経済発展が著しい東南アジアのカンボジアで今、日本のノウハウを生かしたまちづくりが進められている。自然豊かな環境で、理想のまちを目指すこのプロジェクトに乗り出したのは富山の住宅メーカーだ。
富山とカンボジアの企業が共同で取り組む壮大なプロジェクトを取材した。

アジアトップクラスの経済成長率

カンボジア中部にあるコンポンチュナン州。自然豊かなこの地区でまちづくりを進めているのは、富山市の住宅メーカー「丸和」だ。

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丸和 林俊成社長:
池の周辺に、寺院を建設する計画をしている

林社長は、新たな市場開拓にと2019年、カンボジアに現地法人を設立。これまで、分譲住宅のプロジェクトなどを現地企業と共同で進めてきた。

カンボジアは、日本の約半分の国土に1,600万人余りが暮らす国だ。政権が安定した1990年代から海外資本による開発が相次いで進められていて、近年、アジアでトップクラスの経済成長率を誇っている。

しかし、都市部では高層ビルが立ち並び、かつての景観が失われていくことを惜しむ声があがっている。また、農村部との経済的な格差も目立つようになってきた。

丸和 コン・バンさん(カンボジア出身):
高級な建物はどこにでもある。カンボジアには伝統な家などがあって、その建物がだんだんなくなっていって、もったいない

また、農村部に住む人からは次のような声が聞かれた。

--仕事は何ですか?
農村部に住む人:

無職です。この地域は仕事が少ない。プノンペン(首都)ならあるのですが…

「自然」を生かした“まちづくり”を

首都プノンペンから約100km離れた、コンポンチュナン州でのまちづくりプロジェクト。ここでは、豊かな自然を生かしながら寺院や学校、ホテルなどを建設し、観光などの新たな産業も生み出す計画だ。

カンボジアの建設会社「イングホールディングス」が、「自然環境」にこだわって開発を進めたいと、富山で長年家づくりをしてきた丸和にプロデュースを依頼した。

イングホールディングス イング・ブン・ハウ会長:
最初は寺院の建設だけを考えていた。しかし、考えを広げていくうちに「自然」を生かしたまちづくりへたどり着いた

丸和 河内利成さん:
イング会長は、プノンペンのプロジェクトではシンガポールの会社に都市計画を依頼していた。今回は里山というキーワードで富山の丸和に依頼してもらえた

「世界的建築家」とのタッグ

しかし、丸和の林社長にとっても、まちづくりとなると初めての試みだ。そこで今回、タッグを組んだのが、隈研吾さん。これまで富山でも自然を生かした設計を手がけてきた世界的な建築家だ。

建築家・隈研吾さん:
丸和の林社長から声をかけていただいて、まず(富山と)つながりがあると思った。富山も里山が美しいし、水もきれい。コンポンチュナンも水と里山の(美しい)場所。このつながりを生かしたら面白いプロジェクトができると思い引き受けた

計画面積は約250ha。隈さんは丸和と共同で、建物だけではなく、まち全体の設計も手がける。

既存の池を利用して湖をつくり、「水」と「緑」が美しいまちへ。そして、ホテルなどの屋根には断熱を兼ねた植栽を設けることで、景観と機能性を高めることにしている。また、農場やバイオマス発電施設なども整備し、持続可能なまちを目指す。

建築家・隈研吾さん:
僕にとってもトータルデザインができる機会はめったにない。世界の環境に興味がある人たちから関心をもたれる。世界に発信できるプロジェクトになると感じている。世界中の人がコンポンチュナンに集まる。そんなことまで夢見ています

カンボジアの自然と日本のアイデアを融合させたこのまちづくりは、2027年ごろの完成を目指している。この壮大なプロジェクトにかける丸和の林社長は…。

丸和・林俊成社長:
私たちの中で使命を授かった仕事だと思っている。これからも、この事業の最終的なゴールに向かって最後まで走り続けていきたい

里山というキーワードで富山とカンボジアがつながって、壮大なプロジェクトが始まったということで、カンボジアが身近に感じられる。
今後のまちづくり事業が、どう進むのか注目される。

(富山テレビ)

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