「このデモは社会を分断するだけ」

米国ミシガン州グランド・ラピッズ市で3日、静かな住宅街をデモ隊が行進していると、白髪の白人女性が野球のバットを振り回して行手を遮った。

バットを振り回す白人女性 KXMCのHP(kxnet.com)より

デモ隊の男性がバットを取り上げ、彼女を保護するように抱きかかえて制止する様子をCBS系列のテレビ KXMCが撮影していた。

近くに住むカリア・アンダーソンさん75歳で、「私の敷地から出てゆけ。あなたたちはここで暴動を起こす権利なんかない!」とデモ隊に向かって怒鳴っていた。

その後、テレビ局がインタビューをすると彼女はこう言った。
「このデモは黒人の命を大事にするものじゃないわよ。社会を分断するだけよ。扇動して・・・。私は怖くはないわよ。孫もいるし、この地域を平和にしておくためには何でもするから」

ミネアポリスで警察官が黒人男性の首を膝で押さえつけている瞬間をとらえた画像

ミネアポリス市で、黒人が白人警察官に膝で首を押さえつけられて殺された事件に抗議するデモが全米各地に拡散し、略奪や放火も続いているが、それに対して一般市民の間で反感と不安も広がっていることをうかがわせる映像だ。

住民が最後に頼りにするのは銃か

アンダーソンさんが手にしてたのはバットだったが、今米国では護身用の銃器が飛ぶように売れて、銃砲店の在庫が枯渇しているという。

ニューヨーク州ユニオンデールの銃砲店では問い合わせの電話が鳴り止まず、店外には順番待ちの客の行列ができるほどだと、地元のテレビ局フォックス5のニュースサイトが伝えている。
「十分仕入れをしたつもりだったが、もうほとんど売り尽くしてしまった。考えられなかったことだ」と店主アンディ・チェルノフ氏は言う。

1992年のロサンゼルス暴動では、韓国人街が集中的に襲われて略奪、放火され、武装した韓国人の自警団が街を守ったが、今回も住民が最後に頼りにするのは銃のようだ。

首都ワシントンで抗議デモが荒れて由来ある教会が放火された5月31日、有名な拳銃メーカー「ルガー」の株は年初以来33%の上昇を記録し、「スミス&ウエッソン」などを傘下にもつ「アメリカン・アウトドア・ブランズ」社の株も11%上がった。

デモは、全米各地で同時多発的に行われ、参加者は数十万人規模にのぼった

情勢分析で定評あるモーニング・コンサルト社が2日に発表した世論調査では、街を守るために州兵を動員することに有権者の42%が「強く支持」29%が「どちらかと言えば支持」11%が「強く反対」9%が「どちらかといえば反対」と回答している。

州兵の動員に賛成する国民は71%にのぼる

州兵の動員に賛成する71%の国民や、アンダーソンさんのような人たちをマスコミは「サイレント・マジョリティ(声なき多数派」と呼び、11月の大統領選にどう影響するのか注目し始めている。

「サイレント・マジョリティ」は誰を支持する?

大統領選があった1968年の夏も、キング牧師の殺害やベトナム戦争に抗議するデモが全米に広がったが、共和党のリチャード・ニクソン候補はひたすら「法と秩序」を訴え「声なき多数派」の支持を得て大差で当選した。

この前例に倣ってか、トランプ大統領も「法と秩序」と言い始めているが、反トランプ急先鋒のワシントン・ポスト紙は、3日の電子版に次の見出しの論評記事を掲載して民主党側に警戒を促した。
「民主党は、トランプの"法と秩序"という虚言をなぜ心配しないのか」

ワシントンでは、ホワイトハウス周辺の道路が封鎖され、人々は「黒人の命は大切だ」と訴えた

抗議デモが拡大して過激になればなるほど「声なき多数派」は、トランプ支持に回るのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】