ロシアのウクライナへの軍事侵攻により1800万人以上が国外に避難し、静岡県にも多くの人たちが暮らしている。1年が経った今の生活や思いを取材した。取材の最後に伝えられた言葉が印象に残る。「ウクライナのことを忘れないでください。毎日頑張っていますから」だ。

日本に2300人余が避難 浜松にも10人

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。
これまでに1800万人以上が国境を越えて避難し、そのうち2300人余りが日本に身を寄せている。戦争が多くの人の人生を変えた。

ウクライナ人女性と懇談する浜松市長
ウクライナ人女性と懇談する浜松市長
この記事の画像(14枚)

浜松市は2022年3月から避難民の受け入れ支援を始め、2023年2月現在は家族と学生の計10人が生活している。
こうした避難民にとって、行政だけではなく、地域の協力も大きな支えとなっている。

アニメ大好き 就職めざし日本語勉強

浜松市西区のオイスカ開発教育専門学校。農業や国際協力などが学べる専門学校だ。
ここでも、避難民4人を受け入れている。
寮での生活はもちろん、日本語の授業も無償で行っている。

日本語の授業(オイスカ開発教育専門学校)
日本語の授業(オイスカ開発教育専門学校)

先生
右手を上げて

マルハリタさん
あ~右手?

先生
それは左手

2022年10月に来日したマルハリタさん(23)。日本のアニメが大好きで、日本で動画編集の仕事に就ければと日本語の基礎から勉強している。

マルハリタさん
難しい、漢字がとても難しい。日本で働きたいから、日本語を勉強しなければなりません。がんばります

昼食は学校の食堂で
昼食は学校の食堂で

昼休みは学校の食堂で昼食をとる。日本食は、ウクライナの人たちの味覚にあうのだろうか。

取材した日のメニューはカレー
取材した日のメニューはカレー

マルハリタさん
おいしいです。ウクライナで日本の料理は人気があります。とても有名な料理です

ピアノが癒し 戻って日本語教師に

食堂のピアノを弾くリアさん
食堂のピアノを弾くリアさん

首都キーウから避難したリアさん(20)。
2014年から紛争を経験し、以来 好きだった楽器を弾くことは叶わなくなった。しかし、浜松に来てからは嫌なことがあると、食堂にあるピアノで 昔 習っていた曲を弾いている。

リアさん
時々は自由にしたいですから、弾いて安心します。ここにピアノがあってうれしいです。ここに来るとうれしい

いずれはウクライナに戻り、日本語の教師になりたいと考えている。

「茶の湯」で日本文化に触れる体験も
「茶の湯」で日本文化に触れる体験も

浜松では楽器や日本の文化に触れる充実した毎日だが、ウクライナでは戦争が終わる気配はなく、国に残った家族を思い、いつも不安を感じている。

リアさん
(両親が暮らす)キーウにもミサイルが来ました。首都も安全ではなくなかったから、どこが安全なのか、ちょっと難しいです。家族は「怖くない。大丈夫だ」と言いますけど、私は大丈夫ではないと思います

迎え入れた専門学校は、「日本でも自分で生活していけるようになってほしい」と、教育に力を入れている。

オイスカ開発教育専門学校・中野與一郎校長
ウクライナに戻れるなら いつ戻ってもいいのですが、単に避難というだけではなく、日本で力をつけて自立できるくらいしてあげたい

日本人にどうしても伝えたいこと

2023年2月中旬 リアさんたちは、浜松市で開かれたウクライナ人のピアニストによるチャリティーコンサートにも招待された。

ウクライナ人ピアニストのコンサート
ウクライナ人ピアニストのコンサート

大好きなピアノ、そして母国のピアニストが奏でる音色に聴き入っていた。

コンサートを聴くリアさん(左から2人目)
コンサートを聴くリアさん(左から2人目)

リアさん
戦争のせいで音楽をやめさせられたから、ピアノを弾ける人がうらやましい。聴いて、本当によかった

軍事侵攻が続く中、たくさんの支援に感謝しながらも、リアさんは日本人にどうしても伝えたいことがあるという。

リアさん
本当に感謝しています。いつも応援してくれてありがとうございます。これはわがままですけど、ウクライナのことを忘れないでください。毎日頑張っていますから、忘れないでください

マルハリタさん(左)とリアさん
マルハリタさん(左)とリアさん

母国に帰り、日本語や日本の文化を教える先生になる。
日本でアニメなど動画にかかわる仕事につく。
目標は違っても、母国を思う気持ちは同じだ。
その国に今も戦火におびえている人たちがいることを、忘れないようにしたい。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。