東京・北区にある「シネマ・チュプキ・タバタ」は日本初のユニバーサルシアターとして2016年にオープンした。「目の不自由な人も、耳の不自由な人も、車いすの人も、小さなお子様連れの人も、だれもがいつでも安心して、一緒に映画を楽しむことができる」映画館だ。視覚障害者のために、全席に音声ガイド。聴覚障害者のためには、映画に特別な字幕を用意している。また、小さい子や落ち着いて長時間座っていることが難しい人のための個室もある。

「シネマ・チュプキ・タバタ」(東京・北区)
「シネマ・チュプキ・タバタ」(東京・北区)
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この日、上映していたチャップリンの『黄金狂時代』を観にきた女性は目が不自由だ。

目が不自由な女性:この映画館の存在は、とてもありがたい。音声ガイド聞きながら、自分の頭や心に映像を思い浮かべて映画に浸っている。

ドキュメンタリー『こころの通訳者たち What a Wonderful World』

音声ガイドや字幕を制作するスタッフたちを取り上げた『こころの通訳者たち』【全国順次公開中(2/4〜川崎市アートセンター)】情景や出演者の仕草などを伝える音声ガイドや字幕作りの難しさが描かれているドキュメンタリーだ。制作現場には障害がある人も参加し、意見を言う場面も記録されている。

©Chupki
©Chupki

音声ガイド作りに参加した越美絵さんによると「通常のナレーションは見えて分かるものは書かないが、音声ガイドは見えないものを書く」。例えば、出演者の服装の特徴など。

音声ガイド作りに参加した越美絵さん
音声ガイド作りに参加した越美絵さん

今回初めて字幕作りに参加した近藤尚子さんは「書きたいことが多すぎて加減が難しい。これからも勉強していきたい」と話していた。

真のユニバーサルとは

「シネマ・チュプキ・タバタ」代表の平塚千穂子さんによると、ここ数年、徐々に健常者も訪れるようになった。

オープン当初は「障がいのある人の座席を奪ってしまうようで申し訳ない」と遠慮して来場しない人もいたようだが、音声ガイドを体験し「自分は見えているのに、気がついていない要素がたくさん あることに気づいた」と話していたという。

平塚千穂子さん:ユニバーサルシアターは“どんな方も”という意味だし、 健常者を含めみんなが混ざり合っているのが自然な状態

「シネマ・チュプキ・タバタ」代表・平塚千穂子さん
「シネマ・チュプキ・タバタ」代表・平塚千穂子さん

【取材後記】
今回取材を通じて、観客の見知らぬ人同士がその場で仲良くなっていたことに驚いた。他の映画館ではなかなか見られない光景だ。ロビーで初対面同士の人が仲良くなって、片方が杖を持っていると、じゃあ駅まで送りますよ!この映画館では、そんなシーンも見られるという。

山形か来たある男性は「映画は全ての人に開かれたものであるべきだと思う。とても素敵な映画館」だと話していた。このような取り組みがどんどん広がればと願う。

(1月31日「live news days」放送 取材・執筆:菊池俊匠)

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