江戸時代に奥州と羽州を結ぶ道が「山中七ヶ宿街道」と称され、7つの宿場があったことが町名の由来となっている宮城県七ヶ宿町。現在は、県内で最も人口が少なく、高齢化率が高い。そんな町を盛り上げようと、郷土料理と地域の伝統を武器に奮闘するヒーローがいる。

郷土料理伝えるヒーロー

宮城県七ヶ宿町。蔵王連峰の南麓、福島・山形両県との県境に位置する自然豊かな町だ。2023年3月26日、この町で郷土料理を作るイベントが開かれた。参加者は全員、町への移住者。作っていたのは「くずため」という汁物。ニンジンやサトイモなどの具材をだしや酒、しょうゆで煮込み、最後に片栗粉でとろみをつける。七ヶ宿町の湯原地区や峠田地区に伝わる料理で、冬の法事や小正月に食べるそうだ。

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神奈川県から移住して7年の女性:
住んでいても知らなかったので、こういう郷土料理を教えていただけてありがたかったです。

埼玉県から移住して5年の女性:
外から入ってくると自分のお母さんがこの土地にいないので料理を聞けない。こうやって教えていただけるのは、この町の伝統とか習わしとかも習えるので、続けていってほしい。

このイベントで郷土料理の作り方を教えていたのが、七ヶ宿町のニューヒーロー、その名も「ソウルフードピンク」!その正体は町内に暮らす30代から80代の女性たちだ。その人数は総勢で27人にのぼる。

ソウルフードピンクが生まれた背景にあるのが、町が抱える人口減少と少子高齢化の問題だ。七ヶ宿町の人口は、ピーク時の1960年ごろには5000人を超えていたが、2月末時点で1253人と4分の1まで減った。

町は、2015年から移住者に新築住宅を提供する事業を行うなど、移住・定住促進に力を入れているが、進学や就職で町外に出る人が多く、「人口の45%が65歳以上」と宮城県内で最も高い高齢化率となっているのが現状だ。

ソウルフードピンクの願い

こうした問題に立ち向かうため、町が2022年11月に結成したのが「地方創生戦隊ナナイロレンジャー」。町内の農家や陶芸家などさまざまな分野の人がヒーローとなり、YouTubeやイベントなどを通して町の魅力を発信する。このうち、郷土料理で町を盛り上げる使命を持ったヒーローが「ソウルフードピンク」である。実際に、ソウルフードピンクと会うことができるというので、訪ねてみた。

高橋咲良アナウンサー:
あなたが、ソウルフードピンクのエイコさん?

市川栄子さん(83):
エイコです!ソウルフード!!

ソウルフードピンクの一人、市川栄子さん(83)。普段は郷土料理を作り道の駅で販売している。この日も、参勤交代の際に七ヶ宿町を通った殿様が必ず食べていたという、七ヶ宿町伝統の「笹巻き」を作っていた。

高橋咲良アナウンサー:
笹巻きいただきます。お米がモチモチで、笹の良い香りがしますね。

市川栄子さん(83):
今の若い人たちには伝わっているか分からないのだけど、昔はどこのうちでも笹巻きを作って、殿様気分で食べようかみたいな冗談も言いながら食べてきた。

七ヶ宿町で暮らして70年以上になる市川さん。町の変化を肌で感じているという。

高橋咲良アナウンサー:
この地域だけで見ても人は減っている?

市川栄子さん(83):
減っています。子供が都会に出て、その人たちが戻ってくれればいいが、仙台へ行けば、仙台に家を持ってしまう。たまには来るけれど、ここに戻ってきて生活をするということが少なくなっていて、残っているのがじいちゃん、ばあちゃん。

市川さんはソウルフードピンクの活動を通じて、町に興味を持つ人を1人でも増やしたいと考えている。

市川栄子さん(83):
どんどん交流して仲良くなって、色んなことを覚えてもらって…。七ヶ宿町に行けば、こういうものがあるんだなと思ってもらえる人が、1人でも2人でもいれば、町が明るくなっていくんじゃないかと思う。

町を元気にするヒーロー、ソウルフードピンクの奮闘は続く。

(仙台放送)

仙台放送
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