Twitterアカウント「NASA_ICE(@NASA_ICE)」の10月17日のツイートが話題になっている。



貼り付けられた写真は、テーブルのような形をした巨大な氷山。
表面のグレーの色や切断面が異常に滑らかなことなど、合成写真のような何とも言えない違和感がある。

この氷山は誰かが削った人工物なのか?それとも自然現象で偶然、このような形になったのか?

岡山大学理学部地球科学科の青木輝夫教授に話を聞いた。

氷山がある場所は「南極」

――NASA_ICEのツイートにはどのようなことが書かれている?

直訳すると…「昨日の#IceBridgeフライトから:(写真の)右にテーブル状氷山が見えますが、これはLarsen C氷棚のすぐ外の海氷の中に浮かんでいるものである。氷山の角がシャープな角度であることとと、表面がフラットであることから、これは恐らく棚氷から最近分離したものであろう」です。

"calve"という単語は、もともとは氷山が「生まれる」という意味ですが、日本語では「分離する」と訳した方が分かりやすいと思います。
ちなみに、海に流れ出して氷山が分離する氷河を「カービング氷河」と呼びます。

冒頭の「#IceBridge flight」とは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が北極と南極の氷床、棚氷、海氷などを航空機から観測するもの。
ICESat2という雪氷観測を目的とした人工衛星の打ち上げ失敗により、数年間、宇宙から観測ができなくなるのを補うために、航空機からその衛星と同様の観測装置を使って観測を実施しているプロジェクトです。


――この場所はどこだと考えられる?

そのツイートの中に「Larsen C ice shelf(ラーセンC棚氷)」から分離したと書いてあります。

「ラーセンC棚氷」は、南極半島の東側にある「棚氷」です。

≪「棚氷」とは…≫
陸の上にあった氷床は、海に向かってゆっくりと滑り落ちて、やがて海の上に押し出されます。そのときに、割れないままで海に浮かんだ部分を、棚氷といいます。
出典:環境省自然環境局

「自然現象だと思います」

――これは人工物?それとも自然現象?

自然現象だと思います。

――自然現象だとしたら、なぜ氷がテーブルみたいな形になるの?

「棚氷」は氷河や氷床から海に流れ出した氷体が海に浮かんだもので、上流側の氷の流動と共に、沖に押し出されていきます。

ある程度、沖に進むと、先端付近が分離して氷山となり、暖かい海の上で最終的には全て融解します。

最近、地球温暖化の影響で巨大な棚氷が分離したというニュースをときどき耳にしますが、「Larsen C棚氷」は分離する氷山が大きいことでニュースになることが多い棚氷です。

「棚氷」は海に浮かんでいるので、テーブルのような形状が一般的です。

この氷山は、断面が直線的で、上から見ると角が直角で長方形になっている点が面白いのですが、内部のクレバス(氷河や雪渓の割れ目)の方向や波の影響でこのような形になったものと思われます。

氷山にはいろいろな形があるので、このようなものがあっても不思議ではないと思います。

棚氷から分離するときに、たまたま直線的に割れた

テーブルのような形をした氷山について、「国立極地研究所」気水圏研究グループの本山秀明教授にも話を聞いた。

――これは人工物?それとも自然現象?

自然現象でしょう。

――自然現象だとしたら、なぜ氷がこのような形になるの?

例えば、昭和基地の近くにある「白瀬氷河末端」の棚氷は、写真のように四角く分離しています。

提供:国立極地研究所・本山秀明教授
この記事の画像(4枚)

また、南極観測隊で「アメリー棚氷」の近くを通った時に、今回のような氷山に遭遇しました。
直線的な断面が見えています。

今回のテーブルのような形をした氷山は、棚氷から分離するときに、たまたま直線的に割れたのではないでしょうか。

国立極地研究所・本山秀明教授
国立極地研究所・本山秀明教授

NASAが公開したテーブルのような形をした南極海に浮かぶ巨大な氷山。初見では人工物かと思われたが、専門家2人によると、自然現象によって形作られたもののようだ。