独自の切り絵の世界を展開する長野市の作家。作品は繊細かつ幻想的でSNSでも反響を呼んでいる。就職の内定を辞退して「切り絵作家」の道へ。0.1ミリにこだわった作品の世界と制作に打ち込む様子を取材した。

「自分の中に雷が落ちた」

ビルの谷間に咲く満開の桜。水面(みなも)に揺れる高層ビルの明かり。いずれも色合いまで細かく表現された「切り絵」だ。

切り絵作家・斉藤洋樹さんの作品
切り絵作家・斉藤洋樹さんの作品
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作者の斉藤洋樹さん(29)。切り絵作家として活動して8年になる。

切り絵作家・斉藤洋樹さん:
0.何ミリとかそういう世界だと思います

絵を描くのが好きだった斉藤さん。高校時代、恩師から切り絵を紹介された。

斉藤洋樹さん:
自分の中に雷が落ちたというか、結構、衝撃があって「これだ」って。絵より細かい表現ができるところが自分の中でしっくりきた

専門学校に進み、フィットネス関連の企業への就職が決まったが、結局、内定を辞退。

「切り絵」への思いがずっと胸にあったと言う。

斉藤洋樹さん:
やっぱり違うなという感じがして内定を辞退して、いろいろとアルバイトをしている中で趣味でずっと切り絵も続けていたんですけど、いろんな人に作品を見てもらったときに「趣味ではもったいないんじゃない」と言われる機会が多く、展覧会に出したのをきっかけに、切り絵作家を名乗り始めた

0.1ミリにこだわり、1色ずつ

作家になって8年。技術はどんどん上達し、細かな表現ができるようになった。

今は実家の一室を「アトリエ」にして施設管理の仕事のかたわら、制作に没頭している。モチーフは自分で撮影した風景写真だ。

斉藤洋樹さん:
日常で歩いていて、ふときれいに見えるところがあったりして。そういうところを写真に収めて切り絵に

写真をA4サイズに印刷し台紙に重ねてデザインナイフでカット。0.1ミリ単位の細かい作業だ。裏から自分で着色した紙を重ね、色合いを表現する。

斉藤洋樹さん:
1色ずつ、青だったら青を入れる部分をまずカットして、裏から青い紙を貼って、今度は白だったり赤だったり、1色ずつカッティングして入れてというのを繰り返していく。まるっきり(写真の)そのまんまではなくて、「こうしたらよりきれいに見える」とかいうのを考えながら制作しているので、完成して対峙したときに自分でも驚く

自分の想像を超えた作品

会心の出来という東京・六本木の桜を描いた作品「君の片隅に」。切り絵を3枚重ねて立体感を出し、満開の桜を表現。完成までには4カ月かかった。

斉藤洋樹さん:
自分の想像を超えた作品が完成して自分でも驚いたというか。重なっているところと、桜の層によって若干、色の明るさも変えているので、奥行きというか立体感が出ているところが好き

SNSで反響

斉藤さんは、より多くの人に目にしてもらおうとSNSにも作品を投稿している。カラーセロハンで色付けする作品の動画には14万以上の「いいね」がついた。

(SNSの反応)
美しすぎて息をのみました
切り絵だとは思えないぐらい繊細な「線の芸術」

斉藤洋樹さん:
気軽に扱えるSNSで発信すると、今まで切り絵の世界を知らなかった人も、こういう世界があるんだと知っていただける機会に

モノクロームの作品が多い中、カラフルで繊細な切り絵を作り出す斉藤さん。制作意欲はますます、盛んだ。

斉藤洋樹さん:
世界を丸ごと切り取ったような風景の作品だったり、細かな色分けをしているところだったり、切り絵ならではの細かな表現を見ていただきたい。ブレずに、自分の芯を通して制作していくだけ

(長野放送)

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