広島県出身の住職と技術者で作る研究グループが、最新技術で仏教の開祖「ブッダ」を呼び戻し、人々の悩みに答えるユニークなシステムを開発した。
目の前にブッダが…?! スマホで音声対話

広島市中区にある「教順寺」の第18代住職・熊谷誠慈さん(42)。
熊谷さんが、スマートフォンに語りかけている相手は…

教順寺・ 熊谷誠慈 住職:
どうやったら幸せになれますか?

ブッダ:
怠けずに努力し、よく考えることで本当の幸せが得られる
なんと、悟りを開いた仏教の開祖・ブッダである。
このシステムに付けられた名前は「ブッダボット」。AR=拡張現実の技術を使い、スマートフォンの画面に映る目の前の風景に、バーチャルのブッダを重ねて表示させている。そこへ音声で対話し、あたかも”ブッダが現実世界に現れたかのような実在感”で、1人1人の悩みを解決するシステムなのだ。
梶谷羽奈アナウンサーも「ブッダボット」に悩みを相談してみることに。

梶谷アナ:
どうすれば立派な社会人になれますか?
社会人1年目の梶谷アナの質問に、ブッダボットが返した答えは…

ブッタボット:
自分を律して良い行いを行えば、素晴らしい人間になれる

梶谷アナ:
相談する前は抽象的な答えが返ってくるのかと思っていたんですけど、案外、真理を突いているなと思いました
教順寺・ 熊谷誠慈 住職:
ブッタボットの回答そのものだと思います。社会に出るとさまざまな困難がありますよね。思い通りに行かなくて、自暴自棄になったり。
そういう時にこそ自分を律することで、より良い結果が出てくる、という教えです
AIで原始経典を学習 1000種以上の教えを説く
「ブッダボット」は人工知能AIを使い、2500年前の最古の経典を学習した。そのデータを基に1000種類以上のありがたい教えを説くことができる。

教順寺・ 熊谷誠慈 住職:
具体的な助言をしている古い経典・原始経典を機械学習させれば、多くの人々の日常の悩みや苦しみに対応していくことができるのではないかと思って開発しました

熊谷さんは京都市在住。月に数日、住職として広島の実家に戻る傍ら、京都大学で仏教学を研究する准教授という肩書きも持っている。
熊谷さんの研究グループは、京都市に拠点を置いている。知人の紹介で偶然知り合った広島・呉市出身の技術者、古屋俊和さんと二人三脚で開発を進めてきた。
共同開発者の古屋さんにオンラインで話を聞いた。

共同開発者・古屋俊和さん:
たまたま熊谷先生と話した時に、出身が広島だというので意気投合しました。
ブッダボットの開発は「弟子はブッダに対してどのように質問したのだろう」と、質問の内容を想像して入力していく作業です。1000件以上の質問を入力して、データを作っていきました
開発の背景に”寺院存続の危機” 新技術との融合は「必然的なこと」
広島県出身の2人が開発したARの「ブッダボット」だが、誕生の背景には、将来的な寺院存続の危機という大きな問題がある。人口減少と建物の老朽化などが原因で、2040年には全国の3割の寺院が消滅するという調査結果も出ているというのだ。

最新技術を活用することで、実際に寺を訪れなくても法要を行えるなど、可能性を広げたい狙いがある。

教順寺・ 熊谷誠慈 住職:
各時代の人々が仏教と最先端のテクノロジーを用いて、仏像ができたり日本庭園ができたり…。そういうことを人類は常々やってきたわけです。
私たちは22世紀の新しいテクノロジー、特に人工知能やメタバースの技術と仏教を融合する。これは必然的なことであろうと思います
音声で対話できる「ブッダボット」の開発によって、仏教がより身近な存在になりそうだ。
現時点で「ブッダボット」を一般公開する予定はないが、データを蓄積し、精度を上げることを目指している。
(テレビ新広島)