「問題なのはKKKではなく進歩派だ」

「問題なのは(白人至上主義秘密結社の)KKKの人種差別主義者じゃない。(ニューヨークの)セントラルパークを犬を連れて散歩をする白人の進歩派で、ヒラリー・クリントンの支持者なのだ」

米国ミネアポリス市で、警察官が黒人男性の首を膝で押さえつけて殺害した事件をめぐって29日(現地時間)に放送されたCNNの番組内で、コメンテーターのバン・ジョーンズ氏はこう言った。

警察官が黒人男性の首を膝で押さえつけている瞬間

ジョーンズ氏は黒人で、トランプ大統領が当選した時の番組では「悪夢だ」と涙声で語り、民主党支持で知られる。そのジョーンズ氏が、今回白人の警察官がリンチ(私刑)にも例えられる方法で黒人を殺害した事件の背景にはKKKよりも進歩派の方に問題があると言ったのには含みがある。

「アフリカ系アメリカ人に襲われている」と通報

ミネアポリスの事件と同じ日、ニューヨークのセントラルパークを散歩していた白人女性から911番(日本の110番)で「アフリカ系アメリカ人の男性に襲われている」と通報があった。この女性、犬と散歩していたのだが、パークの規則に従わずリードをつけていなかったのでバードウオッチイングをしていた黒人男性に注意されると口論になり警察に「助け」を求めたのだった。

その様子は黒人男性の妹がビデオに撮っていてSNSに投稿すると全米に拡散し、女性が警察を呼ぶのに「アフリカ系アメリカ人」という言葉を重ねて使ったことが「人種問題を利用した」と非難され女性は投資会社を解雇されてしまった。

この女性が民主党支持者だったかどうかは明らかではないが、「警察は人種差別的だからアフリカ系アメリカ人に襲われていると言えばすぐに駆けつけてくれる」というのは民主党支持者によくある偏見だと考えられ、いつしか女性は「リベラルでヒラリー・クリントンの支持者」とSNSなどで取り沙汰されるようになった。

ロスアンゼルスでは抗議活動の一部が暴徒化 襲撃され火をつけられた店舗

人種差別に共和党、民主党の区別なし

もう一つ最近人種差別が問題になったのが、民主党の大統領候補が確実なジョー・バイデン 氏の発言だ。バイデン 氏は22日のラジオのインタビューで「トランプと私とどちらを支持するか決められないのは黒人じゃない」と言ったが、黒人は民主党を支持するのが当然だという態度こそ人種差別的と批判された。

民主党の大統領候補となることが確実なバイデン氏

また「黒人じゃない」というのも、英語でain't blackと黒人口調で「クロじゃねぇよ」と言ったことに「背筋が凍るような思いになった」と、黒人で米下院のジム・クライバーン副院内総務は語っている。(ニュースサイト「ポリティコ」5月26日)

今度のミネアポリスの事件で、当局が白人警察官をすぐに訴追しなかったことが抗議運動を煽ることにもなったが、ミネアポリス市の市長もミネソタ州の知事も民主党系の民主農労党の党員だ。

抗議デモは少なくとも全米75の都市へ拡大 12の州で州兵が動員されている

冒頭のジョーンズ氏の指摘は、人種差別に共和党、民主党の区別なく米国の白人の意識に染みついているものだが、民主党支持者は建前では公平さを口にしながらも心の底では差別的な志向を抱えているので、よりたちが悪いと言ったように受け取れる。

今度の事件に反発するデモが全米に広がり激化しているのも、人種差別が政治対立を越えた米国社会の固定的な問題だと黒人側が意識したからかもしれない。

もしそうであれば、この事件に対する抗議活動は当分収まりそうもないように思える。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】