気候温暖で首都圏に近い静岡市はプロ野球のキャンプ地になったこともあり、今も長期間滞在してオープン戦をするチームがある。その静岡市に新球団創設構想が持ち上がった。2軍だけで、NPB日本野球機構オーナー会議で検討中だ。静岡市側も歓迎しているが、実現するのだろうか。
中学校野球部員減少で合同チーム
グラウンドに響く子供たちの掛け声。静岡市駿河区の大里中学校ではこの日、野球部が大会に向けた練習に励んでいた。

部員数は1、2年生合わせて11人、10年前と比べ半数ほどに減少した。そのため2022年7月からは、近くにある中島中学校と合同でチームを組んでいる。

大里・中島中学校 合同チーム・福島和大 監督:
子供たちの人数が減っている。それ以上に野球が、身近なスポーツではなくなってきている

静岡県内の野球部の部員数は2013年度 6154人だったが、年を追うごとに減り続け、2022年度は3518人となっている。
少子化の影響に加え、野球道具の高騰や指導の厳しさ、練習時間の長さが野球離れを加速させていると言われている。
新球団構想はオーナー会議で検討中
こうした中、県内の野球界にうれしい知らせが届いた。
プロ野球を統括するNPB(日本野球機構)のオーナー会議で、静岡市を本拠地とする2軍球団を作る構想が提案された。

手をあげたのは、都内で金融事業を手掛ける企業だ。静岡市清水区にある清水庵原球場を本拠地の候補として2024年シーズンからの新規参入を目指している。

オーナー会議 山口寿一議長:
オーナーの皆さんからは野球界、野球の振興に資するようにと。野球界全体の発展にとにかくつながるようにしっかり検討してほしいと、指示がありました。それに沿って今後も検討を続けていく
市も10年前から準備 地元で高まる期待
静岡市でも、10年前から準備を進めてきた。田辺市長は地元球団創設を選挙公約に掲げ、これまでも市の強みや課題を洗い出す基礎調査や、草薙球場で合同トライアウトを実施するなど、球団誘致の可能性を探ってきた。

静岡市・田辺信宏 市長(2014年):
(新球団は)地域経済活性化のカンフル剤になる。スポーツの持つ力、これを郷土意識の一体感の高まりにつなげていきたい。静岡に住んで、このチームを応援できてよかったと子供たちが夢を持てるような環境を作りたい
突如浮上した2軍球団の創設構想に子供たちの夢も広がる。

野球部員:
静岡に野球チームができるのはうれしい
別の部員:
今までにないことなので、楽しみの気持ちが大きい
別の部員:
毎日でもいいので、どんどん(プロ野球選手を)見て、いろいろな面で勉強させてもらいたい
また、軟式野球の普及や大会運営を行う県野球連盟も期待感を示している。

県野球連盟・森村謙司専務理事:
非常にありがたい話と感じている。プロ野球選手たちの立ち居振る舞いを間近で見ることができる。技術だけでなくて、大いに勉強になることではないか。特に小中学生にとっては非常に楽しみだと感じている
資金面で課題か 新規参入に30億円
一方で、清水庵原球場では軟式野球の大会も数多く開かれているため、2軍の球団の本拠地となればアマチュアの大会が減ってしまうことが懸念されている。

そして構想自体にも課題が指摘されている。
野球協約によると、プロ野球の新規参入に必要な経費は25億円の預かり保証金をはじめ、野球振興協力金4億円、加入手数料1億円など合わせて30億円にのぼり、これに球団の運営費が加わる。
球団オーナーからは安定した球団運営ができるのか疑問視し、新規参入に反対する意見もあがっている。
スポーツ経営に詳しい専門家に聞いた。

早稲田大学 スポーツ科学学術院・木村和彦 教授:
30億円は障壁が高い気がしていて、もしかしたら2軍だけだと30億円払わなくていいのかもしれない
その上でこの構想をきっかけに、いまこそプロ野球改革を行うべきと話す。
早稲田大学 スポーツ科学学術院・木村和彦 教授:
現状維持をずっと続けていたのでは、未来がない。2軍だけというわけではなくて、独立リーグや社会人野球を組み合わせてプロ化していく、日本のプロ野球自体を拡大方向へ舵を切るきっかけになってほしい
子供たちや野球関係者の期待が膨らむ「プロ野球の球団創設構想」。
11月開かれるオーナー会議でも協議される見通しで、その議論の行方に注目が集まる。
(テレビ静岡)