3月1日から数多くの食品が値上げされている。そんな中で栄養が豊富で値段が安い、私たちの食卓の強い味方「たまご」が今、価格の高騰が止まらない。飲食店もスーパーも家庭もみんな困っている「たまごクライシス(危機)」。その理由を取材した。
オムライスが自慢の弁当店に“危機” 「もうむちゃくちゃです」
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“あっつあつ”の卵に包まれた昔ながらのオムライスが自慢の大阪市内の弁当店が、危機を迎えている。
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金の羽根たまご 木本利幸代表:
最近はもうむちゃくちゃですよ。(価格が)上がって…これは(卸業者が)卵を持ってきた時に納品書として置いていくものですね
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これは2022年1月からの卵10キロ分の納品書の束。ゆっくりめくっていくと…月日が経つにつれて、みるみる仕入れ価格が上がっていき、その価格差は約2倍に。
この店では開業から12年間、ずっとこだわってきた“ご飯大盛り無料”を、3月1日から止めることにした。
金の羽根たまご 木本利幸代表:
卵だけは、そんな(価格高騰は)なかったんですよ。こんなに上がったのは初めてですね。ホンマもうしんどくて…
卵の価格は過去最高値に 原因は「ニワトリの餌代高騰」と「鳥インフルエンザ」
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JA全農たまごによると、Mサイズ1キロ当たりの大阪地区の平均卸売価格は、2月で332円。前年同月に当たる2022年の2月から158円値上がりし、1.9倍になっていて、公表している1993年以降では最高値となっている。 最高値となった背景には、卵を産むニワトリの餌代が高騰していることもあるが…
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大きな要因は鳥インフルエンザの感染拡大だ。
兵庫県たつの市の「竜野養鶏センター」では、2022年11月に鳥インフルエンザが確認され、ニワトリ4万羽の殺処分を余儀なくされた。
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空になっていた鶏舎は、今どうなっているのか?養鶏場の様子を取材した。
竜野養鶏センター 中山晋吾社長:
こちらが試験導入した若い鳥です。元気です。早く卵を産んでほしいです。まだまだ鶏舎全部が埋まるほどの鳥はいません
養鶏場の再開に向け、試験的に飼われている新しいニワトリは60羽。この60羽が4月にウィルス検査を受け、陰性の結果が出れば、ニワトリの数を増やしていく予定だ。
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竜野養鶏センター 中山社長:
殺処分前の規模に戻ろうと思ったら約1年(かかる)。徐々に毎月(ニワトリを)入れていく。1年先、長いですわ…次のシーズンも出さないように、鳥インフルエンザに強い養鶏場を目指して頑張っていくしかない
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養鶏場は懸命の努力を続けているが、現在、日本では過去最悪のペースで鳥インフルエンザの感染が拡大している。
農林水産省によると、今シーズンは25の道と県で76例が確認されていて、約1478万羽が殺処分されるという大きな被害が発生している。(2022年10月から2023年2月末まで)
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専門家は、感染は世界的に広がっていると話す。
鳥取大学農学部 山口剛士教授:
ここ何年かの間は特にヨーロッパでは猛烈な数の発生がありまして、今シーズンについて言えば、北米でもかなり大きな発生が続いています。かなり通常よりも早い時期に日本国内にウイルスが侵入をしていたので、国内にかなりウイルスが広がったのではないかというふうに考えております
“鳥インフルエンザ”の影響が食卓に
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世界中で猛威をふるう鳥インフルエンザは、私たちの食卓にも大きな影響を与えている。
越前屋 金野尾浩二さん:
こちらが当店の卵売り場です。うちの店は11種類の卵を扱っています
こちらのスーパーでは1年前から比べると、100円ほど価格が上がった卵もあるという。
越前屋 金野尾浩二さん:
発注しても、その通り卵の数が入ってこない。ですから、朝にならないと僕たちも(数を)把握できない
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入荷する数も安定しない中、できるだけ多くの客に買ってもらうため、人気の卵は、買える数を制限しているが、2月28日は午後4時頃までに売り切れたものも…
客:
いつもこの時間に来たらない。朝来ないと買えない。朝、卵だったら、昼・夜はもう卵料理はないですね
客:
卵焼きなら2個使う。それを、ダンナのはハムエッグみたいにして、1個しか卵を使わない。(Qダンナさんは気付いてる?)いや気づいてない。「おいしいな」と言って食べてる
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さらに総菜売り場では、こんな工夫も…
越前屋 馬場信吾さん:
こちら「高野よせ煮」ですけど、こちらも卵を入れる分量をちょっと減らしてます。その分、他の具材…野菜だったり高野豆腐の分量を少し増やして、価格をそのまま据え置きで販売している
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この卵価格の高騰は、いつまで続くのか?専門家は、原因のひとつである“鳥インフルエンザ”への警戒は「しばらく続く」と言う。
鳥取大学農学部 山口剛士教授:
特に北海道など北方になりますと、5月ぐらいまでは一部、渡り鳥が残っていますので、そのぐらいまでは特に配慮が必要だろうというふうに思っています
「物価の優等生」といわれる卵の価格高騰。元の価格に戻るのは、一体いつになるのか?
「物価の優等生」と呼ばれたが…卵の価格は「高止まりする可能性も」と専門家
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卵は過去にあまり値上がりすることがなく、「物価の優等生」と呼ばれていたが、1kg当たり、2022年3月に194円だったのが、1年経って、約1.75 倍の340円に値上がりしている。JA全農たまごは、「今後さらに不足する」と予想し、「ご不便をかけて申し訳ない」と謝罪。
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そして、家計に影響があるのはもちろんだが、外食産業にも、深刻な影響が出ているようだ。
セブン-イレブンは、販売する「ハムとたまごのサンド」のゆで卵の量を減らし、ハムの量を増やして対応している。また丸亀製麺は、とろ玉うどんが一部店舗で品切れ。シャトレーゼでは「特濃たまごプリン」が販売中止となっていて、担当者によると「先が見えない状態…」と困ったように話していた。
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では、この値上がりや卵不足は、いつまで続くのか。
日本養鶏協会の信岡エクゼクティブアドバイザーによると、「1年強は続くのではないか…」ということだ。というのも、鳥インフルエンザの感染が確認された養鶏場では鶏舎の洗浄や消毒など、再出発の準備に最低でも3カ月ほどかかる。さらに、ヒナを迎え入れて、大きな卵を産めるようになるまで8カ月ほどかかるので、トータル1年ほどかかるということだ。
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では、供給が戻るまで1年ほど待てば、価格は戻るのか?
これについて日本養鶏協会の信岡エクゼクティブアドバイザーは、「無理です…なぜなら、ウクライナ情勢が落ち着くとは思えないから」と回答した。実は、鳥インフルエンザの影響だけでなく、ウクライナ情勢の影響で原油高による餌代高騰の影響も受けているので、それがまだ続くのではないかということだ。
そうなると、卵の価格はこのまま高止まりする可能性もあるということで「たまごクライシス」、まだまだ厳しい時期が続きそうだ。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月1日放送)