東日本大震災から12年。当時、長期間避難所生活を余儀なくされた被災者が多くいた。早く住まいが欲しいという被災者の声を生かそうと、名古屋の大学教授が「簡単に建てられる住宅」を開発した。

東日本で何もできなかった悔しさがきっかけ…今は「トルコに送りたい」

開発したのは名古屋市昭和区の名古屋工業大学で、建築デザインが専門の北川啓介教授だ。

この記事の画像(10枚)

北川教授が開発したのが、その名も「インスタントハウス」。災害で住宅を失った被災者が簡単に立てられる住宅として、2020年に開発した。

北川啓介教授:
小さいホットカーペットを置いて、「弱」の状態でつけてあるんですね。これをつけておくだけで、ほぼ全てが断熱材でできていますので、熱が中にしっかり保たれる状態になります

雨や風をしのげる上に、断熱材もあるので冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるのも特徴だ。

高さ4.3m、広さは約20平方メートルで、大人5人が集まってくつろげる程のゆとりがある上、重さは480kgと軽量だが、風速80mまで耐えられる強度だ。北川教授も普段は研究室として使っているという。

作り方はとてもシンプルで、まず袋状のテントシートを地面に設置したら、一気に空気を送り込む。

5分程でシートが膨らんだら、内側から断熱材を吹き付けて固め、4時間程度で完成だ。

畳むとコンパクトになる。

インスタントハウスは建築基準法上では「工作物」にあたる。つまり、一時的に設置するテントや倉庫と同じ扱いになるため、空いている土地があれば簡単に建てることができる。

北川啓介教授:
本当にもうあわよくば、現地の人たちだけでも作ることができる物ができないかなということをこだわって、ここまでやってきました

インスタントハウスを開発するきっかけは東日本大震災だった。

北川啓介教授:
石巻中学校の避難所を訪ねる機会があったんですね。小学校3年生と4年生の男の子が私にずっとついてきてくれて。そうしたら彼らがグラウンドの方を指さして、「あそこに仮設住宅が建つんだけれど、できるまで3カ月から6カ月かかってしまう」と。「大学の先生だったら来週建ててよ」って言ってくれたんです

住まいに困っている人が目の前にいるのに、何もできない。悔しさからすぐに研究を始め、9年かけてようやく実用化にこぎつけた。

北川教授は今、ある取り組みを始めている。

北川啓介教授:
今度、トルコの大地震の被災地に、このインスタントハウスをどんどん提供していこうと。10×10っていう100棟単位で現地に建設していって、それで復旧から復興まで現地の皆さんに使っていただけたらと

トルコ・シリア大地震では約5万2000人が亡くなり、建物被害が23万棟に及んでいる。その被災地に3月下旬にもインスタントハウスを送るため、急ピッチで作業を進めている。

北川啓介教授:
一般的には建築物を現地に建てようとすると、結構大きなものをいっぱい部品として持っていかないといけないんですけれども、インスタントハウスの場合はテントシートを作っておいて、それを折り畳んで持っていくだけなので、スーツケースとか、ひょっとするとリュックサックに入れて持っていくこともできるんですよ。やっぱり少しでも早く送りたいです

(東海テレビ)

東海テレビ
東海テレビ

岐阜・愛知・三重の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。