街で見かける中国式英語「チングリッシュ」

まずは写真をご覧いただきたい。

「1メートル線の外でお待ちください」のはずが、「PLEASE WAIT OUTSIDE A NOODLE(1ヌードルの外でお待ち下さい)」となっている。中国語で「米」は「メートル」の意味がある一方、「米線」は雲南省の米麺料理で、1=A、米線=NOODLEと訳されてしまった。

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既に訂正されたものもあるが、これらは中国の街で見かける「変な英語」の例だ。思わず吹き出してしまうこうした中国式英語を、英語圏出身者はChinese English = Chinglish(チングリッシュ)と揶揄している。

他にも街中で見かけるチングリッシュを写真と共に紹介しよう。

消火器は「Fire extinguisher」ではなく「HAND GRENADE(手りゅう弾)」。

消火器には「HAND GRENADE=手りゅう弾」とある
消火器には「HAND GRENADE=手りゅう弾」とある

日用百貨は「Date Use Hundred Goods」。

日用百貨「Date Use Hundred Goods」一文字ずつ訳すと確かにそうだが…
日用百貨「Date Use Hundred Goods」一文字ずつ訳すと確かにそうだが…

そして、輸入ワインは「Into Mouth Red Wine」など、漢字を一文字ずつ直訳したようなものが典型だ。

中国語で「进口(=進口)」は「輸入」の意味
中国語で「进口(=進口)」は「輸入」の意味

料理のメニューでもチングリッシュをよく見かける。

「寸金蒜片油鸡枞」はキノコの一種をガーリックで炒めた料理の

ようだが、なぜか「フライドスペシャルウィキペディア」に。

「フライドスペシャルウィキペディア」とは一体どんな食べ物だろうか
「フライドスペシャルウィキペディア」とは一体どんな食べ物だろうか

「烧香草银鳕鱼」は「ハーブと鱈のロースト」のはずが、「God with vanilla(バニラ添えの神)」となっていた。

畏れ多すぎて食べられない…Cod(タラ)とGodで大違い
畏れ多すぎて食べられない…Cod(タラ)とGodで大違い

2022年冬季五輪に向け北京市が撲滅キャンペーン

北京市は今、2022年の北京冬季オリンピックに向け、こうしたチングリッシュの撲滅に取り組んでいる。北京市政府は専用サイトを作って、変な外国語を見かけた場合は、修正案も含めオンラインで通報するよう呼び掛けている。

「変な外国語」の通報を呼び掛ける北京市政府の専用サイト
「変な外国語」の通報を呼び掛ける北京市政府の専用サイト

訂正の対象は「外国語」とされているので、英語だけでなく「変な日本語」も対象になるとみられ、優秀な活動の参加者には賞金も与えるとしている。

変な日本語の例(1)「East Gate」は「東のゲート」なのに「West Gate」は「サイモン」
変な日本語の例(1)「East Gate」は「東のゲート」なのに「West Gate」は「サイモン」
変な日本語の例(2)「注意!滑りやすい」という看板。「つるつる 気を付けて」と書かれている
変な日本語の例(2)「注意!滑りやすい」という看板。「つるつる 気を付けて」と書かれている
変な日本語の例(3)戦闘機のエンジン(afterburner)と刺身に何か関係があるのだろうか
変な日本語の例(3)戦闘機のエンジン(afterburner)と刺身に何か関係があるのだろうか

通報に加えて、北京市は新たな「外国語標識管理規定」を発表し、2020年7月からは不適切な外国語標識について、外事部門による訂正命令を拒否した場合は2000元(約3万円)以上、5000元(約7万5000円)以下の罰金に処するとして、硬軟両様の態度で臨んでいる。

確かに20年ほど前はもっとひどいチングリッシュや変な日本語を多く見かけたが、2008年の北京オリンピックの際にも大規模な修正活動が行われたといい、現在はかつてよりだいぶ改善したように見える。

そんなチングリッシュが、本家に逆輸入されるケースもある。中国語で「頑張れ」は「加油(ジャーヨウ)」と言うが、2018年、オックスフォード英語辞典に「Add Oil」という単語が掲載されたことが話題になった。「lose face」=「メンツを失う」なども中国語が語源だそうだ。

日本にも変な英語「Engrish」がたくさん

チングリッシュを笑ってばかりもいられない。日本にも変な英語や外国語が溢れている。英語圏出身者からは、「L」と「R」を区別できない日本人英語を揶揄して、「English」でなく「Engrish」などと呼ばれている。コロナ対策で外国人旅行者が激減した今こそ、2021年に延期となった東京オリンピックを前に「Engrish」対策に乗り出すチャンスなのではないだろうか。

それにしても、中国でチングリッシュが消えてしまうのは寂しい気もする。完全消滅してしまう前にご鑑賞あれ。

作業中の立て看板に「execution(遂行、死刑執行などの意)」の文字。この先では「死刑執行中」のようだ
作業中の立て看板に「execution(遂行、死刑執行などの意)」の文字。この先では「死刑執行中」のようだ
「能吃是福(食べられることは福)节约是德(節約は徳)」という標語のはずだが、中国語でドイツは「徳国」のためこうなってしまったようだ。「食べることはドイツを救うための恵みだ」と意味不明に…
「能吃是福(食べられることは福)节约是德(節約は徳)」という標語のはずだが、中国語でドイツは「徳国」のためこうなってしまったようだ。「食べることはドイツを救うための恵みだ」と意味不明に…
北京空港の係員。日本語の「私」が抜けたまま長いこと着用していたが、最近は着なくなった
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「ナイス電気ショック」どんなショックだろうか
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トイレの後は水を流せということのようだが…「MANG OUT」も謎英語
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まさかの“Fワード”。中国語で操のスラングには、そういう意味もあるが…(一部画像を加工しています)
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 “Fワード”その2。干のスラングにもそういう意味はあるが…通常は「乾」の意味、つまり乾燥野菜(一部画像を加工しています)
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「Crack」はコカイン。食品ではない
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注意を促すはずが…「注意深く滑りましょう」
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灭烟台(滅煙台)=灰皿の意味だが、Destroy(滅) Yantai(煙台:山東省の都市)=「煙台を滅ぼせ」に
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【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

高橋宏朋
高橋宏朋

フジテレビ政治部デスク。大学卒業後、山一証券に入社。米国債ディーラーになるも入社1年目で経営破綻。フジテレビ入社後は、社会部記者、政治部記者、ニュースJAPANプログラムディレクター、FNN北京支局長などを経て現職。