新潟県のブランド米「新之助」の一般販売が始まってから5年。生産農家は約500人増え、生産面積は4倍近くになった。「新之助」を使用したコスメまで登場する一方、品質を保つため育て方に細かい基準があるため、生産をやめる農家も。期待されていたブランド力は向上したのか、その現状と課題を取材した。

「評判はかなり上々」 一般販売から5年 “新之助”の今

新潟市南区に広がっていた黄金色の田んぼ。収穫されていたのは、ブランド米「新之助」。

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新潟県が開発し、2017年に一般販売が始まった新之助。つやのある大きな粒や強い甘みが特長で、コシヒカリに並ぶ新たなブランド米として注目を浴びた。

さらに、著名人をイメージキャラクターやアンバサダーに起用したPRのほか、歴代の知事が自らセールを行うなど、県はブランド力の向上に力を注いできた。

新潟県 花角知事
新潟県 花角知事

その結果、5年間で生産農家は約500人増え、生産面積は4倍近くに。新潟市南区の農家・伊勢亀裕二さんも4年前に生産を始めた。

伊勢亀農場 伊勢亀裕二さん:
今までは「新之助を半分、コシヒカリを半分」だったが、今年は「全部新之助がいい」という方がいらっしゃった。県外にも送っているらしく、かなり上々な評判。

県外でも認知度高まる中 “新之助”を使用したコスメ登場

一般販売から5年がたった新之助。街の人たちはどのように認知しているのだろうか?

(Q.新之助を食べたことは?)
新潟県民:

ある。

新潟県民:
普段のコメよりも、ちょっと高めのブランド品というイメージ。
 

県によると、新之助の認知度は県内では100%だということだが、県外では…

(Q.群馬で見かけたことは)
群馬県民:

ある。スーパーによく置いてある。

東京都民:
新之助は知らない。新潟のコメはコシヒカリ。
 

首都圏で61.1%、関西圏や中京圏で50%近くと、徐々に認知は高まっていて、その展開は「食」だけにとどまらない。

9月、三条市の会社が発売したのは、新之助を使用した化粧水などのコスメ。

双葉貿易 五十嵐美穂さん:
新之助ブランドの力を感じた。

こちらの会社が2018年に新之助の美容マスクの販売を開始したところ、全国で約24万袋を売り上げ完売。ブランド力を実感し、新たな商品も開発している。

双葉貿易 五十嵐美穂さん:
九州や沖縄のお客様からもお問い合わせをいただいたので、認知度は確実に上がっているかなと感じる。新潟県の方はもちろん、県外の方からも新潟を知ってもらうきっかけになるといい。

生産やめる農家も… 栽培管理が厳しい“新之助” 今後の課題は?

一方、この5年で見えてきた課題もある。農家の伊勢亀さんが見せてくれたのは、新之助の栽培管理の記録表。

伊勢亀農場 伊勢亀裕二さん:
葉の色「SPAD」と言うが、色合いがどれくらいかという数値。普通のコシヒカリにはいらない。
 

品質を保つため育て方に細かい基準のある新之助は、小さな農家には効率が悪く、生産をやめたところも。さらに…

伊勢亀農場 伊勢亀裕二さん:
2等米になれば新之助ではない。経営面で大きなところは大打撃を受けているはず。
 

新之助を名乗れるのは1等米だけで、2等米以下はただの「うるち米」に。こうした中、2021年は猛暑により、新之助の1等米比率が初めて9割を下回り、打撃を受けた農家もあった。

新潟薬科大学 大坪研一 特任教授:
「苦労に見合った収入にならない」ということはよく聞く。
 

農家の現状についてこう話すのは、新潟薬科大学の大坪研一特任教授。県の依頼で新之助の食味の研究に携わった大坪特任教授は農家の苦労に理解を示す一方、一定の基準をつけて新之助の価値を保つことも重要と考える。

新潟薬科大学 大坪研一 特任教授:
新之助は、表面だけはあっさりしていて粘りが弱い。でも、噛みしめると粘りがあってやわらかい。こういうコメは滅多にない。
 

大坪特任教授は今後、スマート農業や農業の大規模化によって、新之助の生産コストを下げつつ品質を維持することが必要と指摘。そして、こうした新之助の戦略は「農業全体の未来へもつながる」と話す。

新潟薬科大学 大坪研一 特任教授:
今、色んな厳しい条件があるが、一方ではコメ、あるいは食糧自給に対して皆さんの理解が深まっている時期。その中で新之助というのは非常に有力な、10年かけて作った誇るコメ。これを一つの成功事例になるよう、新之助が日本全体にとどまらず、世界に広がっていくように期待したいところ。

期待のブランド米は次のステップへと進んでいる。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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