街で見かける中国式英語「チングリッシュ」
まずは写真をご覧いただきたい。
「1メートル線の外でお待ちください」のはずが、「PLEASE WAIT OUTSIDE A NOODLE(1ヌードルの外でお待ち下さい)」となっている。中国語で「米」は「メートル」の意味がある一方、「米線」は雲南省の米麺料理で、1=A、米線=NOODLEと訳されてしまった。

既に訂正されたものもあるが、これらは中国の街で見かける「変な英語」の例だ。思わず吹き出してしまうこうした中国式英語を、英語圏出身者はChinese English = Chinglish(チングリッシュ)と揶揄している。
他にも街中で見かけるチングリッシュを写真と共に紹介しよう。
消火器は「Fire extinguisher」ではなく「HAND GRENADE(手りゅう弾)」。

日用百貨は「Date Use Hundred Goods」。

そして、輸入ワインは「Into Mouth Red Wine」など、漢字を一文字ずつ直訳したようなものが典型だ。

料理のメニューでもチングリッシュをよく見かける。
「寸金蒜片油鸡枞」はキノコの一種をガーリックで炒めた料理の
ようだが、なぜか「フライドスペシャルウィキペディア」に。

「烧香草银鳕鱼」は「ハーブと鱈のロースト」のはずが、「God with vanilla(バニラ添えの神)」となっていた。

2022年冬季五輪に向け北京市が撲滅キャンペーン
北京市は今、2022年の北京冬季オリンピックに向け、こうしたチングリッシュの撲滅に取り組んでいる。北京市政府は専用サイトを作って、変な外国語を見かけた場合は、修正案も含めオンラインで通報するよう呼び掛けている。

訂正の対象は「外国語」とされているので、英語だけでなく「変な日本語」も対象になるとみられ、優秀な活動の参加者には賞金も与えるとしている。



通報に加えて、北京市は新たな「外国語標識管理規定」を発表し、2020年7月からは不適切な外国語標識について、外事部門による訂正命令を拒否した場合は2000元(約3万円)以上、5000元(約7万5000円)以下の罰金に処するとして、硬軟両様の態度で臨んでいる。
確かに20年ほど前はもっとひどいチングリッシュや変な日本語を多く見かけたが、2008年の北京オリンピックの際にも大規模な修正活動が行われたといい、現在はかつてよりだいぶ改善したように見える。
そんなチングリッシュが、本家に逆輸入されるケースもある。中国語で「頑張れ」は「加油(ジャーヨウ)」と言うが、2018年、オックスフォード英語辞典に「Add Oil」という単語が掲載されたことが話題になった。「lose face」=「メンツを失う」なども中国語が語源だそうだ。
日本にも変な英語「Engrish」がたくさん
チングリッシュを笑ってばかりもいられない。日本にも変な英語や外国語が溢れている。英語圏出身者からは、「L」と「R」を区別できない日本人英語を揶揄して、「English」でなく「Engrish」などと呼ばれている。コロナ対策で外国人旅行者が激減した今こそ、2021年に延期となった東京オリンピックを前に「Engrish」対策に乗り出すチャンスなのではないだろうか。
それにしても、中国でチングリッシュが消えてしまうのは寂しい気もする。完全消滅してしまう前にご鑑賞あれ。










【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】