2018年西日本豪雨発生時、大山まど薫さんは広島地方気象台にいた。
気象庁職員になりたてだった大山さんは、満足のできる仕事ができなかったという無力感をバネに、気象予報士資格を取得。

そして、11月に出発する第64次南極観測隊の越冬隊員として南極へ行く。“過酷な”その仕事内容とは?

出身地が被災 無力感をバネに気象予報士に

第64次南極地域観測隊に越冬隊員として参加する気象庁職員、大山まど薫さん。

岡山県出身の大山さんは、2018年西日本豪雨の際、実家のある岡山県が被災した。

西日本豪雨は各地に大きな被害を与えた(2018年7月 岡山県倉敷市真備町)
西日本豪雨は各地に大きな被害を与えた(2018年7月 岡山県倉敷市真備町)
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この時、気象庁職員となったばかりの大山さんは、広島地方気象台にいた。

子供の頃によく通った道や街が浸水し、自身が勤務する気象台の管轄からも特別警報が発表された。各地で災害復旧にあたる人々から問い合わせが殺到したが、新米の大山さんは満足できるような対応ができず無力感だけが残ったという。

「もっと気象や防災を勉強しなければ」と考え、猛勉強の末、気象予報士の資格を取得した。

広島地方気象台
広島地方気象台

南極で1年以上、3時間毎に目視による気象観測

そして、これまで培った経験を胸に、2022年11月、越冬隊員として南極へ行く。

きっかけは、大学院生の時、国立天文台での観測に参加したときのこと。
第39次南極地域観測隊の一員から南極の魅力について話を聞き、今回、越冬隊としての参加に手をあげた。

越冬隊員に選ばれた当初は、ワクワクしていたが、出発時期が近づいてきた今は、不安が9割だという。準備がもれていないか、国内で手続きはやり残してないか、一年半耐えられるかどうか…。

「南極でしたいことは?」と聞くと、「ペンギンを見たい」と楽しそうに即答した大山さんだが、南極での担当は、南極大陸の気象予測。野外活動に出かける観測隊にとって命に関わる大仕事だ。

現地での主な作業は目視観測だ。午前0時、午前3時、そして午前6時などと3時間毎に、気象庁職員が365日、目視による気象観測を続ける。

ラジオゾンデ
ラジオゾンデ

このほかにも気象庁職員の越冬隊員は、ラジオゾンデという観測風船を午前2時半、午後2時半の2回、昭和基地から打ち上げる。これは世界の観測基地が協力して行なっている観測作業で全世界にデータが共有される。

南極観測隊にとって重要な仕事を担う大山さん。再来年、2024年3月に帰国予定だ。