宮城県名取市閖上出身のイラストレーターが、防災を身近に感じてもらおうとイラストを通じて発信を続けている。2011年の東日本大震災と2019年の台風による被災体験が、作品のもとになっているという。”防災は日常の延長“ー。日々の暮らしの中にある”身構えない防災”を発信する取り組みを取材した。

2022年9月、宮城県名取市閖上の震災復興伝承館であるイラスト展が開かれた。日常的な風景を描いた4コマ漫画やすごろくなどの展示が並んでいるが、その内容は災害に対する備えや教訓を伝えるもの。展示会のタイトルは「空振り生活」。

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「毎朝、近所を散策」
「今日は水位が高いねえ」

「階段昇降中イメージトレーニング」
「いざとなったらじいじ担ぎます」

「ばあばなんかムキムキだね」
「空振り生活、引いては長寿!」

使わないかもしれない災害への備えを「空振り」と表現しつつ、その大切さをコミカルに表現している。

制作したのは宮城県名取市閖上出身で福島県在住の、イラストレーター・ico.さん。

ico.さん:
地区の避難所というところに行ってみたら、これ昭和何年の建物だろう…みたいな。目の前に川あるけど大丈夫かなみたいな

来場者:
ここ避難所でいいのかな、みたいなね

ico.さん:
行政も今、頑張っているけど。まずは自分で。すぐまた来るかもしれないからね

二度の被災経験をイラストに

ico.さん:
ちょうどこの辺か、草がぼうぼうの、あの辺りかもしれないですね。横に入る道があって角だったので、目印になっていたんですが、今はもう無い

ico.さんが生まれ育った名取市閖上地区は、東日本大震災で754人が犠牲になるなど、大きな被害を受けた。震災当時、閖上の実家で両親と暮らしていたico.さん。家族は全員無事だったが、自宅が津波で流された。

さらに、2019年、福島県で東日本台風の被害に遭い、マンション1階にあった自宅が浸水。二度も大きな災害に見舞われた。

ico.さん:
私が2回被災した中で、命があったのはギリギリ奇跡だと思っていて、あと数分動かないでいたら危なかった。こんなに実体験として経験を持っているのに、それを伝えないで、自分だけ助かりたくないと思って

「空振り生活」の作品は二度の被災経験と、それを無駄にしたくないというico.さんの思いから生まれた。

これからも新たな作品に挑戦

2022年12月にも、福島県と宮城県でイラスト展を予定しているico.さん。次のテーマは…「ボンジュール・防災」。フランス語で「おはよう」や「こんにちは」といったあいさつの言葉「ボンジュール」を使い、日々の「防災」との出合いをおしゃれなカレンダーにして伝えようと考えている。

ico.さん:
この月はカフェの街中にAEDがあったという(場面)。「あったじゃーん」「あるなー」みたいなイラストを配置して、9月のボンジュール・防災「AED自動体外式除細動器」といってAEDの説明をしています。街中に実はあるんですよということと使い方を簡単に書いています

自らの経験から、命を守る「防災」は日々の暮らしの中にあると感じているico.さん。そのことをより多くの人に伝えるため、これからも新たな作品に挑戦していく。

ico.さん:
見た人が発見した、いいこと聞いたとか、面白いと思ってもらえると、その方がシェアしてくれると思ったので、なるべく防災ということでかしこまったり身構えたりせずに、日常の延長なんだよということを伝えられる発信をしていきたい

(仙台放送)

仙台放送
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