持ち運べるエアコンは首に装着
気象庁は11日、九州北部や関東甲信、北陸、東北南部が梅雨入りしたとみられると発表した。
そして、すでに予兆はあるが、この蒸し暑い梅雨の時期が過ぎると、暑い夏がやってくる。
昨年は暑さをしのぐために“手持ち扇風機”を持つ人を多く見かけたが、さらに進化して「今年はエアコンを持ち運びたい」と思っている人もいるかもしれない。
(参考記事:進化しすぎて“持たない”ものまで…『手持ち扇風機』が一大旋風!昨年比3倍の取扱量の店も)
そんな“夢の商品”を富士通ゼネラルが5月27日に発表した。首に装着するウェアラブルエアコン Cómodo gear(コモドギア)だ。

首に冷却部、腰にラジエーターとバッテリーと、2か所に装着することで使用が可能。
重さは、ネック部が約170グラムで、腰に装着するラジエーター部を合わせた総重量は約840グラム。
色はダークグレーと汚れや傷が目立ちにくく、警備員の制服などに用いられる紺や黒にも馴染みやすい色調だ。また、ヘッドホンを首にかけるような形で装着するデザインとなっている。
バッテリーは外付けリチウムイオン電池を使用し、3時間の充電で2~4時間使うことができる。通信機能としてNFC(近距離無線通信)とBluetoothを内蔵している。
警備業や建設業、工場、イベント会場といった、炎天下や空調が届かない環境で作業が必要となる業種の、国内企業を対象に6月から提供を開始するという。
冷やす仕組みはどうなっている?
Cómodo gear(コモドギア)は、首に装着した冷却部から頸動脈を流れる血液を冷却することで、人間の深部体温を下げるという。

冷やす仕組みは、首の部分に搭載されたサーモ・モジュール(冷却部)で熱を放熱板に送ることで冷却する。同時に、サーモ・モジュールも熱が発生するため、その熱は水冷により冷却するシステムとなっている。

冷却部の温度は約20度まで冷え、気温が35度以上の暑い日でも、水冷方式であることから外気温の影響が少なく、高い冷却効果が期待できるという。
作業の邪魔にならず、高い気温の中でも効果を発揮するというウェアラブルエアコン Cómodo gear(コモドギア)は、現在まだ第一弾の段階。秋頃の発表を目指し、冷暖切替機能など現在も機能を開発中とのことだ。
まだ進化中の“首に装着するエアコン”だが、どういう経緯で開発に至ったのだろうか? 富士通ゼネラル・ウエアラブル事業部の尾形志郎部長に話を聞いた。
プロジェクトにおける製品化第一弾
ーー製造に至った経緯を教えて
Cómodo gear(コモドギア)は、社内組織BIG(Being Innovative Group)が進めてきた開発プロジェクトにおける製品化第一弾です。イノベーション組織であるBIGの目的は、新事業の創出であり、その新事業の前提は、弊社としてやる意義のあることでした。
その意義を考えた場合、やはり社会課題の解決が最優先であり、WINヒューマンレコーダー社(板生清・東京大学名誉教授)が着想されていた、深部体温を冷やすことで灼熱下での作業リスクを低減させることを目的とし、製品化に至りました。

ーーこだわりの部分は?
2点あります。
(1)ファンではなく、電子的な冷却効果により伝導で冷却する点。
(2)その冷却により発生する熱を、水冷により排熱する点。
ーー開発で苦労した点は?
効率よく冷却するための機構と安全面への配慮になります。

「使命感と責任を持って取り組んでおります」
ーー現在の反響は?
想定を超える反響をいただき、驚いております。
その中には非常にありがたい反響が多数ございました。例えば、こういった製品を待っていた、とか是非使ってみたい、という声をいただきました。
ーー反響に対してどう思う?
ご期待いただいていること、「早く一般販売もするように」などといったお叱りいただいていることに対して、弊社として使命感と責任を持って取り組んでおります。

ーー今回の試みに込められた思いは?
企画段階に設定した社会課題の解決に貢献することを目標にして参りました。
その貢献に少しは近づけたと考え、今後の機能アップなどにも、一歩一歩急ぎながら、着実に実現まで邁進(まいしん)していきたいと考えております。
ーー今後の目標は?
必要とされている方々に早くお届けしたく考えております。また、改善すべき点はできるだけ早く盛り込み、商品に反映することで、ご利用いただける皆様にご満足いただけるよう進めていきます。

現在、かなりの反響があり、今年の夏の提供数については検討中で、6月末から国内企業へのレンタル(1カ月・1台1万円以下を想定)のみとのことだ。
消防庁の発表によると、2019年6月~9月の全国における熱中症による救急搬送人員の数は6万6869人。そのうち118人が亡くなっている。
今年は新型コロナウイルスの感染予防としてマスクをする機会も多い。残念ながら今年の夏はCómodo gearが一般販売されないが、「自分は大丈夫」と油断せず、是非ともいろいろな熱中症対策をしてもらいたい。
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