2013年12月に、「餃子の王将」の運営会社の社長が殺害された事件。2022年10月28日に暴力団幹部の田中幸雄容疑者(56)が逮捕され、身柄が福岡から京都に移送された。事件の全容解明は、どこまで進むのか。

「期待にそう供述は出ない」

田中容疑者は、逮捕当初から雑談に応じるものの、事件に関しては黙秘を続けている。
田中容疑者の人となりについて捜査関係者は、「暴力団特有の性質を持っているので、期待にそぐうような供述は出ないと考えている」と話した。

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警察は現場に残った薬きょうなどから、イタリア製の自動式拳銃が凶器とみているが、事件に使われた拳銃はまだ見つかっていない。

9年近くにわたる執念の捜査で、吸い殻のDNAの型や燃え方、犯人の足取りなどの状況証拠を積み重ねて逮捕に至った。しかし犯行を裏付ける直接的な証拠がないだけに、起訴できるかどうかは今後の捜査にかかっている。

警察は、複数人が事件に関わっているとみていて、工藤会の組織的な関与の疑いも含めて捜査している。

創業者一族と深い関係「A氏」

この事件で注目されているのが、福岡県の企業経営者A氏と王将の関係だ。王将の創業者と企業経営者のA氏は1977年に知り合い、トラブル解決で頼るなど親しい間柄でしたが、代替わりしてから関係性が変化していく。

長男が社長に就任した後は、専務となった次男がA氏との関係を引き継いだが、このときには王将に不利益をもたらす関係で、合わせて260億円にも上る不適切な取引が行われていたということだ。

4代目社長に就任した大東さんは、経営危機に陥った王将を建て直すため、A氏との不適切な取引を解消しようと取り組んでいた。そんな中、田中容疑者によって殺害されたとみられている。

A氏と田中容疑者は、共に福岡を拠点にしているという点以外、明確な関係性はまだ見えてきていない。

A氏 任意で事情聴取も

警察は事件の関係者として、29日に福岡県内のA氏の関係先を家宅捜索するとともに、A氏に任意で事情を聞いている。

王将で働いていたOBにA氏について聞くと、「創業者と深い仲で、特別な行事に顔を出す人。A氏へのお金の流れもみんな知っていて、思うところはあったが創業一族のことだから…」と言葉を濁した。

20年ほど前にA氏の会社で勤務していた人によると、「当時からひどい赤字経営だった。毎月のように王将から2~3億円の借入金があった」ということだ。

近隣の人はA氏について、「腰が低くて普通の人。お金持ちだと思っていたが王将との関係は知らなかった」と話した。

家宅捜索ではロケットランチャーも…

田中容疑者は、凶暴性で知られる「工藤会」のヒットマンとされている。

日本で唯一「特定危険指定暴力団」に指定されている工藤会は、2021年、総裁の野村被告が死刑判決、会長の田上被告が無期懲役の判決を受けている。

工藤会は、野村被告が総裁に就任した2000年以降で113件の襲撃事件を起こしていて、そのほとんどが一般市民を狙ったものだ。これまでの家宅捜索では、自動小銃や軍事用ロケットランチャーなどが見つかっている。

この工藤会が、大東さんの襲撃に直接関与しているかは不明だ。

関西テレビの神崎デスクは、今後の捜査のポイントを3つ指摘する。

関西テレビ 神崎博デスク:
1つ目は「田中容疑者が大東さんを殺害したこと」の立証です。凶器が見つかっておらず、たばこの吸い殻や逃走に使われたとみられるバイクといった“間接証拠”しか見つかっていない中で、どうやって立証するか。本人の自供が取れない限りは、証拠の積み上げが立証の鍵となります。

関西テレビ 神崎博デスク:
2つ目は「工藤会の組織的な関与」の有無です。大東さんと田中容疑者の関係性は、現段階で見つかっていません。2人の間に直接の関係がないとすると、田中容疑者に大東さん殺害を指示した人物がいることになります。工藤会が組織的に上意下達で指示したのか、工藤会の二次団体が話を受けたのかをはっきりさせる必要があります。

関西テレビ 神崎博デスク:
3つ目は「A氏の事件への関与」の有無です。A氏と工藤会の関係を含め、今回の事件にA氏がどこまで関わっているか。警察はA氏の関係先に家宅捜索を行い、任意での事情聴取をしています。今後の捜査で、A氏と事件の関係がどこまで明らかになるかが期待されます。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月31日放送)

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