パートやアルバイトで収入がある額を超えると、新たに税金や社会保険料が生じる“収入の壁”。
10月1日からルールが変わり、対象になる人が拡大します。知らずに壁を超えてしまうと、収入が大幅に減ってしまう可能性も。
めざまし8は、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏にお話を伺いました。

10月から最低賃金アップも… 知っておきたい“収入の壁”

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10月1日から全都道府県で最低賃金がアップします。全国平均で前年比33%アップ、金額にして31円上がり、最低賃金は全国平均で961円に。

しかし、この賃金アップに立ちはだかるのが“収入の壁”なのです。

10月から、社会保険の適用が拡大する
10月から、社会保険の適用が拡大する

深田晶恵氏によると、パートやアルバイトなどの非正規雇用者の年収が100万円を超えると、住民税がかかります。
103万円を超えると、住民税に加えて所得税がかかります。
106万円以上になると、住民税と所得税に加えて、一定条件、具体的には5つの条件全てを満たした働き方をしている人に関しては、社会保険料を払う必要が生じてきます。この対象の条件が、10月から“拡大”するというのです。

さらにもうひとつの大きな“壁”は、「130万円」です。
結婚していて配偶者の扶養に入っている場合、社会保険料の負担がありませんが、130万円を超えると、扶養から外れなくてはならず、自分で保険料を負担することになります。

まず、気をつけなくてはいけない“壁”はどこなのか?

ファイナンシャルプランナー 深田晶恵 氏:
いくつかありますけど、まず社会保険料がかかり始める106万円の壁と130万円の壁、この2つなんですね。
パートで働いている人は自分がどちらかに属するんですよ。この10月から、自分は130万の内側にいればいいと思っていた人が、勤務先の規模とかによって106万円に該当してしまうという人も出てくるので、10月から一番気をつけなくてはいけない点はその点です

なぜ「社会保険料」がポイントになってくるのか。それは金額にあります。

社会保険料は、年収105万円の場合は0円だが、年収106万円だと15万円以上に…
社会保険料は、年収105万円の場合は0円だが、年収106万円だと15万円以上に…

深田氏の試算したデータによると、所得税は、103万円を“超えた分”の5%が税率として、まずかかってきます。104万円なら500円、105万円だったら1000円。

一方、社会保険料は「収入全体の約15%」。つまり年収106万円の場合、社会保険料は15万3113円と、所得税と比較して大きな負担になるのです。

“106万円の壁”の具体例 対象となる5つの条件とは?

“106万円の壁”の対象となる5つの条件です。
「学生ではないこと」「月額賃金が8万8000円以上であること」「2カ月を超える雇用の見込みがある(10月から改正)」「週の所定労働時間が20時間以上」
さらに勤め先の従業員数が、現在は501人以上なのに対して、10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上となります。

これに当てはまる具体例として、以下のような例があります。

【“106万円の壁” 具体例】
従業員が200人規模の会社で、パートタイム勤務。時給は1000円で1日5時間、月20日勤務です。年収で約120万円の給与があります。
当然103万円の壁を越えているため、所得税と住民税が約4万円かかり、手取りは約116万円という計算です。
しかし、10月からは101人以上の会社が対象になるため、社会保険料も加わり、約20万円の税が引かれます。同じように仕事をしても、手取りは約100万円程度に落ち込みます。

収入に大きくのしかかる「社会保険料」。しかし、将来受け取れる年金額が増える、傷病手当金や出産手当金受け取りなどの保障が充実するといったメリットもあります。

“働き損”になる?1万円で大きな差も… “壁を越える”選択肢も

働いた時間に対して、社会保険料などで手取り収入が減ってしまうかもしれない、いわゆる「働き損」になってしまう年収はどのあたりなのでしょうか?

FP深田晶恵氏の試算を基に作成
FP深田晶恵氏の試算を基に作成

深田氏の試算によると、105万円までは額面と手取りが比例してきますが、106万円の壁にぶつかった段階で、社会保険料によりぐっと手取りが減ります。
年収が125万円まで行くと、105万円の手取りとほぼ同じ額になり、社会保障もついてきます。
また、130万円の壁にぶつかる人は、配偶者の扶養を外れるため手取りは下がってしまいます。年収129万円とほぼ同じ手取りを得るためには、年収153万円ほどまで増やす必要があるのです。

年収が1万円違うだけで、大きな差も生じます。
年収が105万円の人は、106万円の壁にぶつかっていませんので、かかるのは住民税と所得税のみで、手取りは104万円ほど。しかし106万円を超えると社会保険料がかかるため、手取りは89万円。約15万円の減額になります。

制度が労働への意欲をそいでしまうのではないか?その疑問に深田氏は…

ファイナンシャルプランナー 深田晶恵 氏:
どうしても、こういう改正とこの話題になると、いわゆる「働き損」というか、阻むみたいになるのですが、私は「壁を超えて」働いた方がいいと思っています。
ただ、働く時間が長くなるのに手取りが減るというのは、パートさんの声を聞くと皆さん嫌だと。それはそうだと思います。
皆さんが一番知りたいのは、125万円を超えれば手取りは回復するんだということと、130万円の人であれば153万円(を超えれば手取りが回復すること)。これが一番知りたい。自分じゃ計算できないので、そこを知った上で一気に壁を超える。
そして将来もらえる年金を増やしたりとかしていく方がいいと思います。なぜならば2年後にもう一度適用拡大というのがあって、今度は従業員数51人以上の会社も対象になるので、今の物価高に備えるためにも、世帯収入をアップするというのはやはりやっていったほうがいいと思います

(めざまし8 「わかるまで解説」より 9月29日放送)