さん:
これが「行者にんにく」です。ちょうど種をまいてから5年目くらいです。「行者にんにく」は5年くらいたたないとこういうふうに収穫できるような大きさにはなりません。とってみますか?

中嶋理沙記者:
(小さな球根みたいなのが下についていて)らっきょうみたいですね

佐保和彦さん:
「行者にんにく」は全体が食べられます

「名付け親」は植物学者・牧野富太郎

「行者にんにく」は、涼しい気候の地域でしか育たない山菜で、国内では北海道が最大の自生地と言われている。

収穫まで5年から8年を要し、生産量も少ないことから「幻の山菜」と呼ばれていて、昔、山野で修行僧がこっそり食べて力をつけていたといわれていることから、植物学者の牧野富太郎が「行者にんにく」と名付けたそう。

山間部の活性化に向けて、キノコや山菜の生産拡大を目指していた県は、6年前に標高が高く涼しい菖蒲地区に目を付け、山菜料理のレストランを経営する佐保さんに「行者にんにく」のモニター栽培を依頼した。

佐賀県での知名度は低いものの、北海道や東北では人気があり、ほかの山菜と比べて高値で取引きされることもあり選ばれた。

県 林業試験場 淵上武俊主幹:
ここ佐賀県では、北海道、東北地方より収穫時期が早いということから、消費者の皆さんに早く提供できるという有利な点があるのが理由です

佐保和彦さん:
一番大変なのは草取りです。有機無農薬ですので除草剤は当然使いませんから

ようやく販売の「行者にんにく」は“完売”

苦節5年、佐保さんは2023年3月に、初めて富士町産「行者にんにく」の販売にこぎつけた。

1つ300円50パック限定で用意したところ、すぐに完売。「行者にんにく」の旬は、3月下旬から4月上旬までと短く、まさに“幻の山菜”。年内の販売はもうないが、佐保さんが経営するレストランで提供される予定だ。

気になる「行者にんにく」の味は?

中嶋理沙記者:
にんにくほど香りが強くなくて、これはニラに似ていますね。食感もシャキシャキしていてとっても美味しいです

山菜アドバイザー・西要子さん:
「行者にんにく」と名前を聞いただけで、にんにくの個性を思い出し、嫌がる人もいるが、使ってみれば親しめる植物だと思っています

山間部の特産品へ…地道な試み

さまざまな料理で活用が見込める「行者にんにく」。生産する農家が3人から6人に増え収穫も徐々に安定してきたことから、県は今後、富士町だけでなく三瀬など、近隣の生産者にも技術を伝え生産量を増やしていきたいとしている。

“幻の山菜”を、山間部の新たな特産品にするため地道な試みを続け、期待が高まる。

(サガテレビ)

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