和歌山市・雑賀崎漁港の演説会場で起きた岸田首相襲撃事件。最悪の事態も想定される状況の中、警備態勢は十分だったのでしょうか。「めざまし8」はアメリカの要人警備のプロに話を聞きました。

米要人警備のプロ「警備はかなり素晴らしかった」
4月16日、めざまし8の取材に答えたのはアメリカで民間警備会社を経営するボムベース氏。今回の日本の要人警護をどう見たのでしょうか。

米民間警備会社CEO ボムベース氏:
このビデオを見て分析しましたが、警備はかなり素晴らしかったと思います。犯人を取り押さえることができているし、爆弾が爆発したときには、岸田総理はすでに離れた場所に移動できていました。
その一方で、警備の難しさも指摘しました。

米民間警備会社CEO ボムベース氏:
今回のような場合は、できれば招待した人だけにしたいですが、不可能です。例えば、来る人たちを調べるために、入り口で金属探知機などで調べることは必要です。また、総理を守る人だけではなくて、観衆に溶け込んで見張るエージェントも必要です。
犯行を未然に防ぐためには、観衆にも溶け込む必要があるといいます。
「警備人数は適切」一方で問題点も
では、今回の警備態勢は万全だったのでしょうか。警視庁警備部特殊部隊の元隊員として米大統領など国賓警護も担当し、現在はテロ対策の専門家として活動している伊藤鋼一氏に話を聞きました。

Q. 警備が、木村容疑者が岸田首相に近づいていくような動きを把握するのは難しい?
伊藤鋼一氏:
本来であれば、把握をして職務質問や声かけをしてそこから排除して、持ち物検査をするというのが、警察官の役割だと思います。

事件当日の警護の人数は十分だったのでしょうか。事件発生前の警備態勢を伊藤氏に確認してもらうと、岸田首相の後ろには警護担当が少なくとも6人いることがわかります。
当時の現場周辺は、映像などから確認できるものによると、会場周辺や聴衆の中にも警護がいる状況でした。伊藤氏によると、駅前など大勢が集まるような場所ではないため、人数だけ見れば適切だといいます。

爆発物が投げ込まれた時の映像を見てみると、爆発物が投げ入れられた後、すぐに警護が首相に近づき、爆発から首相を守るように防弾バッグを広げています。
Q. 警護は首相の盾になって爆風から守れているようにも見えるが、対応はこれで十分か。
伊藤鋼一氏:
それが銃弾ですとか飛翔物といいますか、刃物で襲ってきたり、そういうのは対応できますよ。爆薬というか爆風というのは、時速1000km以上で飛んで来ますので、これができるのかというのは疑問は感じますが、ある程度は守れます。

爆発物が投げ込まれた際はどのような対応が望ましいのでしょうか。伊藤氏によると、本来なら「防爆マット」を爆発物にかぶせるべきだったといいます。
「防爆マット」は重さ約20kgで、破片の飛散を防ぐことができます。爆弾処理車に搭載されているもので、警視庁は聴衆が集まることがあれば持って行くものだといいます。しかし、今回は持ち込んでいなかったのか、使用していません。
伊藤氏は「港に来る人は限られているので、油断もあったのでは」と指摘しています。

さらに、会場には聴衆ら200人が集まっていましたが、持ち物検査は行われていません。2022年7月の安倍元首相の銃撃事件の教訓は生かされなかったのでしょうか。
伊藤氏は「午前8時ごろには警備が始まり、怪しい人物がいればすぐに職質をかけるはず。去年と比べ体制強化は見当たらない」と指摘します。
Q. 再び襲撃事件が発生してしまった理由は、どういったことが考えられるか。
伊藤鋼一氏:
様々な警察官が配置につくわけです。例えば、警視庁のSPもいますし、和歌山県警の警備員もつきます。その他、公安の刑事や地元の警察署とか警備部の人も。ですから、そういう人材の中でそれぞれの個々のスキルが低い部分というのが、どうしても地方警察にはあります。それは残念なことなんですけど。警視庁の警察官であっても、地方警察東京都の警察官なんですよ。イニシアチブを取ってそこで警備をして、全体を把握していくことはできないんですね。あくまでも和歌山県警の補助に入るというか支援に入るという形ですので、その辺の難しさもあると思います。

5月19日からは広島でG7サミットが開催され、主要7カ国及びEU首脳が集結します。今回の事件を受け、今後どのような警護態勢が必要になってくるのでしょうか。
ボムベース氏は「日本は安全な環境にする責任がある。全ての観衆を審査すべきだし、顔認証システムの設置も必要」と話しています。
(「めざまし8」4月17日放送)