存続の危機にあった伝統のコンニャクを守ろうと立ち上がった建設会社の社長。伝統の味をつなぐために自ら製法を学ぶ社長の夢は「コンニャクパーク」を作ること。地域を愛する社長の思いに迫った。

昔ながらの製法!「新保こんにゃく」

新潟県阿賀野市にある居酒屋「酒ごころ戎」で、お客さんがおいしそうにほおばるのは、熱々のコンニャク。

客:
この「新保こんにゃく」、すごくおいしい

客:
「新保こんにゃく」、学校の給食でも出ている。おいしいですよ

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お客さんがおいしいと話す「新保こんにゃく」は、阿賀野市新保にある建物で作られている。煙突はコンニャク作りにかけるこだわりの証し。

新保こんにゃく従業員:
薪で昔ながらに

朝5時半から薪釜で3時間、コンニャク芋をゆでることから始まるコンニャク作り。ゆで上がると、すぐに皮むきを行う。

新保こんにゃく従業員:
熱いので、横に水を置いて冷ましながら皮をむいている

新保こんにゃく従業員:
地元の「新保」という名前がついたコンニャクなので大事にしたい

昔ながらの製法を守るのは、平均年齢が70歳になる地元に暮らす人たち。

そこに遅れて来たのは、他のメンバーより若い男性。

渡辺政利さん:
一番、年下です

2022年10月からコンニャク作りに加わった渡辺政利さんは42歳。

渡辺政利さん:
1年生なので、いつも怒られながらやっている(笑)

新保こんにゃく従業員:
そんなことはありません。優しいですから

“新人”さんは「社長さん」

コンニャクでは先輩の手ほどきを受ける新人の渡辺さんだが、同じ地域にある建設会社では全く違った一面を見せる。

渡辺政利さん:
この会社は道路や河川の堤防などを造っている

実は20人の従業員を指揮する会社の社長でもある渡辺さん。建設会社を経営するかたわら、「新保こんにゃく」を作る事業を継承。

渡辺政利さん:
私は地元もここ、新保なので。昭和初期、新保集落は稲作ができなかった。それでコンニャク芋を作り始めて、各家庭でコンニャク作って市場で売っていた

歯触りの良さが評判となり、40年ほど前から農家が集まり作るようになった「新保こんにゃく」。地元、安田小学校の授業で習う「安田甚句」の歌詞にも登場する。

子どもにも親しまれている「新保こんにゃく」だが2022年、事業の継続が困難な状況になっていた。

新保こんにゃく従業員:
前の代表が高齢で、事業を続けられなくなった

その伝統の味をつなぐため、手を挙げたのが新保に生まれ育った渡辺さんだった。

新保こんにゃく従業員:
渡辺さんが「新保こんにゃく」を引き継いでくれると聞いて安心した。うれしかった

渡辺政利さん:
周りからは「すぐ飽きるんでしょ」みたいなことも言われたけど、やっぱり続けていかないと。伝統は大事。普段、建設会社では教える側なので、ここでは初心に戻れて非常にいい

夢は「コンニャクパーク」!

「新保こんにゃく」を作る際に重要となるのが、ミキサーにかけたコンニャク芋に水酸化カルシウムを混ぜて凝固させる工程。

新保こんにゃく従業員:
急がないと、どんどん硬くなるので、大急ぎで混ぜる

手でかき混ぜて含ませる気泡の加減が、フワリとしながらもシコッとした独特の歯触りや料理で出汁の染み込みやすさを演出する。

渡辺政利さん:
私もやらないといけないけど、なかなか…。手を出すと怒られるので(笑)

そんな渡辺さんだが、先輩に負けない強みとなっているのが若さ。製法を学ぶかたわら、商品の配達を引き受け、営業やSNSでの発信などで販路拡大をねらう。

SNSで発信
SNSで発信

阿賀野市にある居酒屋「酒ごころ戎」で、店主が「新保こんにゃく」を使って作っていたのは、もつ煮込み。

「新保こんにゃく」を使ったもつ煮込み
「新保こんにゃく」を使ったもつ煮込み

渡辺政利さん:
うまい!

その味を広めるために、渡辺さんは大きな夢を描いている。

渡辺政利さん:
伝統を残して、コンニャクパークのようなものをつくりたい。夢の夢だけど

卯年に建設会社とコンニャク作りで二兎追う渡辺さん。

渡辺政利さん:
「二兎追う者、二兎とも得る」。そんなつもりで

優しい弾力が魅力の伝統食に、地域を盛り上げる夢も弾む。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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