コロナ禍で再三にわたる休業や時短要請により大きなダメージを負ってきた、鹿児島市の繁華街・天文館。新型コロナの第7波が徐々に収まり、飲食店はにぎわいを取り戻しつつあるが、新たな悩みも。南九州一の繁華街、天文館の今を取材した。

10月1日の天文館。土曜日ということもあり、取材した居酒屋はほぼ満席。

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訪れた客:
ストレス発散ですね

訪れた客:
たくさん飲んで、はっちゃけよう(騒ごう)と思っている

コロナ禍も3年目。社会とウイルスの向き合い方は変わり始め、2022年3月を最後に飲食店への時短営業や休業要請は出ていない。感染者が爆発的に増えた8月は厳しい状況だったが、この店はここ2週間ほどで客足が戻り始めたそう。

食材だけでなく酒類までも…止まらない「値上げ」に苦しむ飲食店

しかし、オープン前の仕込みにおじゃますると。料理長の堂園さんは新たな悩みを打ち明けた。

趣膳 創志奏愛・堂園幸寛料理長:
必要経費を全部払ってしまうと、黒字どころではない。少し赤字になる

それは2022年に入って相次ぐ「値上げ」。この店では7月と9月にほぼ同じ量の食材を仕入れたが、9月は7月より7万円ほど高くなったそう。さらに、10月に入ったこの日からは、店に欠かせないビールなどの酒類も値上げされた。

趣膳 創志奏愛・堂園幸寛料理長:
(生ビールは)1万円で買えていた量が、1万2,000円になる。販売価格に転嫁しないと、経営が無理になってくる

2022年4月、天文館には大きな転機が訪れた。再開発ビル「センテラス天文館」のオープンだ。

天文館の新たなランドマークの誕生に、当時取材したもつ鍋店からは波及効果を期待する声が聞かれた。

元祖もつ鍋の店 一成・橋口滋子さん:
センテラスという名前も、天文館って1,000軒以上のお店がある、ちょうど。だから1,000軒の店を照らすぐらいの希望のビルになってほしい

それから、半年。店を取材すると、多くの客でにぎわっていた。
しかし、店主は再開発の効果をあまり感じていないようだ。

元祖もつ鍋の店 一成・橋口滋子さん:
正直に言うと期待ほどはなかった。一瞬ものすごく天文館の人が増えたが、今はもう普通に戻っている

さらに、コロナ禍で来店する客層の変化も感じている。

元祖もつ鍋の店 一成・橋口滋子さん:
団体の客が来ない。客の意識が、いまだに少人数で食べるというのが身についているのかもしれない

戻らない夜の人出…コロナ禍が飲食店に与えた影響

コロナ前の2019年を100として、2022年の天文館の人出をグラフ化してみた。1月から3月の第6波では、まん延防止等重点措置で飲食店に時短要請が出され、夜の人出は大きく減っている。その後、人出は増加に転じ、感染の第7波では行動制限はなかったものの、夜の人出は現在もコロナ前の40%ほど。コロナ前の9割近くに戻っている昼間の人出とは対照的。

この日飲みに出ていた人は、飲食習慣の変化を口にする。

飲みに来ていた人:
(飲みにいくのは)最近は何カ月に1回。前は毎日行っていた

飲みに来ていた人:
多くて5人とか、人数が少なくなるように気をつけている

そんな天文館で、とりわけ目立つものがある。

安楽遥記者:
県内一の繁華街、天文館の文化通りですが、この通りに面しているビルでもテナント募集の張り紙が張られています

天文館文化通り会によると、2022年の夏ごろから店を閉めるところが増え、現在、空き店舗の数は天文館一帯で90軒以上あるそう。地元のシンクタンクの専門家は、飲食店の今とこれからをこう推測する。

九州経済研究所 経済調査部・福留一郎部長:
正念場はこれから。(コロナ融資の)元金返済が既にスタートしていて、これが今後本格化してくる。そうなった時に、客が前みたいに来てくれない、返済もできないとなると、「ここで見切りをつけておかないと」と、店を畳もうという選択肢が増えてくる可能性は十分にある

厳しい状況が続く天文館だが、前を向く人もいる。10月10日のオープンを控え、開店準備を進める居酒屋をのぞいてみた。

居酒屋 しゅるり・山住謙介さん:
コロナ禍なので、少人数の客をターゲットに

代表の山住さんはエンジニアから転身し、数年間、天文館の飲食店で勤務。このタイミングで自分の店を持つことを決めたわけは?

居酒屋 しゅるり・山住謙介さん:
(コロナが)収まってから店をやるとなると、なかなか店舗が空いていなかったりするので、今が一番底かな、今がチャンスかなと思って。自分は天文館で働いてきたので、盛り上げていきたい

天文館は、これまでも、これからも、鹿児島にとって特別な場所。

九州経済研究所 経済調査部・福留一郎部長:
(天文館は)鹿児島にとって景気のバロメーター的な、象徴するような場であった。地元の人もそうだし、観光客の方も天文館は知名度があった。それがだんだん廃れていくとか、元気がなくなっていくと、鹿児島の経済にとってはよくない

戻らない夜の人出に、止まらない値上げ。鹿児島のバロメーター、天文館は今もトンネルの出口を探している。

(鹿児島テレビ)

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