強盗事件の容疑者は米陸軍兵と軍属の男 県警の捜査は…

事件が起きたのは5月12日。
外貨両替店に押し入った男2人組が店員を脅し、日本円にして約690万円が奪われた。

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警察:
犯人は英語を話していた。アメリカ軍関係者の可能性もある

事件発生直前、周辺の防犯カメラに映る不審な2人組。
沖縄県警は、複数のカメラの映像から、2人が逃走に使ったYナンバーの乗用車を特定する。

警察関係者:
車両が基地の中に逃げ込んだのであれば、軍当局に照会すればすぐに特定できる。今回は、憲兵隊の協力がなければ迅速に容疑者を割り出せなかったのではないか

発生から3日後、アメリカ軍は、嘉手納基地の中に住む陸軍兵と軍属の男を容疑者として拘束したことを発表した。

日本の刑事手続きでは、警察が容疑者を逮捕した場合、裁判所が必要だと認めれば起訴に至るまでの間も検察が容疑者を勾留することができる。

一方、日米地位協定の第17条では、容疑者の身柄がアメリカ側の手中にある場合、起訴されるまでアメリカ側が引き続き拘束し、起訴されて初めて日本側に引き渡される。

起訴前の引き渡しについては、殺人・強姦の2つの凶悪犯罪に限り、好意的な配慮を払うとされている。

「今回のような強盗事件で今まで身柄の引き渡しを要求したことはあるか?」捜査幹部は取材に対し吐き捨てるように言い放った。

日米地位協定の規定によって、県警は容疑者を逮捕することなく、捜査を進めざるを得ない。

これまでアメリカ軍が関連する事件に関わってきた弁護士は…

米軍事件・事故に詳しい 新垣勉弁護士:
日本の警察は、犯罪を犯した者が日本国民であれ、外国人であれ、同じように対処するのが本来のあるべき姿。米兵が公務中に起こした事件であればわかりますが、公務外で、しかも基地外で起こした犯罪について、なぜ特別な取り扱いをするのか

県警OB:
強盗だって凶悪だし、ましてや共犯事件。口裏合わせなどができないように身柄が我が手中にある方がベストなのは言うまでもない。悔しい思いをしている捜査員もいるのではないか

日米地位協定 制度・考え方の違いが背景に…

こうした取り決めが合意された背景には、犯罪捜査における日米の制度や考え方の違いがある。

沖縄国際大学 中野正剛教授(刑事法学):
アメリカは、伝統的に自国民の人権、利益を最優先に考える。逮捕された段階でも、刑事手続きに精通した弁護士が(立ち会って)取り調べをコントロールする。それによって“推定無罪”の原則を徹底させていく。(日本の制度は)被疑者が一方的に取り調べを受ける。弁護士が立ち会うというそもそもの発想が欠けている

​また、国際的に容疑者の身柄は裁判が開かれることが決まるまで、引き渡されないことが通例とされている。

沖縄国際大学・中野正剛教授(刑事法学):
国際法上は、互いに主権国家は対等だとみなされているので。国際法上は(身柄を引き渡す)義務はない

記者:
他国から引き渡しを請求されたら?

沖縄国際大学・中野正剛教授(刑事法学):
拒むことができるよ、というのが国際法上のルール

県警の要請に応じて、容疑者を連日警察署に連行する軍当局。
このうち軍属の男は手錠をされておらず、身体的な拘束を受けていなかった。

沖縄テレビは、容疑者2人をどのように拘束・監視しているのか、アメリカ軍に質問しているが、これまでに回答はない。

米軍事件・事故に詳しい 新垣勉弁護士:
第3者との接触ができないような拘禁施設にいるのであれば、証拠隠滅の恐れがないので問題はないが、基地内の宿舎から外に出ることを禁じられているだけの場合もある

1990年代には、強盗事件や女性暴行事件の容疑者が、軍当局の気付かない間に本国に逃げ帰ってしまうケースもあった。

捜査幹部:
2人とも容疑を認めているし、憲兵隊は指定した日時に出頭させている。『監視下にある』と言っているのだから信用するしかない

アメリカ軍関係者による事件・事故が起きる度に、日本の捜査当局は排他的な活動や特権を認めた地位協定を意識して臨まざるを得ない現状がある。

県警OB:
現役の時は、ルールの範囲内で捜査を尽くすことだけを考えていたが、地位協定が変わらなければ、今後も犯罪捜査に影響し続ける

米軍事件・事故に詳しい 新垣勉弁護士:
人権の問題については、地位協定の中で手続きの在り方を明記すること。基地外で起きた米兵犯罪の処理の仕方について、きちんと協議して、地位協定を改定することが不可欠だと思います

今回の捜査で県警は、憲兵隊の協力で逃走に使った車両や奪われた現金などを押収。
容疑が固まったとして書類送検した。
今後、検察が2人を起訴して、初めて日本側に身柄が移される。

(沖縄テレビ)

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