岸田首相は21日から23日にかけて、オーストラリア・パースを訪問する。
首相就任後、初のオーストラリア外遊となり、22日にはアルバニージー首相との首脳会談が予定されている。
旧統一教会を巡る問題で激しい追及を受ける中、国会日程の合間を縫っての外遊となるが、岸田首相周辺は「クアッドのメンバーでもあり、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)推進でも、エネルギー安全保障でも、オーストラリアは重要だ」と話していて、「安全保障」「エネルギー」についてオーストラリアへの期待感がうかがえる。
中国を念頭に日豪が連携強化
今回の外遊で大きなテーマとなるのは、両国の安全保障の連携強化だ。
政府関係者は、近年、日本の周辺で行う軍事訓練にオーストラリアも参加しており、両国で活動する機会のレベルが上がっていることから、両国の関係を「極めて特別な緊密な関係」だと話す。
さらに、自衛隊とオーストラリア軍の相互の往来に関する「RAA(=日豪円滑化協定)」に署名しており、オーストラリアは日本にとって「準同盟」とも言える関係の国だけに、今回の訪問で、どこまで関係を深化させられるか重要になる。

オーストラリアとの関係強化の背景にあるのは中国だ。
海洋進出を強める中国は、4月にソロモン諸島との間で安全保障に関する協定の締結で合意。オーストラリアにとって、南太平洋の島嶼国は地政学的に重要であり、日本と安全保障面での連携を重視している。
日本とオーストラリアの両国は、安全保障協力に関する新たな共同宣言を出す方向で調整を進めていて、「2007年に日豪安保共同宣言が締結されたが、15年前から世界の状況は変わっているため、時代に合わせたものにする」(官邸筋)としていて、中国を念頭に置いた宣言まで踏み込めるかが焦点となる。
また経済面でも、オーストラリアは中国が貿易を制限していることで大麦やワイン、石炭などの輸出に影響が出ている事もあり、協力を深め、「特別な戦略的パートナーシップ」を強化することも狙いの一つだ。
「エネルギー確保は喫緊の課題」
また岸田首相が訪れるパースは、天然ガスや鉄鉱石の産地として有名な土地であり、日本との関係が深い。外務省幹部は「オーストラリア側による調整で、鉱山の視察も設定されている」と話す。
日本はオーストラリアから多くの資源を輸入しており、石炭とLNG(液化天然ガス)については最大の輸入国だ。
「ウクライナ情勢の中でエネルギー確保は喫緊の課題なので、有意義だ」(官邸筋)との指摘があるように、資源大国であるオーストラリアとエネルギー分野での協力体制を強化することは日本にとって極めて重要であり、今回の訪問でどのような成果が残せるか注目される。
国会日程の合間の外遊 成果は…
過密な国会日程の合間を縫っての外遊となるが、政府関係者は「オーストラリアはクアッドの現在の議長国。年内にどうしても行きたい」と話す。さらにアルバニージー首相が5月、そして安倍元首相の国葬で9月と2度来日していることに触れ、「2回来てもらっているわけですから、順番を考えると当然。来年の広島サミットを考えると、どんな連携が組めるかについて早めに議論しておきたい」と狙いを語る。

足元では旧統一教会を巡る問題で激しい追及を受け、内閣支持率も下落するなど正念場の岸田首相にとって、国会日程の合間を縫った短い日程の中で行われる首脳会談で、岸田首相が「準同盟国」とどこまで関係を深められるかが注目される。
(フジテレビ政治部・長島理紗)