露天風呂での盗撮事件で犯行グループの主犯格とされる男の裁判が4月26日に静岡地裁で開かた。検察側は男に対し懲役3年を求刑し、「女性の尊厳を傷つけた」と厳しく非難した。裁判官から「何か言いたいことは」と促された男は、反省の言葉とともに「実刑でも仕方がない」と述べた。
山中に潜み望遠レンズで盗撮 逮捕者13人

起訴されているのは茨城県の無職の男(50)で、2021年 北海道・神奈川県・兵庫県で仲間と共謀するなどして露天風呂で女性を盗撮した罪に問われている。
一連の盗撮事件では、公務員、新聞社勤務の男、会社役員など13人が逮捕された。グループは、温浴施設から100~300m離れた山の中に潜み望遠レンズを使い盗撮していたという。

また“魔改造”と称し、裸と着衣姿を見比べる画像を編集しデータを共有していた。被告は、こうしたグループの主犯格とされている。
静岡地裁で開かれた裁判で検察側が17回にわたって盗撮をくり返したとする一方、男は「このうちの1回は自分は関わっていない」と主張してきた。
検察「極めて悪質」懲役3年求刑

そして4月26日の公判で検察側は「強い計画性があり極めて悪質な行為」と指摘した。
検察側:
高機能の機材を使い、強い計画性がうかがえる。撮影した動画などを仲間で共有するなど極めて悪質な犯行。女性の尊厳を傷つけるもので、主導的に犯行に及び前科もあることから再犯の可能性もある
検察側は被告を懲役3年とするよう裁判所に求めた。
弁護側「盗撮技術を防犯に生かす。執行猶予を」

一方、弁護側は反省していることや家族が監督していくことを主張した。
弁護側:
盗撮の前科はあるが、5年以上してこなかった。反省し、事の重大性を理解している。本人は「盗撮の技術を防犯に生かしたい」と話している。すでに長期の身体拘束を受けている
弁護側は「執行猶予のついた判決が相当」と寛大な刑を求めた。
被告「仲間の人生を引きずり降ろし…」

最後に裁判官から「何か言いたいことは」と促され、被告が口を開いた。
被告:
自分の甘えに負けなければ、被害者を生むことはなかったと思っている。被害者の女性の気持ちを思うと、傷つけてしまったのは明白で申し訳ないと思っています。悪い趣味の仲間と知り合って犯行を繰り返してしまいました

被告:
みんな頭の良い人で頑張って仕事もしていた。その人たちを自分と知り合ったことで巻き込んでしまったので、よく考えて行動しないと…。人生を引きずり降ろしてしまった。悪いことをしているのは分かっています。実刑でも仕方がないと思っています。相応の刑を求めます
被告の発言をもって審理は終結した。判決は6月30日に言い渡される。
景色か防犯か?温泉施設も困惑

被告は犯行には望遠カメラを使い、北海道・茨城県・神奈川県・岐阜県・兵庫県で計17回盗撮をくり返した罪に問われてきた。
事件を受け警察は温泉施設を集めた講習会を開き、関係者は施設の改良や防犯カメラの検討などを余儀なくされた。

露天風呂の景色を取るか、女性客の安心のため壁や生け垣をつくるか、頭を悩ませた施設も多くあった。
一連の捜査は終了しているが、こうした犯罪をなくすため社会として何ができるか引き続き考えていく必要がある。
(テレビ静岡)