2021年7月に静岡県熱海市で土石流が発生してから1年余、警戒区域に自宅のある人たちの避難生活は続いている。立ち入りを禁止された住宅はカビがはえ、リフォームが必要なところが多い。修理に公費補助が出ない人もいて、長い避難生活に加え、新たな負担がのしかかる。
警戒区域内で1年4カ月余り放置
木の板でふさがれた窓、抜け落ちた床、そしてカビに覆われた壁。

熱海市の土石流で被害を受けた住宅だ。
警戒区域に指定され、1年4カ月以上住むことができず放置されたままだ。

島 優司さんの家も警戒区域にあり、避難生活を続けている。
2022年10月 自宅周辺を訪れた。

被災者・島 優司さん:
何も変わり映えしない。この場所に戻ってくるたびに「何かが変わっていれば、進歩があるのかな」というのはありますが、自宅の前は何も変わっていない。草が生えたぐらい
被害程度でわかれる公費補助
熱海市を襲った土石流災害では、136棟(非住家含む)の建物が被害を受けた。被災した建物は市の罹災証明で、被害の程度が大きい順に、「全壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」などの区分に判定される。

このうち希望すれば公費で解体・修理できるのが、「半壊」以上の被害の90棟だ。残り46棟の「準半壊」と「一部損壊」は、解体や修理にかかる費用を住民が負担しなければならない。
島さんの自宅は「一部損壊」と判定されていて、解体や修理をするとなると自己負担だ。
一部損壊でも「カビ・湿気・臭いで住めない」

被災者・島 優司さん:
現在は一部損傷で壊れている状態ですが、家の中はカビが生えたりしている。やはり住むには全てリフォームしないと、湿気とか臭いがあるので住むことはできない

熱海市が被災者への個別面談をおこなった結果、元の住宅の修繕や建て替えによる再建を希望した人が、面談全体の44.4%にのぼっている。
しかしその気持ちとは裏腹に長期の避難によって住宅の傷みが進み、実際には戻れないという状況が予想されている。

被災者・島 優司さん:
やはり伊豆山は自分の生まれ育った所なので、戻りたいという気持ちはあります。でも戻れないと思います。今は誰も(家に)住んでいないし悪くなる一方で、その辺を考えたらちょっと住めないかな
修理費用の支援を求める声も
熱海市は2023年夏頃には警戒区域の指定を解除し、住民に戻ってもらいたいと考えている。
市議会でも、警戒区域内の住宅の問題が指摘された。

熱海市議会・髙橋 幸雄 市議:
放っておくと(劣化が進み)「一部損壊」が「半壊」になり、「準半壊」が「全壊」になってしまい、住めなくなる。来年解除されて(警戒区域に)入る時に、(修復の)助成制度があれば直せる
警戒区域の今後について行政に提言を行っている住民団体は、支援策の創設を訴えている。

警戒区域みらいの会・中島 秀人 代表:
全国でも例を見ない災害だったので、行政で特例的に扱かってもらえると助かる。(「準半壊」「一部損壊」の自宅に戻りたい人は)何万人という人がいるわけではない。10軒 や20軒なので、できる限り(行政には)寄り添ってもらい、(修理)資金も少しでも出してもらえると助かる
市は「検討中」とは言うものの…
しかしこうした要望を受けている熱海市だが、住宅の修理費用の補助などについては消極的な姿勢を示している。

熱海市・斉藤 栄 市長:
(警戒区域の)解除の前にライフラインを復旧しますが、同時に被災家屋の修繕も解除前から行えるようなスケジュールを、今 想定しています。市としてどういうことができるか検討しています

甚大な被害を受けた熱海市伊豆山。
避難生活によってこれまでの地域のつながりが失われつつある中、元の生活を取り戻すためにもスムーズに自宅に戻れる環境づくりが求められている。
(テレビ静岡)