新型コロナウイルス感染症は2023年5月、医療法上の取り扱いが2類相当から5類へ引き下げられる。この大きな節目にあっても、これまでと変わらない緊張感が求められる現場がある。高齢者施設だ。社会との意識の違いに懸念を抱く介護の現場を取材した。

介護施設 5類移行でも「対応は変わらない」

新潟県見附市にある特別養護老人ホーム「大平園」。約100人の高齢者の生活を100人以上の職員が支えている。

特別養護老人ホーム「大平園」
特別養護老人ホーム「大平園」
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特別養護老人ホーム 大平園 佐川透 園長:
特別養護老人ホームは介護度の高い方、介護度3~5の方が入所されている。認知症の方もいるので、どうしても身体的に密着する介護が必要になる

特別養護老人ホーム 大平園 佐川透 園長:
新型コロナが5類になるといっても、感染力が弱まるとか、病原体が変わるわけではない。ウイルスを施設内に持ち込まない、施設内で感染を広げないための対応は何も変わらない

2022年10月と12月には施設内でクラスターが発生。介助するたびに手指消毒を行ったり、1時間に1回換気をしたりと、職員の緊張の糸は張り詰めたままだ。

部屋の換気
部屋の換気

基礎疾患のある入所者が多い高齢者施設。職員は私生活でも気を遣い続けている。自身の外出を控えてきたことに加え、大学生と高校生の子どもを持つ職員は、家庭でも協力を求めてきた。

特別養護老人ホーム 大平園 韮澤栄子 係長:
子どもが友達と会うときには、申し訳ないと思いながらも「密になるような遊びはやめてほしい」とお願いしてきた

介護現場と社会に「意識の差」 さらに広がるおそれも

今後、5類への移行で懸念しているのは、「介護現場と社会の意識の違い」だという。

特別養護老人ホーム 大平園 韮澤栄子 係長:
やっぱりこういう高齢者施設で働く私たちと他の方では、意識や認識の違いがすごく大きいと常日頃感じている

特別養護老人ホーム 大平園 韮澤栄子 係長:
5類に移行すると、なおさら格差が広がるのではないかというのがすごく怖い

入所者と家族との面会についても、慎重な判断が続いている。

特別養護老人ホーム 大平園 生活相談員 高橋和正さん:
入所者の方たちはご家族の顔を見ると、職員にするのとは違った表情をする。本当にうれしそうな表情をされる

家族との面会はタブレット端末を使用
家族との面会はタブレット端末を使用

施設での面会は、入所者と家族をつなぐ重要な時間だ。感染力の強いオミクロン株が流行した2022年のはじめ以降、大平園ではタブレット端末を使った面会が続いている。どうしても顔が見たいという家族に対しては…

特別養護老人ホーム 大平園 生活相談員 高橋和正さん:
そういった方には、タブレット端末で音声をつなぎつつ、玄関の自動扉越しに面会してもらっている

この3年間、高齢者と家族の絆を守るため、感染状況を見ながら、面会のあり方を探ってきた高齢者施設。対面での面会を再開するかどうかの判断は、5類に以降したあとも感染状況を注視しながら慎重に行う考えだ。

特別養護老人ホーム 大平園 佐川透 園長:
ご家族や外部の人たちが「5類になったら頻繁に面会できるのではないか」という認識になると、ちょっと課題が出てくる

佐川園長は、5類に移行後の施設内の対応方針を決めるためにも、行政には「丁寧な指針を示してほしい」と求めている。

医療法上の取り扱いが変わっても、新型コロナウイルスの感染力は変わらない。高齢者施設では、これまでと同様の緊張が続いているという事実に多くの人が心を寄せることは、新型コロナをめぐる「社会の分断」の回避につながるはずだ。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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