静岡県伊豆半島の観光地・伊東市と下田市をつなぐ伊豆急行線は利用客が激減し、駅の半数以上が無人駅になった。駅員がいないため“ひと気”がなくなり、不安を感じている利用客も多い。そこで、地元の店が賑わいを取り戻そうと駅舎にコーヒースタンドを出店した。地域の“憩いの場”をめざす。
無人駅にコーヒースタンド開店

伊豆急行線の無人駅の1つ、下田市の「蓮台寺駅」。
2022年9月、コーヒースタンドのメニューが壁に取り付けられた。駅員のいない無人駅に賑わいを取り戻そうと設置されたコーヒースタンドだ。

利用客:
ここ(蓮台寺駅)はさびしかったから、できてうれしい

別の利用客:
明かりがついているだけで、ホッとひと安心できそうな感じですね
利用客激減 半数が無人駅に
1961年に運行を始めた伊豆急行線。伊豆の東海岸で伊東と下田をつないでいて、首都圏の観光客にとっても地元の人たちにとっても重要な交通手段だ。

しかし利用客が減り続ける中、新型コロナが追い打ちをかけ、2021年度の利用客数は新型コロナ前と比べ4割減少している。

伊豆急行 運輸部事業課・鈴木悠生さん:
安全輸送とお客様の利用や経営という事で総合的に見ていくと、どうしても駅に駅員を置くというのが難しい駅もありますので、そこが厳しい所です

ここ数年 人件費の削減などを理由に無人駅が増えていて、2022年11月現在 伊豆急行線の15カ所の駅のうち8カ所の駅が無人駅となっている。
駅員がいなくなり、ひと気がなくなった。
「駅から地域を明るく」
2020年5月から駅員がいなくなった下田市の蓮台寺駅。2021度は1日平均470人が利用している。

この駅を活用して賑わいを取り戻すことはできないか。伊豆急行は地元の自然食品専門店と協力し、2022年9月にコーヒースタンドをオープンさせることになった。無人駅になってから1年4カ月だ。

NEED Uオーナー・板橋隼平さん:
無人駅が増えているという状況を知って、私自身も蓮台寺は保育園の時から通っていたエリアでもあり、地域の活性化という点から駅から明るくできたらないいなと、今回このような常設店舗を構えました

コーヒースタンドが設置されたのは、駅の事務室の一画だ。伊豆急行が真っ白な内装にリノベーションした。水道や電気の使用料は無料だ。
この店では、下田産の天然塩を使った塩バニラのジェラートなども提供している。

伊豆急行・小林秀樹 社長:
ちょっと塩味が効いていて、それが甘みを引き出しとてもおいしい。これで無人駅の中で少しでも賑わいやお客様の集いの場所になったり、電車を待つ間に少しでも楽しみが増えればいいかなと思います
通学利用の高校生も安心
無人駅に人がいることで、駅を利用する高校生も安心感が得られるようになった。

高校生:
やはり無人駅だと夜になると人がいないので、不安があります
別の生徒:
無人駅にこういう店ができるのは、すごくありがたくてうれしい

コーヒースタンドは平日のみ午前7時から午後7時までの営業だ。列車の利用客だけでなく、列車を利用せずにコーヒーを買い求めに来る人もいる。

利用客:
こういうお店あがると、何か(無人駅の)雰囲気がガラッと変わっていいなと思います
別の利用客:
いつもこの駅で電車を降りてバスに乗り換えるのに時間が空くので、お店があればいいのとずっと思っていました。だからすごくうれしいです
住民が集う憩いの場に
これまでなかったコーヒーの香りが駅舎内に広がる。目指すのは、住民たちが集う地域の憩いの場だ。

伊豆急行 運輸部事業課・鈴木悠生さん:
新しい取り組みを地元の方々と一緒にやっていくことで、ちょっと新しい伊豆急行線ができていければ良いかなと思います

伊豆急行は今後、他の無人駅でもこうした賑わいづくりを進める予定だ。
大勢の人が行きかう駅。駅員がいない無人駅だが、人のふれあいを感じられる場所が求められている。
(テレビ静岡)