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パイプから排水溝に流れていく白い液体…。牧場で搾られたばかりの“生乳”です。

今、日本の酪農家がかつてない危機に立たされています。

新型コロナの感染拡大による乳製品の消費低迷を受け、北海道では今年度、16年ぶりに生乳の生産を抑制しています。

「三重苦、四重苦ですよ」酪農家語る苦悩…国の支援なく

「めざまし8」は、国内の生乳の約6割を生産する北海道で、酪農の現状を取材。つらい胸の内を明かしてくれました。

松枝牧場・松枝靖孝さん:
(2022年)10月に減産っていうのが発表になって、「牛乳を作るのをやめましょう」っていう働きがけがあった。

北海道広尾町で生乳を生産している「松枝牧場」では、年間2100トンの生乳を生産しています。しかし、今年度は約600トン、減産しなければいけないというのです。
工業製品と異なり、牛は定期的に乳を搾らないと病気になってしまうため、生乳の生産量をコントロールすることは困難です。

そんな中、酪農家が下した苦渋の決断。

松枝牧場・松枝靖孝さん:
1日大体、1.75トン。金額にして17万円、毎日…捨ててます

毎日、1.75トンものしぼった“乳”を、排水溝に廃棄することでした。

これには取材スタッフも思わず「捨てる量ですか!?」と声を上げます。

牛たちのエサ代も重くのしかかります。
ロシアのウクライナ侵攻と急激な円安により、牛のエサとなる輸入トウモロコシなどの価格が跳ね上がり、松枝牧場のえさ代は、2021年には約5400万円でしたが、2022年は約8900万円と、年間で3000万円以上も跳ね上がったといいます。

松枝牧場・松枝靖孝さん:
三重苦、四重苦ですよ。今、牛が安いから牛は売れないし、牛乳は出荷できないし、エサ代は高いし、どこで収入立てるの?どこで経費削減すればいいの?って。

「収入」は減り「支出」は増加するなか、困窮する酪農家。なぜ、こんな状況になっているのか?
農業経済学専門の東京大学・鈴木宣弘教授は、現在の酪農家の危機についてこう分析します。

東京大学農業経済学 鈴木宣弘 教授:
ほとんどの先進国は乳製品を政府が買い上げて、国内外の援助物資として活用する。
乳製品の在庫が多いのであれば、それを国内のフードバンクや、子ども食堂を通じて困ってる人を助ける。そういう政策を日本はやっていない。

松枝牧場・松枝靖孝さん:
彼ら彼女ら(牛)を処分するわけにもいかない。(酪農を)一朝一夕にやめるとは言いにくいですよ。かわいいのでこの子らは。罪はないんですよ。

2月14日、酪農家の悲痛な叫びを受け、「農民運動全国連合会」など4団体が、参議院議員会館で院内集会を開き農家への緊急支援の必要性を訴えました。
国の早急な対応が求められます。

(めざまし8「NewsTag」より 2月21日放送)