新潟空港を拠点とする航空会社「トキエア」。2023年6月末までに北海道・丘珠空港との定期便就航を予定している。
新潟県が11億円超を融資するなど、交流人口の拡大に大きな期待のかかる一大プロジェクトは、空の旅に新たな価値を加えることで、成功への道筋を描いている。
「トキエア」就航に向け準備進む
2022年11月5日、濃紺の尾翼を輝かせ、新潟空港に到着したトキエアの初号機。2023年、就航の年を迎え、長谷川政樹社長は周囲の期待をより強く感じている。

トキエア 長谷川政樹CEO:
いよいよ、今年就航ということで、「早く乗りたい」とか「チャーターさせてほしい」とか、そういったお声をいただいて、本当にありがたいと思っている

2022年11月30日に航空運送事業許可を国土交通省東京航空局に申請し、受理されたトキエア。
トキエア 長谷川政樹CEO(2022年12月1日):
就航の時期は、安全面を重視する中で、6月の末で申請しております

航空運送事業許可の取得に向け、今後、重要となるのが、実際の航空機を使った訓練だ。気象に左右されるため、冬の新潟ではスムーズに進まないことも想定される。

トキエア 長谷川政樹CEO:
中心はパイロットの訓練。今、ここの計画を立てながら、監督官庁になる航空局とも調整して、まず、このフェイズをどういう形で、どう終わらせるか。パイロットはすでに免許を取っているが、路線で飛ぶ訓練となると、各就航地との調整や様々な調整を毎日やっているという状況。簡単にいかない面もあるが、社員全員で皆様の期待に応えるべく頑張っている

「格安航空会社」であるトキエア。気になるのが価格帯だ。
トキエア 長谷川政樹CEO:
価格帯は、まだはっきりお伝えしていないが、丘珠空港(札幌市)ならば、今まで新潟の皆さんが千歳空港に行く際に、お支払いしていた運賃の半額ぐらいを想定している。その中でも、特徴として考えているのは、例えば、旅行まで1カ月を切っていたとしても、これまでの半額くらいで対応できるイメージを持って、事業計画を組んでいる
「付加価値」つけた旅でPR
就航が待たれる一方で、新潟空港発着の路線には「後ろ向きな決定」も下されている。

ANAの中部国際空港線が3月26日から運休に。FDAの神戸空港線が3月26日以降から季節運航となり、8月20日をもって運休することを発表したのだ。

松村道子キャスター:
中部国際空港線・神戸線は、それぞれトキエアが就航を目指す路線。それらが運休することをどう捉えていますか
トキエア 長谷川政樹CEO:
運休するということは、お客様が少なかったということが根本にあると思う。そうであれば、私たちが同じように航空機を飛ばしても、同じようなところ(運休)をたどるのではという見方は当然ある

トキエア 長谷川政樹CEO:
そこで、ただ飛ばすだけではなく、例えば神戸線であれば、神戸から京都へは電車で行ける。実は時間が読めるメリットがある

トキエア 長谷川政樹CEO:
また、神戸空港は港が近い。神戸港からフェリーも出ていて、小豆島(香川県)など瀬戸内のほうにも行ける。ある意味、トキエアで行く旅行に付加価値をつける形でPRして「こういうルートもある」という形でご利用いただけたら

誘客に期待!自治体と連携し新潟をPR
一方、トキエアには「新潟に人を呼び込む」という点で大きな期待が寄せられている。

新潟商工会議所 福田勝之 会頭(2022年9月21日):
新潟自体が日本中から来てもらう、魅力のある街にしなくてはいけない。その手段に、トキエアという小さな拠点の航空会社がある

県外の人にトキエアを使い、新潟を楽しんでもらうための準備は「自治体との連携」という形で、すでに始まっているという。

トキエア 長谷川政樹CEO:
新潟の皆さんなら、3月は「にいがた酒の陣」(日本酒の大型イベント)があると、常識のように分かっていても、他県では意外と知らない方もいる。そこで、県内のマンスリーのイベントカレンダーを県庁・新潟市・自治体の皆様とも協力して(丘珠空港のある)北海道でもPRしていく。そんなことを少しずつ進め始めているところ

さらに、海外客を取り込むことにも狙いを持っているという。
トキエア 長谷川政樹CEO:
新潟も国際線のフライトが「タイガーエア台湾」の台湾線で再開された。「タイガーエア台湾」は仙台空港にも飛ぶ計画を聞いている。例えば、台湾から新潟に来た観光客に新潟で2泊くらい宿泊してもらい、新潟から仙台へはトキエアで40分~50分のフライト。その後、仙台で2泊くらいしてお客さんは仙台から台湾へ帰る。こういった連携もどんどん活用していきたい
「乗ること自体を楽しめる」航空機
新たな旅の提案を活路とする一方で、目指す究極の姿は「乗ること自体を楽しめる」航空機だ。

トキエア 長谷川政樹CEO:
客室乗務員の制服は、スニーカーにパンツというスタイル。客室乗務員といえば、スカートにパンプスというイメージがある中、見慣れずに「あれ?」と思った方もいらっしゃると思う。ただ、安全面・働きやすさを考えると、トキエアのスタイルは動きやすい

緊急時のお客へのサポートなどを最優先した制服。また、機長のネクタイには、新潟県五泉市産の「五泉ニット」を使用している。

トキエア 長谷川政樹CEO:
新潟を発信・新潟拠点というところもあるので、そこは紐付けながら。「トキエアに乗ると、新しい情報があるよね」。そんなふうに感じられる仕掛けを社員と考えている

県から融資 「大きな期待」を背に奮闘
移動先にも、乗ること自体にも新たな「価値」を提供する航空会社へ。そのトキエアに、県は11億6000万円を融資。交流人口の創出につながる事業と位置づけている。

トキエア 長谷川政樹CEO:
トキエアが継続的に、きちんと運営できるように様々な出資のほか、県からも融資をいただいている。現在、社員は約80人。就航するまでにパイロット・客室乗務員・整備士・地上スタッフ・間接スタッフなど全て揃える。あと、飛行機もそうだが、全て揃ったところで「はい、スタート」という形。本当に最初に色々と投資が必要な事業体と言える

(Q.黒字化の見通しは?)
トキエア 長谷川政樹CEO:
搭乗率も一定の搭乗率で計算しているが、できたらプラスアルファで早めに達成する。そういったところは当然、民間企業なので狙う努力は今からやっている
大きな期待を背に、お客に選ばれるための奮闘が続く、トキエア就航元年。

トキエア 長谷川政樹CEO:
今までと同じようなことをやっていたのでは、なかなか厳しい面もあると思っている。新たな連携・新たなルート・新たな旅行を色んなアイデアをいただきながら発信して、とにかくこのトキエアは重要な位置づけにあるということを胸に頑張っていきたい
(NST新潟総合テレビ)