東日本大震災から12年が経ち、今、防災について「フェーズフリー」という考え方が広がっている。これは「日常」と「非常時」とを切り分けず、普段使っているものを備えに生かそうという考え方だ。東海地方にも広がるフェーズフリーを取材した。

避難所となるカフェや4つの機能持つクッションも

三重県東員町の公園にある「マメマチCAFE」。

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町の特産・大豆から作ったきな粉を使ったスイーツが人気のカフェで、2022年9月にオープンしたばかりだ。

店の中に、ある特徴が…。

東員町の担当者:
こちらのカフェはこの柱で仕切られていまして、ここでひとつのコンテナになっています。これが5つ連結している感じになります

5つのコンテナが組み合わさってできた「コンテナカフェ」。

災害が起きた時には分解され、被災地で救援物資の保管などに。またコンテナごとにエアコンが設置されていて、簡易の避難所としても利用できる。

東員町の担当者:
調理器具もありますし、屋根には90枚の太陽光パネルが乗っていますので、停電したときでも電気も使えますし、食料の調理もできるかと思います

このように、日常に活用できるものが実は防災にも役立つという考え方を「フェーズフリー」といい、今、様々な場面で増えている。

客A:
コンテナって思いませんね、言われなきゃ分かりません

客B:
家からほど近くて山が見えるので、景色が好きで。(Q.実はコンテナでできている)頭いいですね、安心ですね

フェーズフリーの取り組みは自治体だけではない。三重県いなべ市にあるコンテナホテル。コンテナの下にはタイヤがついている。

災害時にはトレーラーでけん引して移動ができるレスキューホテルだ。

中には、ベッドやバス・トイレなどのビジネスホテルの設備に加え、テレビや冷蔵庫、電子レンジまで。そのまま被災地に持っていくことができる。

平時はホテル、災害時には避難所などとして活用できる、まさにフェーズフリーなホテルだ。

デベロップの広報:
コンテナ1台が1客室であれば、安心安全なプライベート空間を迅速に提供できる。災害というものはいつ起こるかわからないものでございますので、災害時には避難所となるホテルを全国展開することで、より災害に強い街づくりに寄与できればと思っております

日用品にフェーズフリーを取り入れて驚異的に売り上げた商品もある。

普段はクッションとして使えるが、非常時には一瞬で寝袋に変身する。

綿の入った枕や顔をすっぽり隠せるフードもついていて、避難所でも安心して眠ることができる。

広げるとひざ掛けに、首元の紐を絞れば体を隠すポンチョにもなり、避難所などでのプライベートが守られない状況でも、着替えや授乳をすることができる。

1つで4つの機能があるフェーズフリーアイテム。開発者の石川ももさんは…。

開発した石川ももさん:
きっかけといたしましては、私自身が小学生くらいの頃から、防災が大好きな防災マニアでございまして。大体小学校の低学年くらいの頃から、お年玉をためて防災グッズを買うというくらい

これまでに見てきた防災グッズは1000点を超えるという石川さん。防災アドバイザーと相談しながら、1年以上かけてフェーズフリーのクッションを開発した。「いつでも持ち出せる安心感がある」と通販で話題になり、多い日には1万個、実に1億円を売り上げたという。

開発した石川ももさん:
日常でも使えて、さらに防災時にも役立つ機能があれば、いろんな方が手が出しやすいんじゃないかというところから、フェーズフリーという考え方で、日常からいざという時まで一貫して使えるものが作りたいと。日頃の備えがいつかの安心につながるかなと思います

普段から使っているものが自然と備えに繋がるフェーズフリー。日用品に街中に、少しずつ広がっている。

(東海テレビ)

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