新型コロナウイルスは、現金給付のスピードやビジネスのあり方において日本社会の脆弱性や課題を強く浮き彫りにしている。脱グローバリゼーションの流れがあるといわれる中、日本はどのような立ち位置を取るべきか。
今回の放送では自民党の新組織・新国際秩序創造戦略本部座長の甘利明氏、三菱ケミカルホールディングス会長で規制改革推進会議議長の小林喜光氏を迎え、議論を深めた。

コロナ下で「働き方」は大きく変化した

反町理キャスター:
テレワークや時差出勤など、コロナによって日本のビジネス風景は変わった?

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
今の段階では、当社の本社オフィスは2割出勤。ただ生産現場はリアル経済の場だから、人が行く必要がある。同じ会社の中でも異なる。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
スキルの有無による能力差がダイレクトに出る。テレビ会議で支障がないのなら出張とはなんだったのかというビジネス関係者も。するとこれから航空業界が活況を呈するとは限らず必要性が見直される。つまりDX(デジタル・トランスフォーメーション、デジタル変革)を通じて、仕事の要不要の仕分けがでてくるということ。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
オフィスに広さも不要になるから、オフィスフロアを提供するビジネスも、経済規模拡大に従ってフロアが必要という従来の考えでは失敗する。ここでもリモートワークにより新たな要不要が現実化している。コロナ前のビジネス形態から変わってくる。

反町理キャスター:
小林さんご自身もここ2〜3カ月はあまり出社せず?

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
2月の終わり頃からゴルフも会食もしていない。以前は朝から政府・財界関係と朝食会、昼はランチミーティング、それからホテルのレストランで会食。土日のどちらかはゴルフという生活だったが。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長

反町理キャスター:
どう感じるようになりましたか。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
非常に快適です。

反町理キャスター:
夜の会合や土日のゴルフを取り戻したいとは?

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
今は思わない。変化を好む人と嫌う人がいる中で僕は好む方だが、一年後にはみんなに会いたいとなるかも。アナログもデジタル一緒にしてハイブリッド化していくことが大事。

コロナ前に戻すのではなく、先取りして競争力のある産業形態に

反町理キャスター:
政府のコロナ対策予算は一次・二次補正予算など全て合わせ、事業規模で230兆円。どう見るか。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
コロナにより確かにグローバル化してきた世界はナショナリスティックになっていくが、世界的に比較優位であるためには、デジタル化を元に戻してはいけない。痛みを伴うことも一定許容しなければこの国は全く変わらない。アフターコロナの状況下で、グローバルに勝ち抜くために日本の強さを発揮すべきことは自ずと分かる。コロナを起爆剤としてよりトランスフォーム(変革)すること。ここで会社も国も差がつく。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
コロナによるダメージ復旧には世界最大規模で取り組んでいる。問題はコロナ以前に戻るのではなく、先取りをして競争力のある別次元の産業形態にしていくこと。そこに産業をどう誘導するかが大事。

いままで日本社会が”信用”を立派に築きすぎた

長野美郷キャスター:
コロナにより日本の様々な問題が浮き彫りになっています。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
日本の習慣、例えば紙幣にこだわること。今まで日本社会が信用というものをあまりに立派に築き上げてきたので、リアルなものへのこだわりが強い。ハンコ業者のような既得権者への政治的配慮を含め、優しく甘い文化がDXを遅らせた。しかし優秀な官僚は本気で変えようと思っている。政にも官にも悪い部分はあるが、国民も変わろうとしなければ。

反町理キャスター:
その背中を押すのがコロナ?

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
水にカエルを入れてゆっくり温めると気づかず死ぬという話がある。しかし天敵の蛇を入れると飛び出す。起業家精神ある若者、資本効率だけを重んずる海外のアクティビストなどではなく、コロナが蛇だった。今は不幸をチャンスと捉えて、ゆでガエルを風呂から飛び出させるとき

米中対立の中どう舵取っていくか

長野美郷キャスター:
コロナ後の米中との向き合い方は。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
国家安全保障関連は当然しっかりブロックすべき。一方で環境や健康問題、一国で対応できないことは共同で。テーマごとにはっきり戦略を作る必要がある。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
昔のように「この技術は軍事転用されうる、これはコモディティ技術」といった線引きができない。まして中国は軍民融合。その中で、片方で旧西側の基本的理念である法の支配、人権、民主主義というベースは譲れない。一方で中国は国家が国民を監視する権威主義。スタンダードの取り合いになる。中国と全く付き合わないわけにはいかない。どう付き合うか。
日本の経済界には、社内でもアメリカと取引する人が中国との取引に移るということがないように、明確なファイアウォールを持ってもらいたい。情報が筒抜けになると見られれば、サプライチェーンから外されてしまう。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長

反町理キャスター:
経済安全保障という言葉もある。その見極め・線引きをどうするか。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
今はないが、日米欧の間での常設の協議体が必要。アメリカはファイブ・アイズ(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)と機微情報を保持できる仕組みを持っている。機微情報へのアクセス権限は、人間関係や資金援助まで調べて与えられている。FBIやCIAのOBが非常に厳密に行っている。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
日本では今後政府と民間が議論しながら、対中国の線引きのガイドラインを作ることになる。

反町理キャスター:
対中国で展開した後にアメリカに後ろから撃たれれば、何もできない。

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
長期戦略を立てられないために近寄られなくなると、日本の損失になる。

反町理キャスター:
ポストコロナにおいて、経済安全保障という概念が米中の経済活動に網をかけていく前提で、たとえばアメリカが金融機関のイランとの取引をシャットダウンしたような事態の可能性を想定すると、どういうスタンスで米中を見ればよい?

小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長:
簡単ではない。価値判断を決めてそのロジックが立つところで進出し、どう考えても危ないところには近づかないことから始めざるを得ない。
デジタルと専制主義の親和性は高く、その前では民主主義がもどかしいものとなってしまう。コロナ対策でも、日本は要請のメッセージしか出せず、日本人の特異性でどうにかしている。民主主義対デジタル専制主義という捉え方で、企業体もどのように民主主義を守りながらデジタル化するかという難しい選択をしなければならない。

甘利明 自民党 新国際秩序創造戦略本部 座長:
日本の民間企業に考えて欲しいのは、セキュリティクリアランスと、サイバーアタックに対するセキュリティ標準として何を装備するかということ。これがなければ、旧西側諸国から技術漏洩を危惧され、遮断される危険性がある。

(BSフジLIVE「プライムニュース」6月10日放送)