アルコールによって肝臓を痛め、亡くなる人がコロナ禍前に比べ増加しています。
日本アルコール・アディクション医学会の菊池真大理事によると、その背景にあるのは、コロナ禍においての“ストレス”。

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在宅で過ごす時間が増えている中で、お酒を飲んでしまうような“問題飲酒者”が増加傾向にあり、さらにその中でも女性の患者が増えているというのです。

コロナ禍で飲酒が増えアルコール依存症に 40代女性の告白

実際にコロナ禍で飲酒量が増加し、アルコール依存症になってしまったという40代の女性。

その経緯を、こう話します。

アルコール依存症と診断された40代女性:
コロナになってから外で飲む機会ってほとんどなくなっちゃってるし、主婦だしで、まぁ典型的なキッチンドリンカーですよね。家にいてもやることないし、出かける予定もないし、ちょっとお昼(お酒を)飲んでみちゃおうかみたいな。運転しなきゃいいや、みたいなノリで。

夫も子供といるという女性。罪悪感はあるといいます。

アルコール依存症と診断された40代女性:
昼間飲んで、最初は罪悪感があるんですけど、回数重ねるごとに薄まっちゃうんですよね。飲んでいるうちに。(350mL缶を)4本~5本は一晩で、アベレージで飲んでましたね。もっとひどい時には、もう手っ取り早く酔いたいので、ウイスキーとかをストレートとかで飲めちゃったりして。

次第に肝臓の状態が悪化するなど、心身に様々な不調が出たといいます。
現在は病院に通いながら、依存症の治療を受けているということです。

依存が強い頃には、このような経験も…。

母親同士で“家飲み”をしていた際、子供会の集まりの約束をしましたが、女性は深酒をしていたため約束を忘れて欠席。信用を失いました。さらに、朝から飲酒をしていた翌日、親族が亡くなられたにもかかわらず、酔っていて死に目に会うこともできなかったといいます。

 
筑波大学 准教授 吉本尚医師
筑波大学 准教授 吉本尚医師

厚労省の飲酒ガイドライン作成検討会の委員を務める、筑波大学の准教授・吉本尚医師は、こうした「依存症」のような悩みを抱えている人が、コロナ禍で増えているといいます。

吉本尚 医師:
やはり不安や悩みを抱えている方が増えていて、ストレスのはけ口がない主婦の方も、外来に来られている方が増えています。

アルコール性肝疾患の死者数増加…“適切”な飲酒量とは?

アルコール性肝疾患の死者数も増加しています。

推移を見てみると、コロナ前の2019年の5480人に対して、2021年は6016人と、約1.1倍増加。吉本医師は、特に「女性」の飲酒に警鐘を鳴らします。

吉本尚 医師:
女性の方が同じ量を飲みますと、男性よりも害が出やすいということがあります。
肝臓の大きさだったりとか、女性ホルモンがアルコールの分解(を抑制すること)に関わっていますので。

どれほどの飲酒が適度な量といえるのでしょうか?

吉本医師によると、生活習慣病のリスクを高める飲酒量(1日当たりの純アルコール摂取量)は、男性の場合は40g以上、女性は20g以上。普段から飲酒をしない人も、飲み会などの機会に大量に飲酒する場合、男女問わず60gを超えるとリスクが高まります。
ビール中瓶500mL1本、チューハイもアルコール度数が7%以上のものは350mL1缶が、純アルコール量20gの目安となります(ワインの場合は200mlグラス2杯、日本酒の場合は1合が20g目安)。

各国の「飲酒ガイドライン」を見てみると、アメリカは男性28g、女性14g。イギリスでは男女ともに16gと、中には吉本医師が提唱する飲酒量より基準が低いラインの国も。
日本でも2022年10月に第1回「飲酒ガイドライン作成検討会」が開かれ、ガイドラインの見直しが広がっています。

吉本尚 医師:
お酒を普段飲む方にとっては、いきなりこの量は難しいと思いますが、一方で飲まない方にとっては、これだけ飲んでいいんだという反応が返ってくることもあります。全国民に対するものですので、そのあたりのことを今検討しているところになります。

吉本医師は、今すぐにできる飲酒量低減法について以下のものを提案します。

・空いている時間で「趣味」を作る
・お酒ではなく「ノンアルコール飲料」を飲む
・飲酒前に「食事」をする

吉本尚 医師:
あとは、「飲酒日記」のような形で体重などをレコーディングする。そういう方もいらっしゃいます。

アルコールとの向き合い方が今後、大切になってきます。

(めざまし8「わかるまで解説」より 2月27日放送)